顧客満足度90%!「相互副業」が企業の成長スピードを上げる

副業を解禁する企業が増加する一方で、受け入れ側としては二の足を踏むケースが多い。そんな中、企業間副業を推進するパーソルキャリアが、受け入れの第一歩となるプロジェクトをスタートさせた。担当者のタレントシェアリング事業部ゼネラルマネジャー、片山徹之氏に詳しく聞いた。

副業したい個人とプロジェクト単位で起用したい企業をつなぐ

――最初に、御社が展開するプロフェッショナル人材の総合活用支援サービス『HiPro(ハイプロ)』の事業内容をお聞かせください。

HiPro(ハイプロ)は、副業やフリーランスとして活動したい人材と、その活用を希望する企業をつなぐ人材支援サービスです。個人の方にはスキルを活かせる企業と、企業にはプロ人材との出会いを支援しています。

同サービスは、HiPro Biz(ハイプロビズ)、HiPro Tech(ハイプロテック)、HiPro Direct(ハイプロダイレクト)に分かれています。HiPro Bizは、企業から依頼された業務を個人に委託する、再委託型エージェントモデルです。HiPro Techは、エンジニア特化型の副業およびフリーランス紹介サービスで、企業と個人が直接契約するプラン、当社が契約主となり個人に再委託するプランがあります。HiPro Directは、個人と企業案件のオープンなマッチングプラットフォームです。

――現在取り組まれている『相互副業プロジェクト』についても教えてください。

相互副業プロジェクトは、HiPro Directのプラットフォームを活用しつつ、企業同士で副業者の送り出しと受け入れを行う取り組みです。現時点では、参加企業を大手に限定しており、事業規模が近しく、同じ目的や課題を持つ企業同士をおつなぎしています。例えば、女性活躍推進を課題とする企業が、すでに女性活躍推進で実績を上げた企業の人材を受け入れるイメージです。

受け入れ企業は、課題解決に貢献してくれるプロ人材と必要な期間だけ契約でき、異業種他社の仕事の進め方や視点、KPIなどの違いを知ることができます。送り出し企業は、個人が他社を経験することでスキルアップしたり、新しい業務の進め方を見出したりできるメリットがあります。

また、働きながら他社を知ることで、離職を抑制する効果も期待できます。同じ会社で長期間働くと、自社の恵まれた環境が当たり前になってしまい、不満だけが溜まりやすくなります。他社で越境学習をすることで、自社の恵まれた環境を再確認することができるため、現職への不満による転職が減少します。

参加企業は、プラットフォームの利用料を月額でお支払いいただくと、その中で自由に求人を出したり応募したりできます。現在、利用企業数は約30社、副業の登録数は約600人です。副業する個人には、受け入れ企業側から報酬をお支払いいただきます。

――クローズドにする理由は何でしょうか。

クローズドにすることで、特定の企業間でのマッチングが実現し、情報漏洩などのリスクヘッジができ、受け入れ側のハードルが下がるからです。

――なぜ、マッチング手数料ではなく月額利用料にしたのでしょうか。

このサービスは企業と個人の副業態勢を整えることが目的ですので、金額がその障壁にならないよう、送り出す側、受け入れる側ともに何度でも利用しやすい料金体系にしました。月額利用料であれば、いつでも案件が見られ、いつでもオファーを受けられます。また、受け入れ方が分からなかったり業務の切り出しに迷ったりする企業をサポートするためにも、プラットフォーム利用料のほうが利便性は高いと判断しました。これにより、半年~1年間で共に会社の文化を変えていくような人事と共創体制が組めるメリットも生まれ、表面上のマッチングではない、奥行きある支援につながっています。

――1案件にどのくらいの応募がありますか?

1案件に対し3~4人の応募があります。オープンで副業者を募集すると1案件に20人以上の応募があることも少なくないですから、人材獲得しやすい数字になっていると思います。確率で言うと30~40%ですので、3回応募すれば1回受かるイメージです。

『相互副業プロジェクト』が外部人材活用の入り口に

――相互副業のサービス提供に至った背景は?

プロフェッショナル人材の総合活用支援サービス『HiPro』は、年々高まる社員やフルタイムに限定しない採用のニーズに応える新しい人材活用の形として、2022年に立ち上がりました。現在では、プロジェクト期間のみの採用や、週に1回だけ発生する業務を委託するなど、社員採用でなくてもいい案件はもちろん、新規事業の早期立ち上げのために外部のプロ人材にお願いする企業が徐々に増加しています。また、コロナ禍など不確実性の時代に対応する人材獲得手段としても、このスキームは適しています。

一方で、副業を解禁している企業が64%を超えている*のに対し、外部人材を受け入れる企業は、大手企業全体の30%程度という現状があります。この数字から考えると、外部人材の活用は、まだまだ当たり前とまでは言えません。この企業側の受け入れハードルを解消し、外部人材の受け入れの裾野を広げることを目的として、相互副業プロジェクトを立ち上げました。

――企業が受け入れを躊躇する理由は?

外部から来た人への社内情報の共有などの情報管理、プロジェクトを任せたりすることへの抵抗感や、今まで実施したことのない人材活用方法への不安がネックになっていると思います。

相互副業を通じて、外部人材を受け入れ、そして活躍いただくことで、企業に外部人材活用の第一歩を踏み出していただければと考えています。

副業者を送り出し、受け入れる体制づくりをサポート

――マッチングの基準を教えてください。

送り出し先の企業に対する営業や引き抜きがないよう留意し、同じ悩みや課題を抱える企業同士をマッチングしています。「誰でも受け入れてください」といった乱暴な引き合わせはしておらず、事前に必ず面談を行い、相互納得の上で契約します。

――どのような職種が相互副業に適していますか?

副業が前提ですので、丸一日オフィスや現場にいる仕事よりも、本業に影響しない範囲でできる業務がメインです。例えば、調査や企画などの業務が比較的多いです。領域は、人事、総務、営業、マーケティング、新規事業、生成AI、DX系が多い傾向にあります。

例えば人事は、どの企業も似た業務、似た悩みがありますが、あまり横のつながりがなく、情報シェアの機会も少ないので、他社がどんな取り組みをしているか、情報をシェアするだけでもかなり課題解決のヒントになると思います。

現在、当社主催で人事交流会を実施しています。参加企業の製品詰め合わせを参加企業に配る取り組みもしており、これも参加企業を知る機会にしてもらっています。HiProというコミュニティーの中で、横のつながりを広げたり、他社製品に興味を持ってもらったりしながら、人材をシェアしやすい雰囲気を作っています。

――お願いする案件の切り出しが難しそうです。

切り出しが難しいという声は多いので、プラットフォーム上に切り出しをサポートするジョブコードという機能を実装しています。例えば、営業とひとくちに言っても、テレアポ、マーケティング、営業戦略など、職種はさまざまです。当社では、業務を〝ジョブ”といった単位で分解・定義した、「ジョブコード」を開発、実装しています。3000種のジョブコードによって、漠然としていた課題や業務の解像度を上げることができます。

――副業に送り出す人材はどのように決まるのでしょうか。

社内で希望者を募り、立候補で決まることが多いです。副業には主体性が必要ですので、やらされ感で行くよりも、やりたい人が自ら進んで行くほうが双方にとってメリットが大きいと思います。

――送り出す企業からすると、本音は「自社の仕事に集中してほしい」のでは?

その意見はあると思います。64%以上の企業が副業解禁をしていても、「できれば本業に集中してほしい」というのが現場の本音かもしれません。実際に、社員が「副業したい」と言いづらかったり、申請しても色々な理由をつけて却下されたりするケースも発生しています。HiProでは、この現状を考慮した上で、「同規模の企業間で、経験とスキルを可能な範囲で共有する取り組みである」ことを説明し、副業の受け入れ、送り出しを後押ししています。

スキル循環社会の実現を目指す

――活用した企業の満足度や感想を教えてください。

当社調べでは、受け入れ企業の約90%にご満足いただいています。個人も、90%近くが自身のキャリアに対する価値観や行動が変わったと回答しています。

具体的には、他社を見ることで自社の見えていなかった部分が見え、当たり前だったものが当たり前ではないと気付かされるという声が多いです。自身に足りない部分に気付けば、もっと成長しようというポジティブな思考に変わりますし、他社の業務で上手くいった場合は、自分のスキルが他社でも通用するという自信になります。

――最後に、これからどのような展開を想定しているかお聞かせください。

参加企業の事業規模に関しては、これまで通り大企業同士の越境にこだわっていきます。一方で、スタートアップ企業や地方創生に社員を関わらせたい企業もあるので、当社のお客様との連携で実現させたいと考えています。

いずれはオープンな相互副業ができるよう、企業リテラシーの向上支援をし、2年後を目安に100社前後の企業に参加していただきたいと考えています。

HiProは、スキル循環社会の実現を目指しています。週に1回だけ、3カ月間だけなど、柔軟な人材活用ができる環境は、今後もっと推進されると予測します。個人の選択肢としても、1つの会社で働きぬく価値観だけにとらわれず、選択肢を増やし流動性を上げる意味で、副業しやすい環境を作っていきたいと考えています。労働力のシェアは、日本企業の事業成長をスピードアップするはずです。