加速する製造業のデジタルマーケット拡大。
エンジニアの業界シフトをいかに支援するか

DX、脱炭素社会、SDGs、新型コロナなど、製造業を取り巻く環境は大きく変わりつつある。そんな中で、エンジニアに特化した人材紹介を行う株式会社メイテックネクストは、業界の現状や今後をどう見ているのか。エンジニアに求められるものや、雇用形態や働き方の変化は。同社の戦略や取り組みと併せて、河辺社長に聞いた。

エンジニアからの支持ナンバー1に向けた取り組み

まず御社の取り組みについてご説明ください。

弊社はエンジニアに特化した紹介会社です。企業においてどのような働き方があるのかを追求し、エンジニアからの〝支持ナンバー1〟を目指しています。自動車業界で例を挙げると、カーメーカーとサプライヤーのエンジニアでは、役割やミッションが違います。どのような要求をされ、どのような働きがいが類推されるかなど、求職者と擦り合わせながら案件を紹介しています。これを社内で〝キャリアナビゲーション〟と呼び、コンサルタントは常に意識しながらエンジニアと接しています。お客様は製造業が中心。直近ではDXシフトや、IoT・AIを組み込んだ製品の増加に伴い、ITベンダーやAIベンチャーとのお取引も拡大しています。

理系学生向けの就活サポートサイト「理系就活チャージ」を運営され、企業に新卒紹介もしています。新卒領域にも注力しているのでしょうか?

はい。人材紹介や人材派遣のほか、新卒紹介もサービスに加えることで、お客様にワンストップサービスを展開できると考え、5年前に開始しました。「理系就活チャージ」では、理系学生向けに、我々が中途採用で培ったノウハウを提供しています。それをもとに、自ら就職活動をする学生もいますし、私たちの支援を希望する学生には新卒紹介サービスで対応。中途採用と同じく、応募から面接、内定からフォローまで行っています。

年間10万人の理系学生が卒業するなか、昨年度は130名の新卒学生を紹介。ビジネス規模としてはまだまだ小さいです。理系の学生は教授・学校推薦で就職することが多かったり、そもそも理系人材が不足していますので、企業からすると良好なサービスだと考えています。

メイテックグループでは、エンジニアの派遣サービスも行っていますが、人材紹介とのシナジーはありますか?

人材紹介の営業が、クライアントから人材派遣のニーズを伺うことがあります。人材派遣の営業が、人材紹介の問い合わせを受けることもあり、グループで連携してニーズに合わせたワンストップなサービス提案をしています。またエンジニアに対しても、メーカーで正社員になるか、弊社グループに所属して派遣先で働くか、選択肢を提案できるので、グループシナジーは大きいと思います。

新型コロナで、求人および求職者の動きはどのように変化していますか?

2020年3月の緊急事態宣言後は、対面での面接が中止になり、一時的に選考が進まない状況がありました。ただこの数年は、DX化に取り残されないよう、メーカーは技術革新を起こしていく必要性を感じています。採用を止めると、その波に乗り遅れてしまう。そのためコロナ禍においても、自動運転、製造ラインの自動化、ITや組み込みシステム、電子回路など、DXマーケットの求人は継続しています。一方で、従来の大量生産の機械設計エンジニア求人は、コロナで減少した後、横ばいが続いています。全体の求人数は、2020年6月よりプラスに転じていますが、一昨年の水準には達していません。

求職者数は変化していませんが、転職活動に様子を見ている方が増えている感じがします。またこれまでのエンジニアは、大学の教授推薦で入社し、定年までまっとうする傾向が強くありました。実際、ひとつの製品を何十年もかけて開発するスタイルなので、転職率は低いです。ただ若い世代のエンジニアは、したいことやライフスタイルの変化に伴い、転職を考えることが増えているので、長期的にフォローしていきたいと考えています。

エンジニアの業界シフトが重要に

御社が直近で、特に注力されている事業や取り組みについて教えてください。

製造業の多くが考えているのはDX対応です。IT系の求人は増えていますが、対応できるエンジニアは潤沢にいません。例えば自動車業界で、主流がガソリン車から電気自動車になり、自動化も進む中で、ITベンダーから製造業へシフトすることは、ITエンジニアにどのようなメリットがあるのか。働き方や環境の大きな変化に、エンジニアは適応できるか。受け入れる企業側はそのことを理解し、すり合わせをしていけるか。そこに私たちがより深く介在していこうと考えています。

また、ガソリン機関を設計してきた方が、いかに異業界へシフトするのを支援できるか。これは単純にIT人材の強化だけでなく、従来の電気・機械・化学系エンジニアの領域だとしても今後をみすえ、可能性のある領域にシフトして活躍してもらえるか、私たちが考えていく必要があります。

エンジニアの獲得で工夫されていることはありますか?

一発逆転の秘策はないので、メジャーなデータベースを活用してのスカウトや、ウェブマーケティングなどを粛々と行っています。中長期的には、理系学生たちに弊社のことをより認知してもらい、就職活動時や転職活動時に想起してもらえるようになれば良いなと思っています。

求人企業の開拓も継続して行われていらっしゃるのですか?

はい。製造業においてもどんどん新しい事業者が設立していますし、常に求人開拓をしています。これまでにお取引させていただいた求人企業もかなりの数があるので、ここ数年は掘り起しにも力を入れています。新規開拓と過去のお取引先に対するアプローチで、求人の新陳代謝を図っています。

コンサルタントの採用や育成ではどのような工夫をされていますか?

コンサルタントは基本的に、製造業で何らかの業務経験がある方を採用しています。営業職においては、文系・理系、製造業での業務経験は不問です。入社後はコミュニケーションやロジカルシンキング、コーチングなどベーシックな研修のほか、製造業の企業や仕事内容、専門用語、求職者の理解などをOJTで教えています。弊社にいれば、入社当初から技術的な話が自然と入って来るので、興味や学ぶ姿勢さえあれば、未経験でも数カ月でキャッチアップできます。

エンジニア採用は派遣・請負がメジャーに

コロナ禍で、コンサルタントの働き方や動き方にも変化はありましたか?

対面が難しい中で、面談は電話もしくはZoom、Teamsなどで行うようになりました。求人情報を紙で扱うこともなくなり、専用 WEBサイトを通じて求職者に届けています。ただし、高度なシステムを導入しただけでは、社内においては何も進みません。弊社は分業制のため、営業・コンサルタントのコミュニケーションが非常に大事です。緊急事態宣言後、在宅勤務に切り替わり、業務を進める上で十分な情報共有ができず、混乱が生じてしまったことも。そのため、一人ひとりが能動的に情報発信をする必要性を感じています。

またデジタルツールでの情報共有は、業務を行う上で最適かというと、そうではない。同じオフィスで、営業とクライアントとの電話の内容が聞こえ、そこから始まるコミュニケーションが大事だったりします。そのため、コロナが収束したら、社員には再び出勤して業務を進めてもらおうと考えています。候補者との面談も、オンラインがニューノーマルになるのかもしれませんが、できれば対面で行い、ご本人の思考を感じながら、最適な支援をしたいと思っています。

現在、注目している業界や業態があれば教えてください。

ホットなのは半導体業界と、自動車業界です。エンジニアを募集している企業の多くは、環境や省エネ、クリーンエネルギー、DX化を進めています。水素エネルギーを用いたデバイスの部品開発・製造などを行う企業にも注目しています。

ありがとうございました。最後にエンジニアの転職動向や雇用形態、働き方などは今後どのように変化していくか、お考えをお聞かせください。

これからは、エンジニアの働き方が重要になると考えています。例えば実業家のイーロン・マスク氏は、民間初の宇宙船を開発しました。ああいったプロジェクトの多くは、時間をかけて開発するより、優秀なエンジニアを集めて一気呵成に開発するプロセスで進んでいます。今後もそういったスピード感が求められるようになれば、新卒や中途採用に加え、派遣や請負もメジャーになっていくでしょう。するとエンジニアも、キャリアを自分自身で組み立てることが必要になります。

企業側は、特にソフトウェア領域は分業体制での開発が進んでいるので、どこまでを内製でどこまでを外部人材で開発をするのか、その判断が人材獲得と共に進められていくでしょう。そのようなエンジニアと企業側の変化に合った提案をしていきたいと思います。