ビジネスを成長させるにあたり、力強く牽引する人材の存在は必須だ。ときに新規採用も必要だろう。採用時のミスマッチはないに越したことはないが、現実はそう簡単ではない。今回は、希望の人材採用に成功している企業、デジタルアーツコンサルティングの代表・松本忠雄氏と、人材を紹介しているエージェント、マンパワーエクスぺリス(エクスぺリス・エグゼクティブ)の米本敦昇氏、アンソニー・ウォン氏に、ミスマッチが起きない採用を実現させるための取り組みについて聞いた。

クライアントの中長期計画を共有し将来を見据えた人材を紹介

最初にデジタルアーツコンサルティングの事業内容を教えてください。

松本セキュリティ製品を提供するデジタルアーツの子会社で、サイバーセキュリティ領域はもちろんのこと、ITやビジネス領域においても企業の変革をご支援させていただいているコンサルティング会社です。どんなに優れた技術やシステムも、必要な場所で使われなければ意味を持ちません。当社は、各企業に合ったコンサルティング(提案)に始まり、エンジニアリング(構築)やオペレーション(運用)までを提供する企業として、2016年に創業しました。初年度から3~4年間はコンサルティングがメインでしたが、徐々にエンジニアリング(構築)領域を増やし、現在はオペレーションのサポートもしています。21年からは海外事業もスタートしました。

企業のセキュリティ対策は時代に合わせて変化していますか?

松本そうですね。IT技術もめまぐるしく進化していますが、それに合わせて必要なセキュリティ対策も変わってきますので、IT製品やサービスの種類が増えるほど、セキュリティ対策は複雑になります。

10数年ほど前にはファイアウォールなどを活用して、イントラネット(内部ネットワーク)への外部からの侵入を防ぐことに注力すればよかったのですが、数年ほど前から本格化したクラウド時代の今では、内外の境目にとらわれない、幅広く複雑なセキュリティ対策が必要です。

ここ2~3年でリモートワークが普及したこともあり、最近はゼロトラスト(安全な場所はゼロと考える)のセキュリティ対策を急ぐ企業が増えました。当社では、単に診断や製品導入だけを行うことはありません。セキュリティに課題がある場合の多くは、セキュリティの壁に穴が開いている状態です。穴を塞ぐか壁を新たに作りなおすか、そこから一緒に考えます。対策するための製品を提案する際も、お客様の環境で、お客様の課題を正しく解決できる製品かどうか、また導入後の運用を見据えてご提案しています。また、お客様の課題解決には、あらゆるメーカー様の製品を活用する必要があります。当然、デジタルアーツ社以外の他社の製品も勧めています。

ウォンデジタルアーツコンサルティングのお客様は9割以上が国内ですが、現在グローバル展開を進めていらっしゃるので、マンパワーグループのグローバルネットワークを活かし、将来の事業拡大へ向けた人材紹介も始めました。

クライアント企業の中長期計画を把握しているのですね。

米本我々は、人を紹介して終わりではなく、その先も長く活躍していただきたいので、今後の事業計画は可能な限りお聞きするようにしています。もちろん簡単に教えてもらえるわけではないです。毎日のコミュニケーションはもちろん、週1回の定例会などを通じてクライアント企業様の動きを詳細に把握するようにしています。

松本米本さんとウォンさんチームは信頼できるパートナーですので、採用に必要な事業戦略は可能な限り共有しています。いま求める人材の枠を超えて、将来の事業計画にも活躍しそうな人材を探してきてくださいます。海外を視野に入れていると伝えてからは、専門性に加え、海外での活躍に積極的な人材を見つけてくださるようになりました。

転職意欲のない優秀な人材を説得するために必要なことは

松本米本さんのすごいところは、こちらが探している人材像の枠におさまらない、それ以上に突き抜けた技術や能力を持つ逸材を探してくる突破力です。一般的なエージェントは、こちらが求める人物像の枠におさまる方をご紹介いただきます。それはそれで採用効率が上がって助かりますが、反面、既存の枠から突出した発想ができる人材に出会う確率は下がります。米本さんとウォンさんのチームは、どこから探してくるのか、普通に求人してもなかなか出会えない逸材、かつ当社の経営理念である「現状に満足せず、IT業界の変化を楽しみ、新たな領域に取り組む」ことに積極的な人を見つけてくださるんです。

米本さん、ウォンさんは優れた人材をどのように探しているのですか?

米本エグゼクティブシニア市場で自ら転職を希望している人は2割程度。ほとんどは転職意欲がない人を説得するケースです。重要な役職に就いている人ならなおさら、簡単に転職はしません。その人たちを説得してクライアントに紹介するためには、まず我々がクライアントの経営理念や事業計画を理解し、対象人材に対しては、その能力がクライアントにとっていかに必要かを説明する必要があります。その意味もあって、クライアントや対象者との密なコミュニケーションを心掛けています。

松本候補者の中には、当社より高い給料の大企業へ転職できそうなハイクラス人材が多くいらっしゃいます。それでも、経営理念に共感しベンチャー企業の当社を選んでくださる理由にこそ、大きな意味があります。当社のようなベンチャー企業は、何らかの変化を起こすための理念を持って創業します。いまある技術やネームバリューの範囲でいかに稼ぐかではなく、既存の能力や価値により磨きをかけ、変化に柔軟に対応し、つねに新しい発想を生み出していく。その意欲を共有できる人を探しています。入社後に活躍するかどうかは後に考える話です。

ウォンデジタルアーツコンサルティング様はグローバル展開を視野に入れていらっしゃるので、とにかく国籍に関係なく探しています。いまは日本語・中国語・英語の3カ月語が通じる範囲で日々リサーチをしています。当社の人材ネットワークやLinkedInなどのSNSもフル活用します。

売上を増やすためだけの増員では誰も幸せにならない

専門性が高く海外展開に積極的で経営理念に賛同する人材となると、採用人数はかなり限られそうですね。

松本たしかに、私の最終面接の通過率は低いかもしれません。現場社員は、困ってますから、通過率を上げて欲しいと思われているでしょう。セキュリティ業界はいま人材不足なので、正直なところ当社の社員数を増やし、お客様に人材さえ提供すれば、売上は伸ばすことはできます。ですが、それは当社が求めている成長ではありません。高い専門性を持つスタッフを揃え、お客様の課題を適切に捉え、お客様に合った適切なIT・セキュリティ環境を構築し、運用を支援する。これら一連のご支援において、お客様の期待以上の成果を出すことにこだわるために、当社を創業したからです。採用率を上げたい現場の気持ちは分かりますが、長い目で見ると、当社の基準を満たして経営理念に賛同した人だけを採用したほうが、品質の高いサービスを継続でき、皆が幸せになると思います。

米本最終面接は必ず松本社長が担当されますから、候補者もより入社後のイメージができ、意識が高まります。代表と直で話すことで、経営理念への理解も深まるようです。

松本一貫して求める人材は、現段階のスキルにとらわれず、進化スピードが速いIT業界の変化を楽しみ、専門領域を広げていく柔軟な発想を持つ人です。この点を米本さんとウォンさんが理解してスカウトしてくれますし、初回面接では現場がスキル面を確認しています。私が面接する時点では、経営理念に賛同してもらえるかどうかを確認し合うだけです。

松本社長が人材エージェントを選ぶポイントは?

松本当社は海外展開を進めますので、基本的にグローバルへのリーチができるエージェントを選びます。次に、経営理念を担当者が理解し、ともに成長できる人材を紹介してくれること。さらに、マンパワーエクスぺリスのように、既存の枠を突破した提案をしてくださるエージェントは大歓迎です。当社が視野を広げる意味でも有益だからです。

ウォンエージェントとしても、クライアントの経営理念への理解を深め、関わるすべての人が成長できるビジネスとなるよう、今後も密なコミュニケーションをとり、信頼関係を深めたいと思います。