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【連載】選ばれる企業になるための採用マーケティング大全
【第5回】採用×動画の最前線 -後編-
※本記事はPORTERS MAGAZINE Agent Vol.39掲載記事です。
人材採用における手段として注目される採用動画。前回の第4回「採用×動画の最前線(前編)」では、選考フェーズである母集団形成~選考~内定承諾という各ステップにおいて、求められている動画を説明いたしました。後半では、実際に動画を制作する際の「企画~撮影~編集のポイント」について解説します。
今回も執筆にあたり採用動画で豊富な実績をもつ、株式会社hashigoya・長田様、株式会社NKインターナショナル 二宮様にも執筆にご協力いただきました。
【1】企画のポイント
前回の記事でどの選考フェーズに向けて、何を制作すべきかをご理解頂きました。採用動画の被写体はモノではなく[人]です。はじめに、[人]である社長・社員・社風を制作する際の[企画]のポイントを記載します。
①企画
企画は『会社の雰囲気、温度感』が伝わるものであり、文字化しにくい、空気感や温度感の高いテーマを取り上げましょう。採用動画にすべき企画対象を3つ取り上げます。
社長 → 起業した背景(二代目の場合は、代替わりの背景)、
原体験とMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)
社員 → 入社理由と入社後の具体的なエピソード、仕事内容
社風 → 社内の雰囲気とコミュニケーション
社長と社員、そして社風ですが、どれも言葉とニュアンス、そして熱量や雰囲気で伝える必要があります。
前提としてオモシロ系、TikTokなどでバズる事を考慮する必要はありません。再生数を稼ぐ企画は採用ターゲットではない人が見ることが多くなりコスパが悪く、採用動画の基本は狭く深く届けることにあるためです。
■実際のリクライブ動画企画例
・社長
・社員
・社風
■導入事例
「言語化しづらい社員のよさを、一緒に形にして伝播してくれた」社員の魅力を発信し、選考離脱半減!
企業:「ココピタ」で有名な各種レッグウェアの製造卸販売を行う、岡本株式会社の人事部人材開発グループ 牧様と奥野様
制作内容:社員にフォーカスを当てたコンテンツ「社長、社風、社員」をキーワードに複数の動画作成。
実際の声:インターンシップに参加してくださった方のうち、77%ぐらいの方が選考の最後まで乗っかってくれましたね。ただ私たちが「説明会をします」と言って説明会をするよりも、採用動画を導入することですごくたくさんの方により詳しく見ていただけているのかなっていう面でも効果は感じました。今年の最終面接までの離脱が3・3%と低く、一次選考に参加してくださった方は全て最終選考まで実施してくれました。昨年は大体8%ぐらいだったので、離脱率が(半分以上)下がっています。
②インタビューの前提条件
社員インタビュー動画はもっとも手軽で効果性も高い企画です。だからこそ、一辺倒な面白みのない動画にもなりやすいため注意が必要です。いわゆる「一問一答」状態にならないように気をつけながら、インタビュアーは下記をポイントに質問してみると良いでしょう。
□最初は出演者に15秒以上の自己紹介をさせない。
聞くのは肩書きと名前だけ。経歴や仕事内容は、これからインタビューする内容に含まれるのでここでは敢えて、言わないようにしましょう。
□質問内容
新卒入社1~3年目編:左記をベースに出演者の経歴によって質問をアレンジしてみてください。
「◯◯卒入社なので~年目ですね。なぜ◯◯社に入社しようとしたんですか?」
→いつ入社なのか、何年前に就活をしていたのかは大事な要素です。そして回答に合わせながら、なぜ応募しようとしたのか、なぜ最後は内定承諾したのかなど、就活を振り返りながら動機を引き出しましょう。
「現在どんな部署、仕事をしているんですか?」
→2年目以上の方には部署と業務内容を聞きます。ただし社歴が浅いと仕事内容をうまく伝えられないことがありますのでこの質問はカットします。
「入社してみてどうですか?」
→あえて抽象的に聞くと「よかった」「ギャップがあった」などいろいろな話をしやすくなります。
「◯◯社に入ってよかったと思いますか?」
→最後はポジティブな質問で終われるように、魅力を語ってもらえるとベストです。
□質問内容
キャリア採用編:新卒1~3年目編よりも具体的な話を引き出します。
「これまでの経歴は?なぜ転職をしたのか?なぜ◯◯社だったのか?」
「実際に転職してみてどうでしょうか?」
→これらの質問は求職者が聞きたいことです。どんな人がなぜここに転職してきたのか?という重要な部分にしっかりと深掘りする必要があります。
「会社から求められることはなんでしょうか?」
→求められる成果や会社の評価軸を話してもらいましょう。
「これからのキャリアをどう考えているか」
→キャリアアップを目的に転職する人も多くいます。この会社でどんなことが目指せるのか語る必要があります。
インタビュー前には必ず出演者の方に「何を言っても評価に影響することはない」と伝えてあげましょう。
採用動画は会社にとって都合の良いことを話すことが善ではない、という認識にいることが大切です。求職者に伝えるべきは会社の魅力ではなく「良いところも改善が必要なところもあるけどそれでも一緒に働いてくれますか?」という訴えです。
また、「会社が言っていること」にならないように気をつけるべきです。「自分はこう思っている」というスタンスで話していただくこと、よりパーソナルな部分に触れることができます。
【2】撮影のポイント
撮影前の事前準備と撮影時のコツは『いつも通りを大事に』です。
[出演者]
採用ターゲットのペルソナに近い方を人選し、出演者には質問内容と企画目的を共有しましょう。話す内容を台本やカンペで用意するのは避けたほうが良いです。
[撮影環境]
時間:撮影の時間帯は集中力が高まりやすい午前中がおすすめです。
映像:カメラマンはプロじゃなくても、かつ、スマホによる撮影で構いません。出演者が緊張しないことが大事です。
音声:非常に重要です。 音質がクリアに聞こえなければ視聴者が最後まで聞いてくれません。おすすめは有線マイク付きイヤホン(Apple純正が良いです)や、コンデンサーマイク、ワイヤレスのピンマイクなどでも構いません。
照明:明るい印象になるように、なるべく明るい場所で撮影しましょう。午前中であれば自然光が入る窓際が良いです。
撮影場所:ブランディングを意識する場合はスタジオなどでもいいですが、オフィス内の方が臨場感が出るのでおすすめです。できれば会議室など何もない場所よりも出演者のデスクや周りの雰囲気がわかる場所で撮影するのがおすすめです。
[実際の撮影]
インタビュアーは、共感よりも、どんどん話を展開させ引き出す質問力が大事です。
インタビューに慣れている第三者やプロに依頼することをおすすめしますが、社内で実施するなら社長様か広報担当者様が実施することをお勧めします。
【3】編集のポイント
話している「間」や、悩みながら話す表情も大事です。字幕は極力入れて、用語解説も交えながらテロップを組み込みましょう。また過度な演出や効果音は不要です。
正直に言うと映像クオリティで採用効果は変わらないと思っています。撮影時の社員のリアリティのある語りと、編集時の適切なテロップ出しで、十分効果を発揮します。
1つの動画に時間とコストをかけすぎず、なるべく多くの社員が話す動画コンテンツをコンスタントに作り続けることができると良いです。情報量こそ求職者が求めているポイントなのです。
【4】その他の注意点
その他に動画コンテンツを企画する際には、以下のポイントも押さえましょう。
❶演出と画角
求職者が求める情報を提供し、受け取りやすい形式や演出を考慮します。
例えば、リアルな社員の声や職場の雰囲気を伝える映像、具体的な業務内容を紹介する映像などで、演出は今はテレビ的な作り込みよりも、YouTubeなど動画SNSで普段見慣れている演出を効果的に使うのが有効です。
また求職者がスマホで動画を視聴する場合は、縦型でかつショート投稿動画のような演出も有効です。
❷掲載媒体
動画をどのチャネルで発信するかを考えます。例えば、SNSやYouTube、自社の採用サイトなど、求職者がよく利用するチャネルを選定します。求職者の視聴態度とシーンをよく考察し、考えましょう。
さいごに
いかがでしたか。動画の制作においても、すべてを業者任せにするのではなく押させるべきポイントを理解して、実践してみましょう。会社の魅力を一番理解しているのはその会社で働いている方、つまりあなたです。本記事が、効果的な採用動画制作の一助となりますと幸いです。
著者 今村邦之
ナウビレッジ株式会社 代表取締役
1987年生まれ。米国アラバマ州立大学ハンツビル校にてマーケティングを専攻。2012年、第二新卒向けの人材紹介会社を設立し、代表取締役に就任。2020年に退職。同年10月に、デジタルマーケティングカンパニー・ナウビレッジ(株)を設立。創業3年間で200社の顧客支援を行い、うち100社様は人材紹介会社様向けに求職者獲得を支援。東京医科歯科大学デジタルマーケティング講座非常勤講師としても勤務。
共著プロフィール
株式会社hashigoya 代表取締役 長田幸洋
1995年11月24日東京生まれ。立教大学現代心理学部映像身体学科在学中に映像作家として数々の賞を受賞し、19歳から企業向けに映像企画制作を手掛ける。在学中に電通でのクリエイティブインターンを経て企画/PRに興味を持ち、(株)hashigoyaを創業。その後、外資系広告代理店マッキャンエリクソンに新卒入社し、メディアバイイングを経験。9ヶ月後に退社しハシゴヤの代表に再就任。現在、ハシゴヤは7期目を迎え、映像制作を手段とした集客、採用、組織育成課題解決のサービスを展開。山梨にスタジオ、五反田に事務所を構え、大手企業から中小企業まで、伴走的に支援している。
株式会社NKインターナショナル リクライブ 編集長 二宮翔平
1991年福島県生まれ、札幌育ち。札幌でデザイン系の大学を卒業後、デザイン事務所、ブランディング会社でデザイナー・ディレクター・役員の経験を積む。2020年からリクライブの立ち上げに携わり、リクライブ責任者に就任。47都道府県100大学の学生や多くの求職者と面談し、そこで本来求職者が聞きたかったことを求人企業が発信できていないことを課題だと考え、リクライブを当初のライブ配信型説明会サービスから採用動画サービスにPIVOT。サービスの事業転換から3年で、1,500本以上の採用動画制作に関わる。動画やラジオのMCとして人と企業の魅力を引き出すことが強み。