職種・業界・国の境界を超え、世界規模での人材プラットフォーム企業へ

子会社の不適切会計により経営不振に陥ったアウトソーシンググループがBREXAグループとして再出発して約1年が経つ。同グループは今、目覚ましい勢いで再編が進み、業績も右肩上がりだ。再編への確固たる思いと具体的な経営戦略について、代表取締役社長の山﨑高之氏に聞いた。

企業再生のプロが見た事業の改善点とは

――2025年7月にブランド名をアウトソーシングからBREXAへ移行されました。現在のグループ体制を教えていただけますか。

BREXA Holdingsを筆頭に、大きく日本・アジア地域とヨーロッパ・オセアニア・南米の地域に事業が分かれています。日本・アジア地域では、製造業・サービス業の人材派遣や人材紹介および業務請負を担っています。さらに、アジアから世界へ人材を送り出す会社、BREXA CrossBorder (ブレクサ・クロスボーダー)があります。人口が爆発的に増加するアジアから人材を送り出す事業は、世界の人材を動かして社会問題を解決する一助になると考えています。昨年は、インドネシアから日本へ3千人、さらにはインドからヨーロッパや日本へも人材を送り出しました。
 ヨーロッパ・オセアニア・南米地域は、人材サービス全般に加え、教育にも注力しています。
 2025年12月末時点でのグループ売上は約8,000億円で、人材業界では日本第3位、世界第9位。55%は海外が占めます。グループ企業数203社、従業員数は約11万7千人です。

――山﨑様は2024年9月に旧アウトソーシンググループの代表取締役社長に就任されました。背景をお聞かせください。

就任前、私は12年間在籍したパーソルグループのアジア地域統括会社(シンガポール)のCEOを務めていました。事業が安定し、次の使命は何かと考え始めた時にアウトソーシングが上場廃止で経営不振の状態と聞き、「私の経験が活かせる場面だ」と思いました。

――プロフェッショナル経営者として、長年人材業界で活躍されてきた山﨑様らしいお考えですね。

ありがとうございます。当時、アウトソーシンググループは業績悪化の中でもM&Aを繰り返し、グループ会社やその子会社が複雑に絡み合っていました。もとは違う会社の集まりですから理念やシステムもばらばらで、グループのメリットを活かせていませんでした。
 私は「複雑なグループ構造を整理し、ワンチームにすることが最優先」と判断し、まずは完全持株会社のBREXA Holdingsを作りました。同社では一切事業を行わず、国内のバックオフィス機能を集約しています。同時に、「すべての『はたらく』に境界をなくし、より多くの人に、より多くの可能性を」というパーパスを実現するため、効果的な事業へリソースを集中させることを目的に、事業の一部売却を進めながら、並行してグループ内の「境界なき、連携。」を強化しています。

国境を超えて人材が動く仕組みの構築を

――経営陣も刷新されたそうですね。

はい。現在の取締役および執行役員はみな2024年入社です。会長の上山健二は、銀行や大手アパレルメーカーの再建経験があり、他の役員も国内外の大手企業のCxO経験者です。

――アウトソーシング時代から働く皆さんは、社名変更やあたらしいパーパスの創設に反対なさったのでは?

一般的に大反対に遭うイメージがありますが、今回は驚くほど反対意見がなく、スムーズに移行できました。不祥事や業績不振の渦中でしたから、従業員も心のどこかでリブランディングしたいと思っていたのかもしれません。

――山﨑様の新たな経営戦略を教えてください。

BREXAグループは、人材マッチング会社の域を超えた世界の人材プラットフォームへと生まれ変わります。
 世界を見ると、発展途上国には働く場所がない人があふれ、先進国は人が不足しています。例えば日本の漁業では、魚を獲っても新鮮なうちにさばく人が足りないため漁獲量を減らさざるを得ない現状があります。
 この状況は、国境を越えなければ解決しません。国境を超えて人材が動く仕組みを構築し、世界中の人に多くの可能性を生み出すことが当社のパーパスです。実際に、当社は毎年海外人材を他国へ送り出しています。この規模は日本トップクラスだと思います。これは、決して自社の売上を拡大することだけが目的ではありません。いま大手企業が率先して万単位の人材流動に着手しなければ、日本の労働市場が立ち行かなくなるからです。

年間500人規模の半導体技術人材を育成

――海外の人材は御社で育成しているのでしょうか。

はい。インドネシアのジャカルタに学校を11校作り、日本語や日本の文化などを教えてから日本へ送り出しています。職種は、介護、農業、漁業など、特に人材不足が深刻なブルーカラーが主です。インドネシアのスタッフはとてもまじめで離職しないので、採用企業から「インドネシアの人をお願いします」とオーダーされることが少なくありません。

――日本人の採用についてはいかがでしょうか。

基本的に新卒未経験者を採用しており、2026年は約2,600人採用しました。毎年、合計1万人を採用し、育成しています。
 現在の日本企業は、新卒よりも30代以上のミッドキャリアを採用する傾向があり、未経験者は転職が厳しい状態にあります。そこで、当社が未経験の方を正社員として積極的に採用し、BREXA Academy(ブレクサ・アカデミー)で育成し、プロフェッショナル人材として送り出しています。2025年7月に、「BREXA Academy Semicon 福岡」を開校し、2026年度の新入社員69人が4月から実機研修を開始しました。ここでは、年間500人規模の半導体技術人材育成を目指します。

――研修期間はどのくらいでしょうか。

職種に応じて適切な研修を修了後、すぐにプロフェッショナルとして働ける人材を育成しています。研修中はLINE WORKSで近況確認を行い、不安や悩みにはキャリアカウンセラーが対応しています。
 仕事を始めた後も、職業や業界を変えたい希望があれば、当グループ内での移行が可能です。実際に、医療業界からIT業界へ移った人もいます。
 誰にでも、入社してみたらイメージと違ったり、働くうちに別の職種に興味を持ったりすることがあります。その場合、普通は転職せざるを得ませんが、当社の場合はキャリアシフトが可能です。フリーランスも専門のプラットフォームを用意しています。
 転身したいときの自由度を高めることは、能力を発揮できる人材の増加につながります。そのため当グループは、職業や業界を超え、グループ内で移行しながら長く働ける『成長実現プラットフォーム』体制にこだわっています。

――御社の採用課題があれば教えてください。

現在、自社採用の90%は人材紹介会社に頼っており、毎年多額の紹介手数料を支払っています。今後は自らの採用力をつけるためのブランディングに注力していきます。
 直近では、東京・渋谷のスクランブル交差点の大型ビジョンや、テレビ広告・デジタル動画広告を展開しています。また、5月には未経験からIT・機電エンジニアを目指す方向け新サービス「テニショクエンジニア」もリリースしました。他にも、新しいオウンドメディアの立ち上げも進めています。

『境界なき、連携。』強化のためオフィスをワンフロアに

――御社の接客サービス領域では、外食産業における特定技能1号の受け入れ停止*の影響があったのではないでしょうか。

飲食店の採用は、ますます厳しい状況になりました。当社もやむなく、飲食店に送り出す予定だった人材を食品工場に変更するなどの対応をしました。
 飲食業だけでなく、ドライバーも慢性的な人材不足が続いています。大手物流会社は自社で外国人雇用を始めましたが、中小は簡単に採用できませんので、当社がインドネシア人のドライバーを紹介しています。
 日本の人材不足は業界レベルで取り組まなければ、特に中小企業や地方は存続できなくなってしまいます。地方や中小の企業が減少すれば、そこから資材やサービスを調達している上流企業の経営もままならなくなるでしょう。
*農林水産省は、外食業分野における1号特定技能外国人の受入れ人数が上限の5万人に達したため、2026年4月13日以降の在留資格認定証明書の一次的な交付停止措置をとった。

――そんな中、年内にオフィスを移転する予定だと聞きました。

当社はこれまで、日本国内だけでオフィスが200カ所以上ありました。さらに言うと、大阪の梅田だけで11オフィス。グループ各社で拠点を増やした結果です。これらを1カ所にまとめ、社内全体の動きが見えるようにするため移転を決めました。
 これまで、例えば同じ自動車メーカーのお客様であっても、製造領域と技術領域はグループ内の別会社の営業が個別に担当していました。そのため、お客様のニーズは共有されず、ときに人材の取り合いにさえなっていました。お客様からすると、グループ内で情報共有しながら適宜、人材を手配してもらえたほうがいいですし、グループとしても『境界なき、連携。』をしたほうがサービスの質も利益も向上します。
 新しいオフィスは、ワンフロアにこだわりました。現在は、同じビルの複数階にオフィスが分かれており、居抜きのフロアもあるため、フロアごとに内装がバラバラです。内装の統一は、ワンチーム意識の向上につながります。社内の風通しをよくすることと同じくらい『境界なき、連携。』に欠かせない要素だと考えています。
 オフィスの統合によって生まれる『境界なき、連携。』を足がかりに、グループ一体となって人材プラットフォームとしての力を高め、より多くの人により多くの可能性を届けられるよう、取り組んでまいります。