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2019.12.24
ニュース
登壇する今野浩一郎氏(学習院大学名誉教授) アデコ株式会社、シニア人財についてのセミナーとアンケート調査を発表

12月3日(火)総合人材サービスのアデコ株式会社によるプレスセミナーが開催された。
セミナーのテーマは「シニア人財」。
シニア世代と企業の今後について、企業の人的資産管理からマクロの雇用問題まで人財にかかわる分野に詳しい学習院大学名誉教授・今野浩一郎氏による「シニア人材の活用と活躍」についての講話と、アデコ株式会社が独自に行った働くシニア世代へのアンケート調査結果が発表された。

 
「アデコ プレスセミナー」シニア人材の活用と活躍~企業と個人に「求めること」~
今野浩一郎氏(学習院大学名誉教授)
高齢期まで「働くこと」が求められる時代
少子高齢化する日本が活力のある社会経済を実現するには、シニア世代の労働力活用が不可欠である、と今野氏。シニアを戦力として活用できる「仕組み」と「働き方」を日本がどう構築できるかを、アジアを中心に世界は注目しているという。
そのためには、60歳定年からの年金生活、から生涯働く「自営業型働き方」へ回帰する必要がある、と今野氏は語る。
これは労働者だけではなく、企業側も、シニアに限らず労働者を活用するための双方の努力が必要とされる。ではどのような努力が求められるのか。

シニア社員の戦力化に向けて、企業に求められること
現状では、シニア社員の再雇用の形は、現役時代からの延長線上で続ける「現職継続」が多いだろう。こういった体制は「福祉的雇用」と言える。しかし、この体制での再雇用は、企業側は「仕事をさせるための仕事を作る」ような本末転倒が起きやすく、正社員時代より制約が多くなるシニア社員からしても仕事内容、職場での扱い、賃金待遇において双方に不満が募りやすい。
今野氏は、これらの問題には仕事内容とシニア雇用者の社内マッチングを繰り返す必要があると語る。

 


アデコの発表した、働くシニアへのアンケート調査では、シニアが働く最も大きな理由は「当面の生活費を得るため」であり、同時に職場への満足度で不満が最も多いのは「給与」であることがわかる。

よりよく働くため、シニアに求められること
雇用とは、企業にとっては「働いて成果を出してもらうこと」であり、労働者にとっては「働いて稼ぐこと」である。
シニア社員側は「雇用」の意味を再認識しておく必要があるという。
今後、働くシニアが必要とされるのは会社に「自身の何を売り込むのか」を考え、用意してもらった仕事をする、という意識を転換していかなければならない。

シニア社員のキャリアと働く意識
今野氏は、活躍できるシニアの持つ「プラットフォーム能力」を次のように解説する。
上から目線にならず役割に即した関係性を多様な年代の社員と築ける「ヒューマンタッチ力」、新たな役割を自ら遂行できるスキル「お一人様仕事遂行力」、求められる役割が変化したことを前向きに捉える「気持ち切り替え力」、この3つがポイントとなる。

 

アデコの、働くシニアを雇用する企業へのアンケートでは、シニアを雇用するメリットに「業務スキル」「事業への知識・経験」が2トップに挙げられ、即戦力として期待していることがうかがえる。

再雇用での役割転換と環境変化に柔軟に対応できるかどうかが、今後の働くシニアと雇用する企業、双方にとっての突破口となるだろう。

働くシニアと人事担当者の調査から紐解く
シニアの働き方と雇用の実態

アデコの行ったアンケート調査では、シニアを雇用している理由に、人手不足とシニアへの即戦力としての期待が上位に。今後シニアを雇用する方針と答えた企業は75%となっている。シニア層が必要不可欠な人財と認識している企業は多く、よりよい雇用の仕方を模索している企業人事担当者が多いこともうかがえる。
  

アンケート調査結果を解説するアデコ株式会社・平野健二氏(執行役員ジェネラルスタッフィングCOO)
 

平野氏は、アンケート調査を通して、
・シニア人財は仕事に対するモチベーションも高く、やりがいを感じて働いている人も多いが新しい学びの機会を得られていない。
・シニア人財に対して学習・訓練の機会を提供することで新しいスキル・知識を獲得できれば、やりがい・生産性ともに向上し、雇用側と労働者がwin‐winの関係を築ける。
・シニア人財を雇用している企業の多くはそのメリットを感じており、今後も雇用に前向きである。一方、いまだシニア人財を雇用していない企業は「福祉的雇用」の考え方をアップデートしていく必要がある。
・シニア人財への先入観や誤解があると見られる。これは情報発信や直接アプローチでその価値を伝えていく必要がある。
と、上記のような見解をまとめた。


アデコ株式会社は、シニアの就労促進のため、東京都委託事業である「東京キャリア・トライアル65」のような取り組みも今後継続していく意向を示している。
 

シニア社員の戦力化に向けて、企業に求められること