キャストとともに成長を愉しむ企業であるために
2024年にグループ内の人材支援会社3社を統合し、新たなスタートを切った株式会社ミライル。統合のメリットや難しさ、今後の展望などについて、同社の代表取締役社長である三並史典氏に聞いた。
3社統合の難しさと打開策
――最初に、御社の事業内容をお聞かせください。
株式会社ミライルは、2024年10月にCRGホールディングス株式会社のグループ会社である株式会社キャスティングロード、株式会社ジョブス、株式会社CRドットアイの3社が合併して誕生しました。「成長を愉しもう。」をスローガンに掲げ、現在はコールセンターや物流、ITエンジニアなど幅広い業界と業種への人材派遣・人材紹介・採用支援を行っています。
――3社合併により、各事業をどのように移行されたのでしょうか。
CRドットアイが運営していたIT人材支援事業「みらプロ」に加え、新たにITエンジニア未経験者を育成してSES(準委託契約)で送り出す仕組みを追加した「みらパス」もスタートしました。
ジョブスでは、ブルーカラーの短期派遣事業を主軸とした薄利高回転のビジネス展開をしていましたが、短期採用は「成長を愉しもう。」につながりにくいことから、業務請負事業へとシフトしています。同事業では、日本に住む外国籍の人材もアルバイトとして活躍しています。
キャスティングロードは、コールセンター業務を主軸にしていました。コロナ禍の行政ニーズで業績が伸びたものの、コロナの収束とともに受注が減少し続けていましたので、合併により、同社で働く皆さんが別の場所や職業で能力を発揮できる機会の創出につながりました。
――コールセンターのキャストがエンジニアになるケースもありますか?
はい。近年、エンジニアは技術だけではなくコミュニケーション能力が求められるようになりました。その点がコールセンターのキャストと相性がよく、当社でのリスキリングを経て転身したスタッフも複数います。
――統合のいちばんの難しさは何でしたか?
各社、皆さん自分の仕事に情熱があり、会社への愛着もあります。組織編成が変わったからといって、簡単に帰属意識や職種を変えられるわけではありません。中には突然の人事異動に戸惑った人もいるでしょう。統合という現実の中で愉しく成長していただくには、まずはトップである私が、「一生懸命に仕事をすれば明日はきっとよくなる」と伝え続け、その環境づくりを約束していくことが大事だと思っています。
当社は、長く働ける、働く意義がある環境づくりに注力しています。採用して1企業で短期就業して終わりではなく、その経験やスキルを次の仕事に活かせる流れを作り、成長に伴走すること、これが採用を支援する会社の介在価値だと考えます。
AIコンシェルジュが採用分析と課題解決を担う新サービス登場
――近年の課題である賃金アップに対する御社の対策を教えてください。
キャストと自社従業員の賃金を上げるためには、当社サービスをお客様企業に満足していただき、その対価をしっかり受け取る姿勢が大切です。とはいえ、お客様が「助かっているよ」とおっしゃったからといって「じゃあ賃金を上げてください」とは言えません。キャストが採用時から現在までに何をどのようにスキルアップしたかを言語化し、お客様と共有してはじめて、正当な理由ある、価値ある賃上げが可能になります。言語化しキャストに代わり「賃金を上げてください」と言うことは、派遣会社の大きな役目の1つだと考えます。
また、自社の採用コストを下げて働く人々の賃金アップをする目的で作り始めた採用支援プラットフォーム「HRaris(ホラリス)」を、オープン・サービスとして2026年6月15日に提供開始しました。
――具体的に、どのようなサービスでしょうか。
ホラリスは、求人媒体やATS(応募者管理システム)などのデータを統合し、応募単価や選考歩留まりなどを可視化するとともに、課題に応じた施策検討やHRソリューションとの出会いを支援する、採用分析×課題解決一体型のプラットフォームです。利用者とのやりとりは、採用AIコンシェルジュ「星乃ありす」が担当します。
具体的には、多岐にわたる求人媒体、代理店、HRサービスなどのデータをもとに、採用支援に特化したAIと独自のアルゴリズムで最適な判断を支援します。採用企業が何にいくら費用をかけているか、応募から採用までの流れ、業務管理システム各社のサービス情報などを基に、人間のコンサルタントが商品と企業の相性をプロンプトで落とし込み、企業ごとの課題を解決する形で、星乃ありすが最適な手法を提案します。
例えば、人事担当者が採用目標に到達しなかったとき、「なぜ採用できなかったか」の理由を分析しますよね。自分の考え、情報を星乃ありすに伝えると、星乃ありすがデータという事実に基づく解決策を提案してくれます。そのため、利用者がすべての情報をなるべく正確に入力するほど、より高精度の提案を受けることができます。
――なぜAIコンシェルジュが対応する仕様にしたのでしょうか。
人間のコンサルタントとのやりとりに近づけたい思いからです。例えば、「有効応募が悪い」と相談されたとき、機械的な回答は「では、求人票を書き直しましょう」になりますが、コンサルタントであれば、なぜ有効応募が上がらないのかの原因を探ることから始めるはずです。原因を探り、意見を出し合い、対策を導くところまでをチャットボットでやりとりするのはシステムや工数に無理があったため、AIタレントで対応することにしました。ありすは、利用者側の現状(事実に基づくデータ)を把握していますから、人間の感覚的な判断も事実に基づいた情報で整理してくれます。この対策までのプロセスを伴走することが課題の本質的解決にはとても重要だと考えます。
――マネタイズの仕組みを教えてください。
ホラリスは採用支援企業の営業最適化ツールですので、採用企業からではなく、採用支援企業から使用料をいただきます。これまで人間がやっていたお客様獲得営業とマッチング業務をホラリスが最適化し、コスト削減とマッチング精度の向上を同時に実現する事で対価をいただく仕組みです。
仮に採用企業からいただくとすると、例えば使用データ容量に応じて課金した場合、「お金がかかるなら一部の媒体情報のみを登録して、それ以外は別の無料分析ツールを使おう」といった発想になると思います。それでは一部に偏った情報になり、お出しする提案の精度に欠けます。まずは当社の利益よりも「情報をすべて入力していただく」ことが最優先と考え、採用企業は無料で使用できるようにしました。今後、サービスの追加や変更によって状況が変わる可能性はあります。
――ホラリスが目指す未来は?
分かりやすいイメージとしてはHR業界の「ほけんの窓口」。具体的に言語化すると、採用の〝感覚〟を、データとAIで〝意思決定〟に変えるプラットフォームを目指します。採用企業は数多ある情報の中から自社に合うものを選べ、採用支援企業は成約に応じて費用が発生する。この仕組みにより、採用コストが下がった結果、人材派遣会社が実労に対する対価をしっかり得られ、賃金アップに反映できる状態になることを目指します。
業務の見える化で派遣事業の利益率が向上
――御社の別サービス「採用見える化クラウド」も、最初は自社の採用分析から始まったと聞きました。
はい。「採用見える化クラウド」は派遣とアルバイトの採用分析ツールで、元は自社のエクセルでの管理に限界を感じクラウド化したことがきっかけでオープン・サービスにしました。
――「見える化」で、どのような効果が得られましたか?
応募単価を追うよりも、広告費がどれぐらいの売上につながるかのLTV(顧客生涯価値)を追う方に価値があると考えて運用を始めたところ、有名大手の有料求人媒体だけではなく、優れたパフォーマンスを出せる中小の有料求人媒体があるという結果がでました。
有名大手媒体には多くの人材が登録しているぶん集客に役立ちますが、費用もそれなりにかかります。一方で、派遣会社の手数料は数%、中には1%未満というケースもあり、なかなか利益が上がりません。そこで、パフォーマンスがいい中小媒体のシェアを上げることで、費用対効果を改善できました。
結果の差はチーム力の差
――HR(Human Resources)以外への事業展開予定はありますか?
グループの中で成功している事業の多くは本業を多角化したケースで、ホラリスも多角化の1事業です。本業から離れた事業は、データやノウハウを共有できないばかりか、そこで働く人がグループから孤立してしまい、当グループで働く意義を見出せなくなってしまいますので、基本は本業に則した多角化を目指します。
――御社で働く皆さんの強みは何でしょうか。
成長を愉しむことを軸に、決めたらやりきるチーム(組織)力だと思います。現代はビジネスツールが充実し、どの会社も同じようなツールを使い、同じようなスキームでビジネスをしているのに、結果に大きな差が出る理由は、人であり、チームによるところだと思います。どんなに優秀な個人でも時間や能力には限界がありますが、個人が集まりチームとなれば、その能力は何倍も強力になります。
この考えは、もしかすると、私のサッカー経験によるものかもしれません。サッカーチームは、試合に出るのは11人でも、メンバー全員は数十人~百人規模になります。もしも11人以外のメンバーにやる気がなければ、試合に出るメンバー11人がいくら強くてもチームは勝てません。スポーツには守るべきルールがあって、監督がいて、チームの方針があって、チームのルールを守りながら個々が自由に、愉しみながら能力を発揮したとき、チーム最大の結果が出ると考えています。

