2025年に創業50周年を迎えたJACグループ。同グループの代表取締役会長兼社長である田崎ひろみ氏に、これまでの歩みと今後の展望について聞いた。

プロフェッショナルなコンサルテーションにこだわり続けた50年

――創業50周年、おめでとうございます。50年を振り返っての率直な気持ちをお聞かせいただけますか?

ありがとうございます。50年、本当にあっという間でした。日本一、そして世界一を目指して走り続けてきた50年、改めて「大きくなったなあ」と思います。

JACグループは、1975年にロンドンで誕生しました。創業当時は、日本人駐在員を支援するための不動産賃貸や食品輸入販売などの事業を展開していました。

人材紹介事業を本格的に始めたのは、創業から6年後の81年です。経営していた日本食材を扱うスーパーマーケットの2階にあった会計事務所の片隅で、JACグループの人材紹介事業の歴史が始まりました。

その後、88年に日本支店としてジェイ エイ シー ジャパン(現ジェイ エイ シー リクルートメント)を設立し、2006年にJACグループから独立させて、JASDAQ証券取引所(現東京証券取引所プライム市場)に上場しました。2018年に日本法人を親会社としてグループを再統合し、現在は、ハイクラス人材に特化したコンサルティング型の人材紹介会社として、グローバルなビジネス経験をもつ人材の紹介を強みに事業展開しています。世界12カ国に36拠点あり、グループの総従業員数は2,453人(26年3月時点)です。

――50年間で変わったこと、変わらなかったことは何ですか。

50年の間に時代は大きく変化し、IT、DX、AIの時代が始まるたびに「既存の人材紹介サービスはデジタルに取って代わられる」と言われてきました。JOBサイトが登場したときも、当時のCFOが「我々の仕事がJOBサイトに取って代わられる」と慌てふためきましたが、私は「それは絶対にありえない。むしろ、私たちのコンサルテーションの良さがよく分かるよ」と一蹴しました。プロフェッショナルなコンサルタントは、検索やデータからは導き出せない新たな採用を生み出すことができ、それこそが当社の強みです。実際に、JOBサイトが登場しても、ITバブルになっても、AIが発展しても、当社は成長し続けました。IT、DX、AIは、それ自体がコンサルタントになることはなく、プロフェッショナルなコンサルテーションを提供するためのツールとして捉えています。

360度から180度へ変更し、ふたたび360度に戻した。その理由は…

――御社では360度の人材紹介にこだわっているとお聞きしました。

一流のコンサルテーションを提供するためには、担当する業界の雇用する側とされる側、その両面を熟知することがマストだと考えています。

事業開始から20年近く360度(企業と求職者の両方を担当)でしたが、実は2002年から7年ほど、180度(企業か求職者のいずれかを担当)に変えたことがありました。上場を控えていた時期で、業績拡大に向けた効率化を目的としての変更でしたが、私たちが目指すコンサルテーションの在り方と効率化は相いれず、09年に360度へ戻しました。

――御社の規模で、180度にしたり360度に戻したりする作業はとても大変だったと想像します。

そうですね。この時すでに、一度動かした仕組みを簡単には変えられない事業規模になっていました。事実、システムを変更し、従業員が腹落ちして180度で取り組むまでに2~3年、そこから360度に戻して落ち着くまでに3~4年かかりました。180度に変えてからも業績は右肩上がりで、上場翌年の07年には売上総利益が110億円を突破するなど好調だったため、分業することへの違和感を覚えつつも、360度に戻しませんでした。

ところが、08年9月に発生したリーマン・ショックで、その考えは変わりました。このとき当社は、約800人いた従業員を半分の400人程度に減らす決断をしました。リーマン・ショックは外的要因ですが、私は心の中で「効率を重視して分業化し、コンサルテーションの質が下がったから人を減らすことになったのだ」と思いました。片面だけを分担してこなすのではなく、1人ひとりが全方向を理解して提案できるプロフェッショナルの集団であれば、外的要因に振り回されることはなかったと。そして、これこそが将来的に当社が生き残る道だと思いました。

従業員と理念を共有するために欠かせない「新卒全員とのランチ」

――2,000人を超える従業員に企業理念を浸透させるため、どのような取り組みをしていますか?

いろいろな工夫はありますが、中でも新卒入社の従業員全員とランチすることは、仕事の在り方や働き方を共有するよい機会になっていると思います。前年度の新卒は約130人、今年度は約200人おり、8人ずつのグループでフレンチのコースをいただきながら、「仕事とは何か」というテーマで話したり、1人ひとりの目を見ながら、それぞれの課題に対してアドバイスしたりしています。今年は16回、昨年の新卒社員とランチを共にしました。

入社後の成長スピードは、スタートダッシュですぐに頭角を現す人とスロースターターに分かれます。すぐに成績が伸びる人はとりあえず動くタイプで、なかなか伸びない人は頭で考えすぎる傾向があります。ただ、スロースタートであっても、経験と努力を重ねていけば成績は上がります。どちらにしても、新卒入社の多くは、入社3年目あたりから中途入社した経験者の成績を抜くレベルに達します。

私とランチをした経験は皆の記憶に残るようで、数年後に「あの時の教えが今の自分を作っています」と言ってくれる社員が多数います。この経験により、仕事に意義をもって取り組んでもらえたらと思っていますし、プロフェッショナルを育てる取り組みとして、大切にしています。

――少人数のグループに分け、1人ひとりと向き合う細やかさが、理念の共有につながるのですね。

形式だけのランチ会、形式的な新卒育成、中途半端な情報収集業務、浅い知識でのハントを数打って当てる。こんな仕事ぶりでは、ふたを開けたら何の特徴もない会社になってしまいます。やはり、手間暇かけて大切に育てることが育成の基本であり、志の共有につながります。

――海外拠点でも新卒を採用していますか?

海外での当社は小規模事業者ですので、プロフェッショナル人材を採用してマーケットと勝負しています。海外の企業が日本拠点を出すときも、多くは新卒ではなくプロフェッショナル人材を採用していると思います。

――日本での中途採用は経験者でしょうか。

中途入社メンバーの多くは人材業界未経験者ですが、前職と同じか近しい業界を担当してもらうことで、業界を理解したコンサルテーションを提供できています。

一流のプロフェッショナル・コンサルタントを可視化し手本に

――御社のエントランスには、成績優秀者を掲示する豪華なネームプレートが飾られています。これも、やる気を鼓舞するきっかけになっていると想像します。

その通りです。当社には、100人以上の転職を成功に導いたコンサルタントだけが入会できる『100+Club(ワンハンドレッド・プラス・クラブ)』という制度があり、エントランスにネームプレートが飾られるとともに、盾と会員バッジが授与されます。以降、転職100人を達成するごとに『200+メンバー』、『300+メンバー』とランクが上がります。現時点で、日本国内とマレーシアに『500+メンバー』がいます。クラブに入会したメンバーは、全従業員のロールモデルとして活躍しています。

また、コンサルタントにはランクを設けています。コンサルタントから始まり、シニアコンサルタント、プリンシパル、シニアプリンシパルという構成になっています。プリンシパル以上、かつハンドレッドクラブの称号取得で、一流の知識と専門知識を持ったプロフェッショナルといえるでしょう。

大人数精鋭の強靭な組織を構築して世界ナンバーワンの人材紹介会社に

――これまでのお話から、御社は50年かけて人の仕事の本質を貫いてこられたことを感じました。最後に、今後の展望をお聞かせください。

JACグループは次の50年を “New Era” とし、質と収益で世界ナンバーワンの人材紹介を目指します。質の世界ナンバーワンは、世界中のステークホルダーからJACがナンバーワンだと言われることが条件になります。そのための進化を続けることで、収益もナンバーワンになると確信し、10年後の売上目標として2千億円を掲げました。しかし、数字はあくまで目標を可視化したものです。本当に目指すべきは、企業と求職者の喜びを最大化できる、より高度なコンサルテーションの実現です。

お客様から「他のエージェントでは絶対に出てこない人材を紹介してくれる」「JACだから実現した採用」と評価していただける私たちのコンサルテーションは、どれだけAIが発展しようとも、AIには置き換わりません。今後もコンサルタント全員がスキルを磨き続け、少数精鋭ではなく大人数精鋭の強靭な組織を構築し、質と収益ともに世界ナンバーワンの人材紹介会社を目指します。