8期目で売上高96億円!事業成長の秘訣は「自由と秩序の絶妙なバランス」
2018年に創業し、ドライバーの人材紹介事業からスタートした株式会社プレックスは、8期目にして売上高96億円へと成長した。人材紹介、SaaS*、M&A仲介など複数事業の成長を支える独自の仕組みや考え方について、同社の代表取締役である黒﨑俊氏を取材した。
* Software as a Serviceの頭文字。ソフトウェアをインターネット経由で提供するクラウド型サービス。ミッションは『日本を動かす仕組みをつくる』
――最初に、創業者である黒﨑様のご経歴をお聞かせください。
私は、2015年に医療・介護領域の人材紹介を手がける株式会社エス・エム・エス(東証プライム上場)に新卒で入社し、2年目にウェブマーケティング、3年目に新規事業責任者を担当した後、18年に株式会社プレックスを創業し、ドライバーの人材紹介事業を始めました。
――なぜ、医療・介護ではなくドライバー領域で創業したのでしょうか。
市場を精査したところ、物流、建設、製造といったインフラ産業のほうが医療・介護領域よりもはるかに規模が大きく、起業するにあたり、巨大なインフラ産業でビジネスをすることは早くから決めていました。その中でも物流領域は、当時、働き方改革関連法案の成立などの影響で、深刻な人手不足に直面するという予測があり、自動運転の導入にも時間がかかることが想定されたため、まずは物流領域の人材紹介から始めることにしました。
――事業領域を広げはじめたのは何年からですか?
21年からです。『日本を動かす仕組みをつくる』というミッションを掲げ、ドライバーのほかにも、建設、製造、整備、介護など、現在は幅広くエッセンシャルワーカーの人材紹介事業を手がけています。業界最大級の200万人の登録者数を誇る人材紹介・求人媒体サービス『プレックスジョブ』に加え、建設業に特化した現場管理・工事管理アプリ『サクミル』、M&A仲介をおこなう『M&A支援機構』などの事業を展開しています。
――M&A仲介に取り組み始めたのは、どのような背景からでしょうか。
物流、建設、製造などのインフラ産業は、中小企業の占める割合が多く、経営者の高齢化が進んでいるため、このまま企業を存続させていくべきかどうか迷っている60代や70代の経営者の方も少なくありません。急速なデジタル技術の進化、人手不足や賃金上昇、物価高なども影響し、黒字であっても会社を畳む決断をせざるを得ないケースもあり、我々がM&Aを通じて会社の再編を支援し、業界全体の生産性を上げていくことは、当社のミッションにつながると考えています。
――建設業向け現場管理・工事管理アプリのサクミルも好調で、26年3月時点の正式利用企業数が3000社を突破したと聞きました。おめでとうございます。
ありがとうございます。従来の紙やExcelの運用から、デジタルへ移行するのを阻むさまざまな課題を解消するため、ITツールに不慣れでも使いやすい操作性を実現し、顧客の要望に応じて、スピーディーに機能のアップデートを繰り返してきたことが、サクミルが選ばれている理由の一つだと思います。
セールスやカスタマーサクセスのメンバーが、クライアント企業との中長期的な信頼関係を築き、顧客の要望を集め、それを適宜社内に共有して連携を図っているため、ニーズに合った迅速な機能開発が可能です。
マーケティングと、自由と秩序を保った組織の強さが事業を加速させる
――どの事業も急成長されていますが、グロースの秘訣はありますか。
領域特化であること、クライアントと長期的な信頼関係を築くことに加えて、マーケティングと組織の強さでしょうか。
たとえば、人材紹介事業はダイレクトリクルーティングなどのポータルサイトはほぼ使用せず、SNSやリスティング広告などのウェブマーケティングで集客しています。独自のノウハウが蓄積されており、集客力は強いと自負しております。実際に、私たちの求人サイト『プレックスジョブ』には毎月約7万5,000人の新規登録があり、CA(キャリアアドバイザー)1人につき100人以上を担当する計算です。登録が増えているので、CAが圧倒的に不足しており、26年度は500人の採用を予定しています。
――1人で月に100人以上を担当されるのですか!? すごい数ですね。
中には「まだまだ足りません」という強者もいます。(笑)
成長を続けるための最もシンプルな方法は、メンバーが目標に向かって仕事を進めやすい環境をつくることです。報酬を低く抑えて効率化重視のオペレーションで回すよりも、それぞれの成果に応じた報酬を設定して、ある程度自由な裁量のなかで頑張ってもらうほうがフェアですし、お互いに信頼関係を築きやすいと思います。
――中途採用で報酬が上がったCAの具体的なエピソードを教えてください。
野球選手を引退し、不動産会社で働いていた22歳の男性は、前職の年収が300万円台でしたが、入社1年目で800万円、2年目は1660万円になりました。最近、ブライダル業界でドレスコーディネーターをしていた女性が2年目で1700万円を達成し、その記録を塗り替えました。
――社内の売上競争も激しくなるのでは?
当社は相対評価ではなく絶対評価を取り入れていて、1人当たりの担当数も十分に確保できているため、他人と比べる必要はないですし、パイの奪い合いになることもありません。そのため、中途入社のメンバーの3割以上を経験者が占めます。売上ばかりを追求し過ぎて、お客様に無理な提案をしては元も子もないので、しっかりルールを定めて、秩序を保った上で自由に仕事をしてもらっています。
――組織の規模が拡大するなかで、さらなる成長を実現するために、自由と秩序のバランスをどのように保たれていますか。
未経験の方でも、すでにある仕組みやオペレーションに基づいて業務を行えば60点くらいまではすぐに成長可能です。実際に、入社2カ月以内に94%のメンバーが初成約をあげています。その状態から100点、150点を目指すには、様々なノウハウの蓄積や独自のアプローチが求められるため、そこに関してはある程度のルールのなかで、個性を活かして自由に活躍してもらっています。
20代前半で年収800万円になったら、それを見た仲間たちの士気が高まりますし、働く人たちのテンションが上がるかどうかを基準に仕組み化していくほうが、個々の能力や可能性が引き出されて、結果として会社全体の業績があがっていくと考えています。
とはいえ、人材紹介はフロービジネスですので、集客やマッチングの成果が出にくくなり、離職者が増え、KPIが下がり、気づいたら停滞していたということがないように、常に数手先を見て最速で動き、人や情報が集まるように心がけています。
――御社の企業ロゴも、自由と秩序を意味する特別なメッセージが込められていると聞きました。
個々の粒は一見バラバラのようで、実は秩序を守って並んでいます。これは、自由と秩序を表現していて、中央の空白は、新しい価値が創造されていく余白です。一人ひとりが個の能力を最大限発揮し、それが合わさることで大きな価値を生み出していくという意味もあります。
2042年までに売上高3千億円を目指す
――今後の目標をお聞かせいただけますか?
2030年に粗利で500億円、35年に1,000億円、42年に3,000億円を目標にしています。当社が支援するインフラ産業の人材紹介事業をメインに、今後はヘルスケアなどの領域にも注力する予定です。
サクミルに関しては、登録社数を6,000社、1万社と拡大していき、併せて、業界に特化したSaaSを20種類ほど作る計画です。
物流・建設・製造などの領域と、人材紹介・SaaS・M&A仲介などの事業の掛け合わせで考えると、まだたくさんの余白があります。
10億円規模の事業を、3人ほどの経営もしくは事業運営ができる人材に任せ、300の事業を創り、それを中央集権的な管理ではなく自律分散型の組織として運営していけば、3,000億円という目標は実現可能だと考えています。1千億円までは国内、そこから3,000億円を目指すにはグローバルも視野に入れています。
――最後に、黒﨑様個人の野望があればお聞かせください。
特に野望というのはないですね。(笑)ただ、創業するときに決めたのは、「自分が持ちうる限りの能力を使って、全身全霊で最も大きな課題を解決する」ということです。
1,000億円は、これまでの延長線上にある現実的な数字ですが、3,000億円となると、グローバルへ挑戦するなど、まだまだ未知の領域に踏み出していく必要があるためワクワクします。いい仲間と仕事をし、学習と発見に満ちあふれた日々を送っていきたいと思っています。

