人材紹介の異端、急成長企業が語る「伴走の本質」

リクルート社の『最優秀エージェント賞』を4年連続受賞、ラクスの『ベストパートナーエージェント賞』を3年連続で受賞するなど、受賞歴を重ねる人材紹介会社、Izul(イズル)。数多ある人材支援会社の中から選出される理由には、創業時から変わらぬポリシーが大きく影響していた。

「数より質」を徹底した伴走型エージェント

――ポーターズマガジンでは、2023年に「リクルート社の最優秀エージェント賞を3年連続受賞した人材紹介会社」として貴社を取材し、同年4回目の受賞をされました。その後の変化も含め、改めて事業内容をお聞かせください。

Izulは、求職者の人生や企業経営に伴走する人材紹介会社として2017年に創業しました。条件はもちろん、価値観までマッチングさせるため、求職者の面談は平均で15回行います。これは創業から現在まで変わらず貫いています。数より質を重視し丁寧な支援を行ってきた結果、面談決定率は70%台を維持しています。

ご支援する求職者は、23年当時は20代半ばから30代前半がボリュームゾーンでしたが、現在は30代後半から40代も増え、ハイクラスの支援もしています。おかげさまで、前回の取材から事業規模が拡大し、メンバーの人数は23年時点の約2倍の50名になり、領域も順調に広げています。

――急成長ですね。急に人数が増えると、丁寧な伴走の徹底は難しくなると想像します。

おっしゃる通りです。事業の急成長だけを目指せばもっと早く拡大できたと思いますが、我々の伴走支援を徹底するため、あえて時間をかけて拡大してきたと思っています。というのも、売上だけを目指すような拡大を目指していないからです。世の中にどれだけの価値を提供できたかを追い続けています。  例えば、私たちは「スピードよりも質」を徹底しています。業界では「リードタイムは早いほどよい」とされますが、当社ではそれをよしとしていません。

同業他社から当社へ転職してくるコンサルタントもスピードにこだわる傾向があり、右から左に業務を流しがちです。その考え方や仕事の進め方を変えるところから研修で教えています。

――前回の取材では、「コンサルタントの個性を活かして業績を上げてきたので、『30人の壁(*)』を目前に組織運営へシフトできるかが課題」とおっしゃいました。どのような対策をしましたか?

組織化にあたり仕組み化すべき部分がある一方で、仕組み化すると当社の強みが消えてしまう部分もあるので、その線引きをしました。教育の仕組み化は早期に取り組みましたが、当社と同レベルの伴走をするお手本企業がなかったので、ゼロから仕組みを作りました。仕組みはご支援するレイヤーによって変えています。

例えば、ハイクラスは実力がありどこでも採用されるので、決定までの手順よりもエージェントとして当社が選ばれるためのアクションに重きをおきます。若手の場合は、いかに採用されるかの工夫が必要なので、登録後のノウハウに注力します。これらの実践能力を細かく段階分けして評価し、コンサルタントが半人前、一人前、一流とスキルアップできるようにしています。
*小規模企業の社員が増え組織的な問題が出てくるときの人数の目安。

――仕組み化しなかった部分についても教えてください。

 コンサルティングの流れと評価基準は仕組み化した一方で、コミュニケーションスタイルは個人に任せています。コンサルタントそれぞれの魅力を活かして活躍してほしい。これは創業からずっと変わらない軸です。

――貴社のコンサルタントが伴走を徹底する仕組みづくりはどうされていますか。

実績や価値を生み出す人には、それに見合う豊かさと自由を報酬にしています。当社では、フルリモートかつフルフレックス制をとっており、年収は1,000万円以上、平均年収は1,300万円です。現在、1年以上のコンサルタントの平均売上額は4,000万円ですが、評価は売上よりもリファラル紹介数のインセンティブを高く設定しています。

また、月に1回開催するコンサルティングの成果発表会では、数値ではなく、どのような伴走ができたかについて発表し合っています。

事業拡大し30人の壁を超えましたが、優秀なコンサルタントを抱えるタレント事務所的なスタンスは創業時から変わっていません。優秀なコンサルタントの集合体のまま、今後も事業拡大していきます。

――発表会では、具体的にどのような話が披露されますか?

例えば、転職以前に家族の課題があり、その解決から伴走した話や、転職希望者に対し、将来の活躍を見据え「今は転職の時期ではない。現職で必要な経験を積み、ここまでの結果を残してから転職しましょう」というアドバイスをし、実際にそのキャリアを積み上げた後に転職のご支援をさせていただいた話などです。

驚異の内定率を生み出す「価値観マッチング」

――人材支援事業において、最も大切にしていることは何でしょうか。

人材紹介業界の現状として、求職者の準備が整わないまま流れ作業のように選考へ進めてしまい、本来マッチングするべき人材がマッチングしてないという問題があると感じています。私たちが扱うのは商品ではなく人生です。一人ひとりの個性と意思を大切にしなければ、求職者、企業、コンサルタント三方よしのマッチングはかないません。

当社では、条件やスキルだけでなく双方の価値観までもマッチングさせる支援を徹底しています。価値観は昨日今日築き上げたものではないので、幼少期まで遡ってヒアリングしています。全員が徹底して価値観マッチングを行うことにより、情報が蓄積され、コンサルタントの勘もはたらくようになるので、日増しにマッチング精度が高まっています。

――どのように支援されているのでしょうか?

求職者と一緒に「何が足りないか」を一緒に探すところから始めます。コンサルタントは「なぜ?どうして?」を何度も求職者に問いかけます。自分で考える力をつけてもらうためです。その中で、求職者には自己認知をしてもらいます。表面的でポジティブだらけの自己認知ではなく、自分の弱さや醜さも受け止める自己認知です。自分の強みと弱点を理解できていれば、弱点を突かれたときに「考える力は弱いけれど、頑張る力はあるから大丈夫」と思うことができます。自分の強みしか知らない状態だと、弱点を突かれた時に対応できず、壊れてしまいます。

優秀な人材を採用できる企業の特長とは

――優秀なコンサルタント集団を維持する秘訣は何でしょう?

倫理観の統一です。「金を稼ぐためなら手段を選ばない」という考え方ではなく、「いい仕事ができた」という実感が欲しい人が集まり、その結果としてインセンティブが手に入る職場環境であることが大切です。会社ではなく、個人のファンを獲得できるコンサルタントの集合体が当社だという考え方です。

――採用企業にも伴走するのでしょうか。

もちろんです。採用条件を決めるところから一緒に行います。おかげさまで、当社の高い内定率が口コミで広がり、企業からの問い合わせが日々増えています。現状、全ての企業へ紹介するのはリソース的に難しくなってきましたので、さらなる自社採用等の対策は必要と考えています。

――貴社が紹介しやすい企業や、優秀な人材を採用できる企業の特徴はありますか?

当社のコンサルタントは皆ポテンシャルが高く、常に最高のマッチングを成立させるために頭と体をフル回転させています。この熱量を感じて共に前のめりで取り組んでくださる企業は、結果として早くいい人材を採用できています。

また、提示した条件や社風と現実に相違がないことも大事なポイントです。当社のコンサルタントは求職者と深い信頼関係を築いているため、少しでも満足度が高い企業を紹介することへのこだわりがかなり強いです。もしも紹介した企業の言っていることとやっていることが違えば、もうその企業への紹介はできなくなります。

――入社後に活躍する人の見抜き方はありますか?

企業で「活躍人材の傾向」を分析していると思いますが、トップ数名だけを分析しても、その層は変数が多く、一定の傾向を導くことが難しいと思います。トップ層だけでなく、中間層、下位層それぞれを分析して、その時々に求める人材像を明確にしたほうがいいと思います。また、下位層の傾向が分かれば、それは採用しないほうがいい人材像ということになります。

――貴社の求職者の集客ルートは、前回と変わらずリファラルがメインでしょうか。

 現在も約半数はリファラルですが、最近は媒体やインフルエンサーからの送客も増えました。インフルエンサーにとっても、当社の受賞歴や決定率の高さは自身の信用と実績にもつながるため、当社に紹介してくださるようです。

「人の無駄遣い解消」が人材不足改善の一助に

――中田様が感じる人材紹介ビジネスの課題を教えてください。

労働者人口減少が叫ばれて久しいですが、私は「人の無駄遣い」を解消することで、多少は人材不足が改善するのではないかと思っています。求職者は活動のための準備不足、企業は理想を追い求めすぎて採用に至らない現状があります。双方の課題を解決することで、自ずと適切なマッチング率は上がるはずですし、企業の業績、個人のキャリアが良い方向に行くと思っています。その実現のために当社は伴走にこだわり、日々尽力しています。

――最後に、今後の目標をお聞かせください。

 知る人ぞ知るニッチな会社の状態から、選択肢の1つに想起される会社になることが現在の目標です。人材紹介事業は、生きることへの支援です。少しでも幅広い角度からの支援ができるよう、領域の拡大はもちろん、人材紹介以外の事業も視野に入れていきたいと思います。