人材は「選ぶ時代」から「育てる時代」へ

コールセンター事業のパイオニア企業として1982年に創業した株式会社ベルシステム24。同社で長く採用の現場に携わってきた川端ゆり氏に、コールセンター市場の現状や未来の展望について聞いた。

独自システム導入で採用数と顧客満足度を底上げ

――最初に、御社の事業内容をお聞かせください。

ベルシステム24は、24時間電話代行サービス事業社として1982年9月20日に創業しました。9月20日は、「コンタクトセンターの日」として日本記念日協会に登録されています。
 創業当時は、「秘書代行サービス」の名称で企業の社長秘書として御用聞きをしていました。現在もコールセンターを主軸に、金融、通信、通販など幅広い領域を支援しています。リモートワークが導入される前の席数は2万席を超え、現在も約1万8,000席を保有しており、その数は業界最大級です。
 近年では、これまで蓄積した膨大なデータを活用した感情解析システムを構築し、対話中のお客様の感情変化やストレスが分かるようになりましたので、お客様に寄り添った対応ができています。これにより、接客対応力の不安を理由にコールセンター業務に採用されなかった人材も活躍しやすくなっています。また、以前はパソコンを使えない、正しい敬語が使えない人などは不採用としていましたが、現在は当社就業支援施設「SUDAchi(すだち)」にてパソコンの電源の入れ方、敬語の使い方を教えてから送り出すなど、社会参入を促進しています。

採用領域を知り尽くした広告出稿で年間5万人の母集団(応募者)を確保

――コールセンター以外の事業についても教えてください。

広告代理事業は現在注力する中の1つです。他にも、人事・経理系のBPO業務や官公庁の窓口業務、音声基盤やAIを活用したITソリューションの提供、医薬品の臨床開発支援、ウェルネス・ヘルスケアサービスなど幅広い分野での事業を手掛けています。

――川端様が所属するFHR部の業務内容は何でしょうか?

FHR(Field Human Resource)部は、コールセンターやバックオフィスで働くパート・アルバイトの採用を統括する部署です。以前は拠点ごとに募集媒体の手配など一連の採用業務を行っていましたが、オンライン広告やオウンドメディアでの採用強化を進めるにあたり、現在は募集媒体の手配などの母集団形成(応募者)の業務を一元集約しています。集約することでオンライン広告の強化、媒体出稿の効率化などもあり広告費は年間約1億円の削減も実現しています。また、バナー、求人原稿制作なども1チーム化することでクオリティが安定し、オウンドメディアからの応募比率が20%程度上がりました。
 我々の事業開発局は、前述した母集団形成を主に担っており、求人原稿作成、媒体の選定、予算決め、デザイン・プロモーションなど、所謂広告代理店事業に近しい活動をしています。

――広告代理業を始めたきっかけを教えてください。

当初は採用代行として母集団形成、応募から入社までの歩留まり改善を含めた一連の業務を請け負う中で、集客課題、特に母集団形成にお困りのお客様が多い現実を目の当たりにしてきました。年間5万人の母集団形成の実績がある、当社の知見が役に立つのではないかという思いから、採用に特化した広告代理業を立ち上げました。
 私たちの特徴はオウンドメディアでの集客を得意としており、これがキーになりました。有償媒体広告の依存状態からオウンドメディアに寄せ、現状ではオウンドメディアの集客を6割まで高めることができましたので、このノウハウが他社の支援につながると考えています。

――広告代理店業はレッドオーシャンでは?

はい、我々は後発での参入になります。ただ、採用領域に特化しているという点では強みを発揮できると思っています。一般的な広告代理店は通販などの商品やサービスに対するプロモーションを扱うことが多く、コンバージョンの概念が採用とは異なります。例えば、当社がアルバイトやパートを募集する場合、オウンドメディアの来訪が1、2回で応募をしますので、LTVは短いためサイトの魅力を高めたり、導線や動機付けにこだわったりするほうが有意義だと分かっています。

――年間5万人の集客力はすごいです。

ありがとうございます。ただ、一方で採用した方の中でも短期間で転職(離職)を繰り返す方も一定数います。極端な話でありますが、コールセンターの1席を1年で3人程度で埋めている計算もあります。これは、「コールセンター業務は短期で人が入れ替わる」というネガティブな業界イメージにつながっている側面もあります。
 創業初期のコールセンター業務は、学生にとっても人気のアルバイトでした。座って電話で話す、正しい敬語が学べ、社会人としてのマナーも身に付くことで人気でした。しかも、現在のような顧客満足度という言葉もあまり登場する機会も少ない時代でした。昨今では、年々コールセンターに求められるサービスの質が高まっており、応対品質、顧客満足度、難易度の高いテクニカルサポートが増えてきた時代に入り、接客の素養やスキルが一定量なければ始めにくい仕事となりました。また、「クレーム対応が大変な仕事」という印象もついてしまい、いつしか人気の仕事の部類には入らなくなりました。
 この流れを変えられなかった点は、コールセンターのパイオニア企業として責任を感じています。そのため、プロモーション活動の要素の一つとしてもコールセンターの見せ方や働き方を変えようと尽力している最中です。

――集客サービスはどのような領域の企業が利用していますか?

労働集約型産業が多く、中でも派遣会社が多くを占めています。よく「派遣会社の集客を支援すると自社(ベルシステム24)の応募が減少するのでは?」と聞かれますが、まったく問題ありません。Webでの顧客層は極端な言い方ですが無数にあり、ある意味ブランド名(社名)を変える事でリーチする可能性は増え、集客できる母数が広がります。また、派遣会社など会社の案件によって、販売や事務などの持っている求人や求める年齢層などが異なりますので、我々の集客に影響が出ることは今のところありません。

人を選ぶ時代は終わり。力を引き出し育てる時代へ

――近年のコールセンター市場の変化について教えていただけますか。

直近で大きく変化したのは、コロナ禍の前後です。コロナ禍は、働く場所が減少した接客サービス業の方々からの応募が殺到したため、少ない募集費で人を集めることができました。また、コロナウイルス感染症に対応するための行政のコールセンター設置が相次いだこともあり、〝コロナ特需〟という言葉が生まれるほどコールセンターの需要は高まりました。
 ところが、コロナが収束し飲食店や観光業が正常に戻り始めると、接客サービス業の方々の一部がコールセンター業務から離れ、同時にコロナ対策のコールセンター業務も減少し、コロナ禍前の状態に戻っていきました。

――これから拡大予定の事業や新たな取り組みがあれば教えてください。

現在の応募集客支援から幅を広げ、オウンドメディア構築やシステム導入などの支援サービスも実施しています。オウンドメディアは、応募が毎月平均50人以上あれば保有する価値があります。月100人以上の応募数であれば、さらに成果が出やすいと考えています。それに満たない企業に対しては、有償メディアの取扱代理店として支援します。当社は広告を正式運用する前に自社でテスト運用できる強みがあり、効果のあるものを提案することが可能です。

――最後に、今後の展望をお聞かせください。

コールセンター業務は、経験を積むほど対応スキルが身に付きやすく、採用企業からの評価の一つとして見られることがあります。当社としては、スタッフの皆さまに少しでも長く働いてもらいたいですが、それは非正規雇用のまま人材をつなぎとめることも意味します。
 また、現代において特に若年層の転職は当たり前になってきていることもあり、当社で働くことが、次のチャンスを奪うことが無いような取り組みにチャレンジしていきたいです。当社はコールセンター運営や、BPO事業を通じて、企業に労働力を提供していくとともに、スタッフには、スキルアップの機会を提供し、様々な企業のお仕事にチャレンジできる環境を作っていきたいと思っています。
 当社が活躍のチャンスを望む人々と企業とをつなぎ、スタッフを育成して送り出すことが介在価値だと思います。
 不採用にするための面接をする時代は終わりました。これからは、来た人の力を引き出し、活かす時代です。