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2025.06.13
コラム

キャリアマップを可視化して転職の選択肢を広げる一助に

キャリアマップを可視化して転職の選択肢を広げる一助に

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※本記事はPORTERS MAGAZINE Agent Vol.41掲載記事です。


2024年12月、キャリアパスを可視化して未来をシミュレーションできる法人向けキャリア戦略支援ツール『キャリアフォース』がサービスを開始した。同サービスを活用することで、求職者には、長期的なキャリアの方向性や、転職する業界や職種の選択肢が広がり、人材サービス会社には、より求職者に寄り添ったキャリア支援が可能になるという。開発したキャリウム株式会社の代表取締役 成原大敬氏に、開発の経緯や人材サービス会社が活用する際のメリットなどについて詳しく聞いた。


自分の職業を一言で書き表せなかった経験が開発のきっかけに

私が『キャリアフォース』を開発した背景には、自身の職業を言葉にできなかった経験がありました。

それは、商社勤務時代、海外出張で出入国カードを記入していたときのことでした。滞在先や渡航目的を書き進める中、「Occupation(職業)」の欄で手が止まりました。自分の職業が何なのか、一言で書けなかったのです。当時の私は、トレーディング、事業投資、営業など幅広い仕事をしていたため、どの仕事が自分を表す職業かをすぐに書けませんでした。このとき「自分が何者かが分からなければ、これから先のキャリア設計もできない」と感じました。同時に、「人生100年時代といわれる世の中、個人が自身の未来を自律的かつ戦略的に設計できる仕組みが必要だ」とも思いました。これまで、体験談ベースの情報はありましたが、それをデータ化したり、データを基に予測したりできるサービスはないと思った私は、三井物産株式会社の社内起業制度に応募し、自律的キャリア支援をテーマにした企画案を出しました。1度目の挑戦は、不採用。その後、事業の方向性を変えて2度、3度と応募し、4回目で採用され、その後の検討期間を経てやっとリリースしたサービスが『キャリアフォース』です。

『キャリアフォース』はキャリア版デジタルマップ

『キャリアフォース』は、インターネット上でオープンに発信されている約100万人の職歴データをベースに、どんな未来が広がっているかを可視化できるツールで、対象世代はこれからキャリアパスを築いていく20~30代になります。

データは、インターネット上でアップデートされている情報を蓄積するので、精度の高いビッグデータが収集できています。このデータにより、求職者は自分と似た経歴を持つ人が歩んだ道筋を知ることができます。また、未来のシミュレーションも可能です。イメージとしては、キャリア版デジタルマップといったところです。自分の周りにいる同じ業界や職業で働く人が、次にどのような仕事に就いたかがマップ上に表示されます。日々、皆様がデジタルマップで目的地を入れると、ルートを検索してくれる上に、車での所要時間や電車で行ったほうが安いなどのアドバイスをもらえるのと同じように、『キャリアフォース』は、目指すキャリアへ向かうルートや他の手段などを提示してくれます。また、提携先の求人情報とも連動していますので、マップ上で見つけた求人にブックマークしたり、面談を申し込んだりすることができます。

人材エージェントでは 24時間365日コンサルティング可能に

人材サービス会社では、登録促進、面談、掘り起こしなどでこの『キャリアフォース』の仕組みを利用いただいています。

今後のキャリア設計に関心のある求職者が自身でキャリアマップを描くとともに、キャリアマップに合わせて、その人材エージェントの保有する求人がお勧めされます(*1)。

幅広い選択肢と最適なキャリアを提案することができるため、結果として求人応募率が向上します。また、求職者がキャリアを見直したいと思った時に、24時間365日、いつでもコンサルタントの代わりにキャリア相談に付き合い、データを基に最適なキャリアプランを提案します。一斉メールのように、こちらから一方通行の情報を出して機会をうかがうのではなく、求職者がアクションを起こしたいタイミングで連絡をくださるという双方よしの機能です。

すでに6社の人材サービス会社にご活用いただいていますが、まだまだ改良の余地はあります。例えば、自社経由で転職した人の職歴データをまとめて、自社だけのキャリアパスマップが作れるようにするなどです。また、キャリアも中盤になると、どの会社に居たかよりも何をしてきたかを重視するフェーズになりますので、職歴だけでなくキャリアストーリーも可視化できる仕様にアップデートしていく予定です。

*1 自社の求人が表示されるためには、PORTERSなどの求人データとの連携が必要です。

スキルや経験を活かしたキャリアパスが描ける社会へ

キャリアパスの可視化は、自分のキャリアパスを明確に決めていない人にも有益です。例えば、『キャリアフォース』に現職を「ファッションメーカー 営業」と入力すると、次に考えられる選択肢が具体的に表示されるので、自分で考えるよりも多くの候補を知ることができます。転職時に業界や職種を変えた場合はどう変わったかも分かるので、同じ業界や職種以外の、幅広い選択肢の情報を得られます。

当社データによると、経営コンサルタントの人は幅広い領域や業界へ転職しますが、研究職の人は業界や職種を変えない傾向が強いです。また、総合商社を始めとする大手企業は、現職にとどまる人が多いです。人は、自分の身の回りの人から情報を得ますので、業界内での選択肢が似てくるのかもしれません。その点、データを活用すれば、自分の生活圏外からの情報も数多く得られるため、選択肢と可能性が何倍にも広がります。

ちなみに、GAFAM(ガーファム/Google、Apple、Facebook―Meta、Amazon、Microsoft)は、学歴よりも実力や経験を重視していることがデータから見えてきます。『キャリアフォース』では出身大学でキャリアパスが開かれているかを確認する機能があり、多様な大学の出身者がいることが確認できます。彼らは優秀な人材を学歴だけに求めていないことがうかがえます。この点はまさに私が目指すところで、学歴だけでなく、スキルや経験を活かして、それぞれの人材が適切な場所へ進める環境にしたいと考えています。

成原大敬(なりはら・ひろゆき)


2005年三井物産株式会社に入社。リテール、流通、食料領域の事業従事を経て、東南アジアに約 5年間駐在。海外勤務中に、生涯を通じて職業的アイデンティティーを形成する難しさに直面。同じようにキャリアの自律的形成に悩む人たちの課題を解決するため「キャリアフォース」の事業アイデアを草案。社内起業として、三井物産グループのベンチャースタジオ Moon Creative Lab で事業化され、24年6月に法人を設立。データに基づくキャリア戦略の構築を通じて、不安なくいつまでも情熱を持てる職業人生の実現を目指した事業に取り組んでいる。


キャリウム株式会社 
 東京都港区北青山3-10-5 Spring Terrace Omotesando 2F 
https://www.carrium.co.jp/
CAREER FORTHの運営・提供、キャリア関連サービスの開発を行う。