「年間売上1億円」を生む、コンサルタントの仕事術とは

20代で1億円プレーヤーとなり、30歳で独立して人材紹介会社Flareを創業した大橋花織氏。売上の半分以上を年収800-1,200万の採用支援が占め、超ハイレイヤーの割合は約40%だという。大橋氏は、どのような手法で売上1億円を達成したのだろうか。

大学生のまま正社員として就職

大橋氏の売上1億円への道を語る上で、同氏の個性的な経歴は外せない。大橋氏は、大学生時代にピースボート(国際交流を目的とした世界一周の船旅プロジェクト)に参加した。

「ピースボートは、宣伝ポスターを商業施設に貼ると渡航費が安くなります。当時お金がない中で参加を決めた私は、必死でポスターを貼ってくれる店を探し、3,000枚貼ることに成功しました。これが、私の営業の原体験になっています。幼少の頃から、よく言えば瞬発力が高く、見切り発車で飛び込む性質にも合っていたのでしょう」

ピースボートへの参加を決めたことで、大橋氏は卒業時期がずれ込み、通常の4月より半年遅い9月卒業の予定になってしまった。父親からは「3月卒業4月就職で社会に出なければ、船に乗ることは許さない」と言われていたこともあり、大橋氏は卒業前の4月からゲーム会社に就職し、9月までの半年間は、学生と会社員という二足の草鞋を履くことになった。

大橋氏の社会人最初の仕事は、朝から晩まで1日約700件のテレアポだった。卒業までに取らなければならない単位が1つ残っていたこともあり、仕事と学業の両立は苦労が多かったという。無事9月に卒業できたため、大卒として転職することを決めた。

転職にあたって、大橋氏は人材紹介会社の社長から、「貴女は人材紹介が合いそう。RGFが合うと思うけれど、うちは契約していないから、リクルートキャリアに行ってみては? そこで経験を積んでからRGFへ行く人もいますよ」とアドバイスをくれた。

大橋氏はさっそく応募したが、一次面接で「いずれRGFへ行きたい」と言ってしまったせいか否か、不採用となった。

売上200万円から4,000万円に。秘訣は…

就職活動が振り出しに戻った大橋氏に、ある日、転機が訪れる。ゲーム会社の営業活動の一環で参加したビジネス交流会に、RGFで働くマネジメント層の女性が参加していたのだ。大橋氏は女性のもとに駆け寄り「RGFに入りたいです!」と直談判。女性も、会場を忙しく走り回って営業する大橋が気になっていたそうで、とんとん拍子に話が進み、採用が決まった。

RGFは、求人データが潤沢にあり、ブランド力も高い。大橋氏が入社した当時は今ほど業界の競争が過熱していなかったこともあり、LinkedInだけで複数人のエンジニア求職者を集めることができた。大橋氏はリサーチャーから始め、求職者を獲得できるようになってからは複数社のクライアントを担当するようになり、デビューしてから第2四半期で2000万円を売り上げた。

「若かった私は、ここで『あ、もう私、人材紹介を攻略できた』と思ってしまいました。そんな気持ちですから、求人要件が刻々と変化することに気付かず、過去の成功体験だけで突き進んでしまいました。すると、次のクオーターでは売上が10分の1の200万円にまで下がってしまったんです」

この苦い経験をきっかけに、大橋氏は心を入れ替え、求人を分析して開拓を強化し、3年ほどで安定的に年間4,000万円を売り上げるプレーヤーになった。その分析と改善へのこだわりは強く、会社が定めたKPIを「改善の余地がある」と言ってオリジナルの分析表を作成し、1 on 1に臨むほどだった。

「お客様は十人十色なので、数値で一括りにしても意味がないと思いました。何人推薦して何人を面談したという数字を見ても、具体的な改良にはつながりません。『1週間で10人推薦しましょう』といった目標も、達成するために何をすればいいかまでは分かりません。私は、自分専用の分析シートを作成し、お客様ごとの流入経路や内定承諾率をもとに1 on 1をしていました」

RGFに入社して3年が経過し、年間売上4,000万円が安定した頃、大橋氏は転職を考えていた。会社からマネジメント職への昇格を打診されたが、大橋氏はそれを望まず、プレーヤーに専念したいと思ったことが主な理由だった。また、会社が成長に伴う過渡期に入り、これまでと環境が変わってきたことも、転職の二文字を濃厚にした。

「今思えば、あのときマネジメント職を経験しておけば、現在の経営に活きていたかもしれないと思います。本当に、若かったですね」

そして大橋氏は、同僚が独立して立ち上げた人材紹介会社、KVC Partnersへ転職した。ここで大橋氏はさらに業績を上げ、ついに年間売上1億円プレーヤーとなり、入社から5年経った2025年7月に退職、30歳でIT&コンサル業界特化型エージェント、Flare(フレア)を創業した。

ハイレイヤーの決定は〝趣味〟

大橋氏が売り上げた1億円は、ただやみくもに働いて稼ぎだしたわけではない。経験から導き出した売上比率を守り、こつこつと積み上げた数字の結晶だ。

「売上1億円と言うと、超ハイレイヤーばかりを扱っているからだと思われますが、超ハイレイヤーの売上比率は約40%で、60%は年収800~1200万前後の方々です」

つまり、年収800~1,200万円クラスを20人程度決め、それ以上の超ハイレイヤーを5人程度決める計算だ。ハイレイヤーに特化すれば、決定したときの売上は大きいが、それで安心してしまい、しばらく次の売上が作れないような状態も起こりうる。また、返金が発生すればマイナスになる可能性すらある。大橋氏は、超ハイレイヤーの売上を「まぐれ」と言い切り、求職者が多い平均年収層へのアプローチを地道に続けている。

「超ハイレイヤーの転職の多くはリファラルで、求職している方を見つけるだけでも時間がかかります。たまに求職者側から連絡があっても、そこから決定までは数カ月~年単位でかかります。そうなるともう、仕事というより趣味ですよね。それよりも、日常的に、目の前の求職者に対し、『検討すると言ってから2~3日返事がないから電話してみよう』といった地道な作業をこつこつと積み上げるほうが仕事になっていて、意味があると思います」

採用のプロとして「勝ち筋に向き合う」

一方で、けっして「御用聞きに終わってはいけない」とも大橋氏は言う。

「私たちは、採用支援のプロです。仮にお客様の業務領域が当社の得意領域と違っていたとしても、話を聞いて終わりにせず、採用のプロとして、お客様の利益になるアドバイスを提供しています」

この考えを大橋氏流に言うと「勝ち筋に向き合う」だ。勝ち筋とは、求める相手にとって自社は魅力的かどうかの程度を指す。好きな人からモテるための方法と同じで、自分が好きな相手は優しいタイプが好きか、アグレッシブな人が好きかなどについて、企業と一緒に考えることこそプロだと、大橋氏。

その考えは、ときに「採用を見送る」という決断を招くこともある。例えば、特殊な職種の中途採用の場合、費用が高額になりやすく、既存社員とのバランスがとれなくなる。その場合は、既存社員を育てる方がいいのではないかと提案し、採用以外の手法もアドバイスする。

大橋氏のこの姿勢は、業績につながっている。大橋氏の得意領域はIT関連だが、以前、あるファイナンス会社からの相談を受けた結果、「ぜひ大橋さんに採用をお任せしたい」と、フィーを大幅アップした条件で依頼がきたそうだ。

人材紹介会社の介在価値は「定性情報の回収とマッチング」

大橋氏にとって、人材紹介会社の介在価値は「定性情報の回収とマッチング」だ。企業文化を紐解くために社長の生い立ちを調べたり、ミッションの背景に何があるかを聞いたり、人事部の人柄を知ったり…… AI時代の今だからこそ、人がやるべき仕事だと大橋氏は考えている。そしてFlareを、『100年先も続く高品質な人材サービス』を提供できる会社にすると決めた。社名のFlareには、その情熱の火を燃やし続ける意味が込められている。

人材業界が登場して半世紀たった現在、業界は次の時代へ進化するタイミングを迎えている。これまで正義だったものは、次の時代も正義とは限らない。大橋氏は、50年の歴史をリスペクトしつつ、次の時代を作る1人になるべく起業し、これからも新しい正義を探し続ける。

「目標を50年ではなく100年にしたのは、50年後は自分がまだ生きている可能性があるからです。私が居なくなっても続く会社にしたい。そう思い、100年にしました」