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2017.12.08
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活躍するミドル・シニア層は何が違う? 大規模調査&科学的アプローチで見えた5つの行動特性

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労働力不足の解消には、ミドル・シニア層の躍進が不可欠。ではそのためにどうすればいいか、科学的なアプローチで解明すべく、発足された「ミドル・シニアの躍進を探求するプロジェクト」の研究結果発表が12月5日、パーソルグループ丸の内オフィスで行われた。発表には、共同で研究を行った法政大学大学院教授・石山恒貴氏と、パーソル総合研究所・代表取締役社長の渋谷和久氏が出席。約4700名のミドル・シニア会社員を対象に実施した、国内初という大規模調査の成果を発表した。

まずは渋谷社長が、本プロジェクトを立ち上げた背景について説明。労働人口が減少し、有効求人倍率は1.55倍(2017年10月/一般職業紹介状況)と、バブル期を上回る高水準で推移している。2025年には583万人の人出不足に直面(パーソル総合研究所調べ)する中、いかに労働力不足を解消するか、という問題意識が出発点だったという。

「選択肢は4つ。①生産性の向上 ②働く女性を増やす ③働くシニアを増やす ④日本で働く外国人増やす、です。我々はこの中で、①に寄与するべくプロジェクトを立ち上げました」(渋谷社長)

ミドル・シニア人材(※)に着目した理由として、大企業で働く社員のほぼ半数が40歳以上と、ボリュームゾーンであるからだと渋谷社長。その層が活躍し、生産性を上げることが、人手不足解消の重要な施策になると判断。また平均寿命が延び、人生100年時代と言われる中、生涯にわたっての活躍を支援することも目的として掲げた。
※プロジェクトではミドルを40~53歳、シニアを54~69歳と定義

石山氏らとプロジェクトチームを結成し、旭化成エレクトロニクス(株)、パイオニア(株)ら大手製造業3社の協力のもと、4700人を対象に調査。躍進しているミドル・シニアの行動特性や、活躍を阻害する要因を導き出したという。

続いてプロジェクトリーダーを務めた石山氏による研究成果発表が行われた。大規模調査の方法として、「任された役割を果たしている」「担当業務の責任を果たしている」「仕事でパフォーマンスを発揮している」「会社から求められる仕事の成果を出している」「仕事の評価に直接影響する活動には関与している」の5つの質問を用意。ミドル・シニア社員たちに回答してもらい、「あてはまる」に幾つ該当するかで、「躍進層」「中間層」「非躍進層」に分類した。

結果は躍進層が21.2%、中間層が48.5%、そして活躍できていない非躍進層が30.3%だった。傾向として、50代前半では躍進層の割合が低く、役職が高ければ高いほど高まった。また部下がいる役職者は、さらに躍進層の割合が高かったという。





この結果をもとに分析を進め、躍進を規定する行動特性を「仕事を意味づける」「まずやってみる」「経験を活かす」「自ら人と関わる」「年下とうまくやる」の5つだと解明した。



続いてミドル・シニア社員たちを、「ハイパフォーマー」「バランス」「伸び悩み」「事なかれ・安住」「不活性」に分類。石山氏らは、このうち約4割を占める「伸び悩み」に着目。



「伸び悩みタイプがバランスに変われば、企業の生産性や、個人の働きがいの改善になる。そのためにどう行動を変えればいいのか、現実的な解が出た」(石山氏)

まず、伸び悩みに該当する社員の特徴を、石山氏は「忙しさに忙殺されている」「自分が昇進・昇格できると信じている」「敷かれたレールの上を進んでいる」「会社や上司への満足度が低い」と説明。そのため、成長や専門性を身に付けられず、仕事にやりがいも得られていないという。

そこで、伸び悩みからバランスへ変わるために、躍進行動を促す条件を分析したところ、「上司のマネジメント」「職場の人間関係」「研修・キャリアカウンセリング」「個人のキャリア意識」という結果が出た。石山氏はそれぞれを以下のように解説。

上司のマネジメント
「しっかりコミュニケーションを取り、権限委譲して責任ある仕事を任せること。その社員を含め誰かを特別扱いしたり、好き嫌いで評価をしたりしている、と思われるとマイナスになると。また、課題を指摘するときに直接的な伝え方をしたり、仕事を上司がおぜん立てしたりするとやる気が下がる」

職場の人間関係
「仕事をする上での情報交換が活発で、上司との関係性が良好」

研修・キャリアカウンセリング
「40代からのキャリアを考える状況を、会社が作ってあげるといい。活躍できていない方はそれらを受けていない」

仕事とキャリア意識
「仕事での活躍をいかに意義あるものにするか。成長や専門性を身に付け、社会貢献を実感できることが大事」



そして、個人が躍進するためには「自走する力」が何より重要だと挙げ、発表を締めくくった。
※自走する力とは「自ら働く(やらされをなくす)」「考え直す(仕事を意味づける)」「年齢を超える(年下とうまくやる)」「すぐやる(停滞させない)」「学びを活かす(うざがられずに影響力を発揮)」と定義

最後に渋谷社長は、プロジェクトを通じて得た知見を社会に還元していくとし、「パーソルグループには研修部門もある。そこでソリューションを開発し、研修プログラムとして来年早々にも企業に案内したい。そして日本全体の生産性向上に寄与したい」と展望を語った。



 

Text by

肥沼和之
1980年東京生まれ。ジャーナリスト、ライター。求人系広告代理店を経てフリーランスに転向。
主にビジネス、ルポルタージュ分野にて執筆。新宿ゴールデン街のプチ文壇バー「月に吠える」のマスターでもある。