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2017.10.18
コラム

【コラム】トップコンサルタントへの道~育成編③

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マッチングに必要なスキルについて

転職エージェントに求められるスキルについて解説するこのコラム。過去2回は、求職者に対応する時に求められるスキル、企業サイドに対応する時のスキルについて、見てきた。 最終回となる今回は、マッチングに必要なスキルについて、キャリアコンサルタントの立場からお話していく。

求職者対応、企業対応と来て、いよいよマッチングだ。両者をよく知る転職エージェントだからこそできる、良いマッチングがある。 しかし、すぐにできるテクニックがあるわけではなく、両者との丁寧なコミュニケーションの積み重ねによって成り立っている。

ポイントになるのは、

●志向とキャリアプランを確認する

●良い意味で意外な選択肢を提示する

●組織内の情報共有が円滑である

の3点だ。

一つずつ見ていこう。

●志向とキャリアプランを確認する

求職者のその時の希望条件にマッチしても、先々を見ると合っているとは言えないケースもある。無理な成約は、早期退職に繋がりかねない。転職は、求職者にとって一大事。採用する企業にとっても、活躍してくれる真剣な仲間探しだ。両者とも、できれば長い付き合いになることを望んでいる場合が多い。
長い目で見た時にとても大切なのが、求職者の志向・キャリアプランと、企業の方向性のマッチングだ。

例えば、年収700万円のインフラエンジニアのポジションがあったとする。候補者は、プロジェクトの主体者として回した経験もあり、スキルセットも条件を満たしている。社風も違和感はない。しかし、会社は数年現場を経験したら、マネジメントに回ってほしいと思っている一方、本人は生涯エンジニア志向と、方向性が合わない。それでも成約した結果、1年足らずで辞めてしまう。
残念ながら、こんな事例はざらにある。

もちろん、長いキャリアプランを鑑みて、それでも双方メリットがあると割り切っている場合もあるが、稀な例だろう。
入社してから気が変わる可能性もあるが、そこに賭けるのもリスクが大きい。

転職することで何を実現したいのか、どんな働き方をしたいのか、業務とどう関わりたいのか、5年後・10年後にはどう活躍していたいのか。求職者の思いをしっかり受け止め、企業へとバトンを繋ぐスキルが、転職エージェントには求められている。

●良い意味で意外な選択肢を提示する

求職者が思ってもみなかった転職先、ポジションを提示する。また、企業側がメインターゲットとしていた層ではないが、活躍できそうな人物を推薦する。
こうした“意外な”マッチングは、転職エージェントを介していないと起きない。単なる公募では、お互いの存在やメリットに気づけないのだ。

「思ってもみなかった選択肢だけれど、よくよく話を聞けば、確かに自分の求める条件に合っているし、面白そうな組織でもある」
「そもそもこういう経歴の持ち主が存在することを知らなかったので、ターゲットとはしていなかったが、スキル・マインドともに親和性が高い」
そんな出会いがあれば、求職者も企業側も、ワクワクして挑戦することができるだろう。お互いに気に入り、成約に至るケースも多いはずだ。

そのためには、両者の本質的なニーズを、正確に把握しておく必要がある。
求職者のスキル、経験、強み、志向性、価値観、キャリアプラン、年収や待遇、勤務地の希望などだ。家族がいる場合は、家族の意向も無視できない。
そして、企業側の組織体制、募集しているポジションに求められるスキル、一緒に働くことになる仲間、OJT・教育研修、マネジメント層との相性、社風との相性、異動や制度、企業の方向性なども欠かせない。

精度の高いマッチングは、細かく正確な情報把握なくしては成立しない。地道な情報収集を行いたい。

●組織内の情報共有が円滑

求職者と接するキャリアアドバイザーと、企業を担当する営業とで、役割が分かれていることも多いだろう。そんな時に必要なのが、両者の連携だ。

中には、キャリアアドバイザー対営業、という構図が出来上がってしまっている組織もある。
求職者が入社を決め、年収が確定しないと売り上げが立たない、という転職エージェントのビジネスモデルが原因で、入社させたがる営業と、慎重になるキャリアアドバイザーとの折り合いが悪くなってしまうのだ。
情報共有のスピードが遅くなったり、細かい共有が行われなかったりすることに繋がりかねない。

また、そこまで関係性が悪くなくても、組織が分かれていれば、やはり心がけて意思疎通した方が良い。
売れる営業は、懇意にしているキャリアアドバイザーから定期的に求職者の情報を聞いている。マッチングのうまいキャリアアドバイザーは、企業や業界の動向を営業からしっかりキャッチアップしている。

社内コミュニケーションを円滑にするためのシステムを活用するのも、有効な手段の一つだろう。
(参考:https://hrbc.porters.jp/agent/)
両者の立場をお互いが理解し、求職者やクライアント企業のためになるマッチングが行われるよう、情報共有の仕組みを作っていきたい。

転職エージェントとして必要な素養について取り上げてきた3回シリーズ、いかがだっただろうか。
日々の業務に追われている人も多いだろうが、少し立ち止まって、自分自身の強みやスタイルを自覚すると、より喜ばれる出会いを創出できるかもしれない。
 

著者

【天田有美】
大手人材会社において、営業・人事教育・プロモーションに携わったのち、フリーランスとして独立。キャリアカウンセラー、ライター、チアダンスインストラクターの三足の草鞋を履く。一児の母。