「意向と性質と働き方の橋掛け」で誇れる業界へ。
大手も導入、業界を変えるその流儀の全貌
求職者の希望条件を聞き、それに合った企業や求人を投げ、求職者に選択してもらう。一見、スタンダードに見える人材紹介の方法を是とせず、正しい答えを追求し作り出されたのが「意向と性質を柱とするコンサルティング術(以下「意向と性質コンサル術」)だ。パーソルキャリアをはじめとした大手紹介会社も導入するなど、業界に着実に浸透し、成果を生み出すその流儀とは。作り上げた狩野氏と、斉藤氏に聞いた。
求職者の希望に沿った紹介はしない
御社が掲げている意向と性質コンサル術について教えてください。
狩野我々が提唱する「意向と性質を柱とするコンサルティング術」とは、人材紹介において原理原則に沿い、意図的に最高のマッチングを演出することで、最終的に顧客満足度を究極にまで高めるための一つの流儀です。具体的には、求職者の「意向」「性質」を面談で見極め、求人との間に論理の橋を架けることです。求職者の転職理由を構成する要素は、「意向」「性質」「希望」の3つ。このうち、大事なのが意向と性質なのです。
意向とは、求職者の本質的欲求のなかで、「こうありたい」「こうしたい」と本人が志向する方向性のこと。性質は、「ロジカルか、エモーショナルか」「受動的か、能動的か」「革新的か保守的か」など、その求職者のキャラクターやタイプです。ちなみに希望とは表面的な願望で、環境によって変わる浅いものなので、転職の本質的決断には根差しません。
斎藤人材紹介において求職者の希望を叶えることが前提とした考えはよくありません。なぜかというと、求職者の多くは、転職活動において少ない知見で判断を行います。異業種からの転職だとなおさらです。それなのに、「何をしたいか?」と問うこと自体が無責任だと感じております。最終的には本人の意思で決めてもらいますが、面談のなかで「こういうことを心がけているならこの会社がお勧めです」「なぜならこういう理由だからです」と、我々が導くことが必要なのです。
意向と性質はどのように見極めればいいのでしょうか。
斎藤求職者のキャラクターを知るヒントとして、人間を4つのタイプに分類し、それぞれに合ったコミュニケーションの取り方をする「SS(ソーシャルスタイル)4」という概念があります。人間は、「単刀直入型」「天真爛漫型」「冷静沈着型」「同調和み型」に分けられます。それを分類し、求職者の意向と性質を引き出すツールとして活用できるテクニックです。求職者がどのタイプか知らないまま面談をするより、知ったうえで話をすることで、ヒアリングミスも減りますし、早期退職の防止にもなります。コンサルタントは、企業や仕事の説明に力を入れがちですが、求職者はどういうタイプなのかを知ることが大事。我々がレクチャーをしている企業ではこのマトリックスで現場浸透しており、多くの方々から成功していると声をもらっています。
【単刀直入型】
◆有名人でいえば「北野武」
・メリハリの利いた強い話し方(声大)
・表現法が短文で断定的
・単刀直入
・結論ファースト
・決断が速い
・競争心、独立心が旺盛
・大筋をつかむとどんどん推進する
【天真爛漫型】
◆有名人でいえば「明石家さんま」
・抑揚があり感情を込めて話す(声大)
・語尾は断言する
・楽しい話が多い
・表現が大きく変化に富む
・直観的で即断即決
・まずは人間関係、その後仕事
【冷静分析型】
◆有名人でいえば「タモリ」
・落ち着いて一定のトーンで話す(声小)
・語尾は断言を避けフェードアウト
・形式や論理を重視する
・視線を外しがち
・意思決定や行動に時間をかける
・スピードよりクオリティ
【同調和み型】
◆有名人でいえば「所ジョージ」
・ゆっくり間を取りながら話す
・前置きが多く本題が最後
・皆の意見を取り入れる
・縁の下の力持ち的な言動
・皆を励ましサポートする世話好き
・仕事の前に人間関係を構築
成果や売り上げにつながる実践式勉強会
お二人はこの意向と性質コンサル術を広めるために、実践形式の勉強会も行っています。その詳細を教えてください。
狩野UCB(アルティメットコンサルティングバトル)という、面談ロールプレイング形式のバトル型勉強会を2015年から行っています。コンサルタントのレベルアップを通じ、業界全体の底上げを図ることが大きな目的で、4半期に一度開催しています。参加者は、入社2~5年のコンサルタントが中心。内容は、参加する各社から選抜された約3名のコンサルタントが、制限時間20分のなかで、求職者役と疑似面談を行うというもの。求職者の意向と性質、提案する求人案件には大まかな正解を用意しており、コンサルタントは求職者役の意向と性質を引き出し、より適した求人案件を提案します。それを約7名の審査員が点数化し、コメントをするのです。最初は2社で始めましたが、今ではパーソルキャリアやパソナ、マイナビなど大手も参加するようになりました。
斎藤出場して上位まで進んだコンサルタントたちは、その後MVPを取ったり、昇進したりと、実務面においても顕著に成果が出ているようです。部署の売り上げが130~140%成長したり、面談からの進捗割合が25%から40%になったりした例もあります。 我々は完全にボランティアで形成されています。ビジネスだけでは、多様な思惑が働き抜本的な変革は難しいもので心から業界を変えたい、という思いのみで開催しています。今後もより広く、人材紹介業界へ UCB を周知させていきたいと思っています。
UCBはどのようなきっかけで始めるようになったのでしょう。
狩野まず第一義的には自社コンサルタントの育成でスタートしましたが、大きなゴールとしては人材紹介業界の底上げが大きな目的です。仕事を聞かれて、人材紹介と答えても、「人材派遣ですか?」と聞き返されることが多くあります。人材紹介はまだまだ認知されていないのです。その理由として、質の高いコンサルタントが少ないため、人材紹介業界を目指す人も生まれないのだと思っています。
斎藤人材紹介を効率的かつシステマチックに進めようとするコンサルタントが多いことに、私も危機感を感じていました。求職者と面談をしている裏で、「仕組み」「クロージング」を前提に話しているのは、求職者を人として扱っていないということですから。
求職者に寄り添いたい、という熱い思いを持ったコンサルタントも増えていますが、それだけでなく、頭も使ってプロの仕事をしないといけない。ハートフルでありながら、論理的かつ科学的に進めていく必要があるのです。先進国での人材紹介コンサルタントは、医者と弁護士職と比較しても同等レベルの年収、ステータスを持っている人は多くいます。業界を抜本的に変えることで、日本でも人材紹介の認知度を高めたいという思いが根底にあります。
狩野かつて人材紹介業界は、「求職者が10人いれば進め方も10通り」「人材紹介に正解はない」というのが常識でした。私はそこに対して、答えのないところを走り続けるだけでは、という疑問をずっと感じていました。残念なことに大手中小といわず今でも コンサルテーションの柱も持たずに何となく の感覚で紹介を“流す”コンサルタントが多くいます。しかしそれでは仮に偶発的に良縁を演出できたとしても再現性がありません。人材紹介とは何かを明文化して、正解を見つけようと思い、作り上げたのが意向と性質コンサル術という概念です。そしてそれを業界に広め、業界自体の底上げを支えるために取り組み始めたものが UCBです。
斎藤我々は人材紹介会社に、正解を持って働いて欲しいと心から望んでおります。自信を持って、ぜひ意向と性質コンサル術を参考にしてほしい、と思っています。まずは私たちの流儀に興味を持っていただき、そのうえで各社のオリジナルを見つけていただければと考えています。
意向と性質コンサル術は早期退職の防止にもなる
人材紹介会社は、各社あるいはコンサルタントごとに、やり方が決まっていることが多くあります。意向と性質コンサル術を、社内でどのように浸透させていけばいいのでしょう。
斎藤大きな会社では、各事業部の部長以上など、組織上部の方に深く理解していただきたいですね。大手各社では、ほとんどの部長や事業部長に、直接お話をさせていただいています。中小企業の場合は、社長に理解していただくことで、浸透しやすくなると思います。
意向と性質コンサル術を導入することで、紹介会社やコンサルタントにとってどのような変化があるでしょうか。
斎藤紹介会社によっては、経営課題の解決につながります。中小企業では短期退職者が、大手企業では2~3年での退職者が多く見受けられます。この課題は、意向と性質コンサル術で解決できると思っています。短期退職が起きてしまう背景には、教育をあまりせずに数字だけを求めるため、結果が出なくて離職してしまうケースが多いのです。意向と性質をきちんと教えれば、短期退職者数はかなり減るでしょう。
狩野大手企業では、仕組みがしっかりしている反面、コンサルタントは数字だけを追うマシーンとして使われがちです。本来、私たちコンサルタントは、求職者と企業双方に対して「何をして、どのような価値あることをしたか」に主眼を置くべきです。それができないと、優秀な人材であればあるほど、人材紹介業界に見切りをつけて、2~3年で辞めてしまうのです。このような方々にもコンサルタントの仕事の奥深さを提供できると思っています。
ありがとうございました。最後に人材紹介業界へのメッセージをお願いします。
狩野・斎藤意向と性質コンサル術が浸透すれば、世のなかの人材紹介に対する認知が変わるはずです。人材業界が憧れの仕事にもなり、コンサルタントは誇りを持って働けるようになります。興味を持った方はぜひご連絡ください。我々は無償でお伝えさせていただきますし、UCBへの参加もお待ちしています。