グローバル人材〝グロキャリ〟が働きやすい社会を目指して

2025年10月時点における外国人労働者数は257万人で、前年比26万8,000人増加*した。グローバル人材は日本の労働力として欠かせない存在になる一方で、未だ採用に二の足を踏む企業も少なくない。グローバル人材採用における考え方や取り組み方について、グローバル人材の採用に強い株式会社フェローシップの代表取締役社長、小山剛生氏に聞いた。
* 厚労省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)

成長志向が強い人材とベンチャー企業をつなぐ戦略で成功

――最初に、御社の事業内容をお聞かせください。

フェローシップは、人材派遣事業を始め、人材紹介事業や受託事業など、人材に関わる支援事業をグローバルに展開しています。2004年の創業時は、IT・Web業界に対するホワイトカラーの人材派遣事業をメインとしていましたが、現在は、製造業や販売業などにも領域を広げ、職種では技術職や営業、コンサルタントなども支援しています。

――小山様はなぜ人材サービス会社を始めようと思われたのでしょうか。

私は前職がリクルートで、30歳までは人事部で採用と教育を担当していました。当時から独立願望があり、営業職を経験するためベンチャーや独立支援の事業部へ異動しましたが、ほどなく事業部がなくなってしまったので、リクルートエージェントへ出向しました。そこで初めて、人材紹介事業に携わりました。2年ほど勤務し、独立しました。

独立時の2004年はまだ、就職氷河期のあおりを受けていて、優秀でやる気があっても正社員になれず、派遣スタッフとして働く人材がたくさんいました。

そこで私は、優秀で成長志向が強い派遣スタッフを、成長過程にあるベンチャー企業とマッチングして正社員採用につなげるビジネスモデルをつくり、成功させました。ベンチャー企業は雇用形態に関わらずメンバーに成長を求めるのでこのモデルがフィットしました。そして、この戦略がスタート時のフェローシップを成長させるきっかけになりました。

――その後、外国人労働者の支援を始めた背景を教えていただけますか?

当社では、外国人労働者をグローバルキャリアワーカー、通称〝グロキャリ〟と呼びます。作業をこなす労働者ではなく、共に働く仲間だからです。

グロキャリ支援は、いつか事業にしたいと常々考えていました。日本の労働力人口が減ることは何十年も前から分かっていましたので、始めるタイミングを探り、2015年にスタートさせました。

――どのようなタイミングだったのでしょうか。

創業時からのお客様だったゲーム・エンタメ事業会社の多くが、日本のゲームを海外へ配信し始めたタイミングで、英語だけでなく、フランス語、スペイン語、中国語、韓国語、タイ語など、ゲームの世界観を理解した翻訳やカスタマーサポートができる人材が必要となりました。

グロキャリの採用は、日本人に比べると工数がかかります。そのため、引き受けない人材会社が多かったのですが、私にとっては念願のオーダーです。快く引き受け、30人ほどのチームを結成してグローバル人材支援を始めました。

――どの国のスタッフが多いですか?

数年前までは、中国が圧倒的に多かったです。言語が日本と同じ漢字で、N1(日本語能力試験の最難レベル)を持つ人材が多いことが起因していましたが、現在はインバウンドに伴う通訳販売やエンジニアなどのニーズの高まりもあり、台湾やアメリカ、インドネシア、韓国、インド、ベトナムなどの人材も増加しています。

職種も、以前はほぼバックオフィスでしたが、現在は通訳販売、エンジニアを加えた3軸で展開しています。

毎月約50人前後を採用しており、そのうち3分の1から半分は海外人材です。ホワイトカラーや高度エンジニア人材のグローバル採用人数ではトップクラスだと思います。

AI強化により次世代の人材支援ビジネスモデルを構築

――2025年に株式会社GeekAca(ギークアカ)を子会社化しました。理由をお聞かせいただけますか?

GeekAcaは、AIソリューション開発事業とグローバルIT人材の育成事業を行う会社です。AI時代のいま、従来の人材ビジネスモデルから脱却する必要性を強く感じており、日本の人口減や経済縮小を防ぐべく企業のテクノロジー化とグローバル化支援を軸に事業を進める判断をしました。ただ人を集めて派遣や紹介の数を増やすのではなく、当社でノウハウを磨いてきたグロキャリ人材の調達・契約・行政対応・労務管理・育成などをAI化し当社独自のプロダクトやコンサルティングサービスにしたて、付加価値の高いソリューションを提供することにしました。そこで、GeekAcaの代表取締役社長である韓曄(はん・ゆう)氏に、協力をあおぎました。

韓氏は中国や日本で長くAI研究を続けてきたスペシャリストで、常にアメリカや中国やインドの最新情報を持っていますので、韓氏ともにソリューションビジネスを立ち上げることにしました。

――具体的なビジネスモデルを教えていただけますか?

業務自動化などをテーマにAIコンサルタントを派遣するなど、より高度人材の取り扱いに特化していきます。一方、グロキャリ雇用を安易にするテクノロジープロダクトを開発し、コンサルティングや人材ビジネスをそえて企業に提供するBPaaS(Business Process as a Service/ビーパース、システム導入から業務の設計、人材支援までをセットにしたアウトソーシングモデル)を展開したいと考えています。

ソリューション強化で企業のグロキャリ採用を推進

――御社が現在抱えている課題とその解決策についてお聞かせいただけますか?

派遣スタッフの賃金アップ率に比べて、企業への請求額が上がらないため、人材派遣事業の粗利率が下がっています。加えて、労働力人口も減少することから、当社では何年も前からDXを含むソリューションビジネスを構築し、売上単価および粗利率アップに努めています。事務スタッフの派遣だけでなく、開発関連・AI関連のエンジニア派遣などを通じたソリューション事業の比率を高めていきます。

同時に、グロキャリの雇用促進につながる課題解決型のコンサルティングや、それらに関連するプロダクト開発など、私たちの専門性を活かして広範かつ多様なソリューションを提供するために、営業や採用を強化しています。

――企業側のグロキャリ採用のコツがありましたら、教えてください。

グロキャリ採用において、多くの企業が消極的になる理由は「言葉の壁」です。しかし、日本人であっても完璧な日本語を話せる人は決して多くありません。「スキルがマッチした人材の確保」という本来の目的を達成できるのであれば、片言でもコミュニケーションが取れるなら、それで十分だと考えます。事実、当社ではその運用で問題なく業務が回っていますし、会議も同時通訳アプリを活用すれば円滑に進めることが可能です。

一方で、当社も企業がグロキャリ採用を導入しやすい環境を整えるため、プロダクト開発やコンサルティングといったソリューション事業を強化してまいります。こうした取り組みを通じて、市場の潜在的なニーズを顕在化させていく方針です。

――特に、エンジニアは日本語を話せなくても仕事ができる気がします。

たしかに、コロナ禍前はそうでした。システム開発時にはプロジェクトオーナーがいて、マネジャーがいて、リーダーがいる縦社会で、エンジニアはリーダーの下で作業をするので、日本語を話せなくても問題ありませんでした。しかし、コロナ過でオンライン化が進むと、やりとりに時間と工数がかかる縦社会の性質が機能しなくなり、エンジニアが顧客と直接やり取りする機会が増えました。その結果、ここ数年はエンジニアに日本語力が求められるようになりました。ただし、今後はまたAIによって環境が変わっていくと思います。

――グロキャリ採用ならではの取り組みはありますか?

私たちが何より大切にしているのは「リスクのある人を採用しない」という徹底したルールです。例えば、日本の社会に馴染もうとする「受容力」があるかどうか。言葉が上手くても「自分の国ではこうだった!」と反発してしまっては上手くいきません。日本の慣習を柔軟に受け入れられるかは、カウンセリングでじっくり対話して確認します。

採用して終わりではなく、スタッフ全員にキャリアコーチを付けているのも当社の特徴です。目指しているのは、教え込むことでも甘やかすことでもなく、自律を支えること。まるで親友のように隣にいて、時には厳しく、時には温かく叱咤激励する。そんな密な関係性が、彼らの成長を支えています。

また、前述のGeekAca社が開発した『AINOBI(アイノビ)』というAI教育プロダクトを活用し、日本の言葉と文化についての研修を実施しています。その他、AIでのコンディション管理も行っています。

例えば、スタッフに不平不満の兆候を察知した場合には、バイリンガルのメンバーが迅速にフォローし、状況に応じて「キャリアスライド」の提案も行います。こうした運用を「マネジメントサイクル」としてパッケージ化することで、企業が安心してグロキャリ採用を導入できる体制を整えています。また、リクルーティングから契約、バックグラウンド調査、入国後の行政処理に至るまで、一連の煩雑な事務手続きもすべてパッケージ化して提供しています。

――海外から見た日本のプレゼンスについて、お考えをお聞かせください。

ご存じの通り、日本のプレゼンスは低下しています。給与を見ても、かつては日本へ出稼ぎに来ていた国のほうが上回っていることもあります。それでも日本で働いてくださるグロキャリには、〝日本が好き〟という共通点があります。また、安心、安全、簡単に解雇されない国というイメージも理由の1つです。

一方で、世界を変えたい、一旗揚げたい意欲がある人は、日本ではなく米国やインド、中国などへ行きますし、国側も、彼らを受け入れるための予算を持っています。今高い給与を支払っても、彼らを受け入れる企業が増えれば、日本の産業も成長できるのではないかと考えています。

目指すは「グロキャリといえばフェローシップ」の社会

――御社の平均年齢は32.4歳と、比較的若いです。若手人材を採用する秘訣は何でしょうか。

グロキャリに若手が多いことが起因の1つだと思います。グロキャリだけで、毎月約千人の問い合わせがあります。集客に関しては、各国でSNS発信をしたり、現地の就活フェアに参加したりしています。以前、シンガポールの就活フェアに参加した際は、東南アジアの優秀な学生が約150人も集まりました。フェローシップは日本で働きたいグロキャリの中ではメジャーになってきている感覚があります。もしも日本がグロキャリの就職条件から日本語を外したら、日本は世界3位か4位の超テック国になると想像します。

*社員、派遣スタッフ合計の平均値

――ありがとうございます。最後に、今後の展望をお聞かせください。

今後2~3年で、越境契約の仕組みを完成させる予定です。越境の労働契約には複雑な課題も多いですが、これらを着実に仕組み化することで、単なる「人材」の移動に留まらない「能力の流動化」を実現できると考えています。この変革を通じて、当社は社会を変える存在へと進化します。日本が世界に誇れる産業を創出し、海外から優れた人材や能力を呼び込む――。「グロキャリといえばフェローシップ」と誰もが想起する未来を目指し、全力を尽くしてまいります。