2015年にセールスキャリアエージェント社とエリメントHRC社が『アルティメットコンサルティングバトル』として始め、パーソルキャリアが運営を引き継いだ『PCACプロジェクト』。業界全体のCAのコンサルティングスキル向上を目的とした、ロールプレイング型の勉強会プロジェクトだ。23年5月23日、パーソルキャリアの運営に移行後2回目のロールプレイング大会『PCACコンテスト』が開催された。その様子をリポートする。

エントリー企業7社10名の選抜CAによるロールプレイング・コンテスト

2023年5月23日。東京・丸の内にあるパーソルキャリアの会議室で『第二回 PCACコンテスト』が開催された。PCACはProfessional・Career・Adviser・Contestの略で、業界全体のCA(キャリアアドバイザー)のコンサルティングスキル向上を目的に始まった、ロールプレイング(以下、ロープレ)型のコンテストだ。同コンテストの歴史は、前身の『アルティメットコンサルティングバトル』が始動した2015年から数えて9年目になる。

今回は、エントリー企業7社から選抜された10名のCAが挑戦者となり、オンラインでそれぞれのコンサルティングを披露した。求職者役は、前回の優勝者であるセールスキャリアエージェント代表取締役社長、亀田昌吾(かめだ・しょうご)氏が担った。亀田氏には事前に事務局が作成した履歴書と職務経歴書が渡され、全プレイヤーが同じ設定の求職者に対して面談を実施した。

与えられた20分の面談時間の中で、同プロジェクトのテーマである「意向と性質のヒアリング、提案の橋掛け」を実践できているか、審査員が判断する。審査員は、主宰のパーソルキャリア・住永 正氏を始め、共同運営社のエリメントHRC、セールスキャリアエージェント、株式会社ミラカナの同プロジェクト担当者が務めた。

ここで、審査基準の「意向と性質のヒアリング、提案の橋掛け」について簡単な説明を加えておく。「意向」は、本人がどうなりたいのかの真意を指し、「性質」は転職希望者の価値観や人物特性を指す。転職理由や希望給与、勤務地などの条件だけで機械的に転職先を紹介するのではなく、求職者がなぜ転職を希望するに至ったか、背景に何があり、転職の先にどんな将来を描いているかなどを知り、より高精度なマッチングを実現するコンサルティング術という意味だ。

コンテストでは、業界全体の質の向上を目的とし、意向と性質と提案の懸け橋を習得し実践できるCAの創出を望んでいる。ロープレ終了後のフィードバックタイムでは、審査員から各挑戦者に「意向と性質と提案への橋掛け」への熱いアドバイスがあった。

ロールプレイング・バトルを制した上位3名は…

午前11時にスタートしたコンテストは、張りつめた空気の中で夜6時まで続いた。挑戦者は他の挑戦者のロープレは見ていない。

全10名のロープレが終わり、17時40分から成績優秀者の上位3名が発表された。審査基準は、意向と性質の他、客観性や論理性についての得点評価と、求職者役の亀田氏が提案を受け入れたいと感じたか否かだ。表彰式開始早々、司会者から「今回は本当に接戦でした。しかもハイレベルの」という言葉が発せられた。

コンテストの上位3名は、以下のとおり。

《第3位》 株式会社エリメントHRC 小沢駿介氏

◎本人コメント

「正直トップを狙っていましたが、3位入賞は誇りに思います。今回、コンテストの形でコンサルティングをしたことで、自分の課題や客観的な見え方に関するフィードバックをいただけたことが財産になりました」

《第2位》 社名非公開 S氏

◎本人コメント

「まさかの受賞で驚いています。今回の参加は、キャリアが浅い私にとって、意向と性質について勉強し身につける機会となりました。この学びを明日からの面談に活かすとともに、いつも指導してくださる先輩方に喜びを伝えたいと思います」

《第1位》 株式会社マイナビ 河原 望氏

◎本人コメント

「まったくの予想外でびっくりしていますが、うれしいです。コンテストに向けて準備を進める中での学びはとても大きく、参加してよかったと思います。この後すぐに面談が入っているので、さっそく経験を活かします!」

参加企業はすでに「意向と性質のヒアリング、提案の橋掛け」が定着している

上位3名には、表彰状が贈られた。賞状を見ると、社名は書かれていない。理由は「会社ではなく、個人の能力を評価したものだから」だという。自律が求められる現代の社会人に合った賞状ともいえる。

授賞式はオンライン上でおこなわれ、最後に各審査員の総評があり、コンテストは終了した。終了後、審査員を務めた株式会社エリメントHRCの代表取締役、狩野洋輔氏と、セールスキャリアエージェントグループの代表取締役会長、斎藤信人氏に話を聞いた。

今回のコンテストについて、全体的な感想をお聞かせください。

狩野 同コンテストは、2015年に私と斎藤会長で始めたプロジェクトですが、当時から比べると格段にレベルアップしています。

斎藤 誰か一人が突出して優れているのではなく、全員の能力が優れていてアベレージが高かったので、審査は本当に難しかったです。コンテスト史上最高のレベルであり、接戦でした。コンテストとなると、日ごろ優秀なCAも慌てて上手く対応できないことがありますが、今回は皆さん見事な対応でした。

具体的に、どのような点が優れていましたか?

狩野 プロジェクト初期は、最大のポイントである「意向と性質のヒアリングと提案の橋掛け」にたどり着いていない挑戦者が多くいました。今回は、ほとんどの挑戦者がたどり着いていました。コンテストのために身に着けたスキルというより、日頃から社内でも研修や勉強会をしている印象を受けました。

斎藤 今回、コンテストへ向けて事前にコンセプトの説明や研修をしましたが、そもそも参加してくださった企業は、すでに「意向と性質」の考えかたが定着していると感じました。

今後、コンテストをどのように発展させたいとお考えでしょうか。

狩野 いまのCAの主流は「転職理由と求人票の懸け橋」ですが、そこから転職を決めるに至った背景や理由、心情などの意向を引き出し、本人の性質と真の希望に合う企業とマッチングすることで、求職者の腹落ち度合いが大きく変わります。また、これを徹底できている会社は、おおむね満足度ランキング上位にいます。今後は、いま人材紹介の満足度ランキング上位にいる企業にもどんどん参加してもらって、さらに業界の底上げをしていきたいと思っています。

斎藤 新たな挑戦者はもちろん、今回の参加者も繰り返し挑戦して欲しいです。また、ゆくゆくはRA(リクルーティング・アドバイザー)のコンテストも実施したいと考えています。いつの日か、武道館でコンテストを実施したいと夢見ています。数万人の観客と各企業の応援団に囲まれての面談。ワクワクします!

コンサルティングスキル向上を目指す企業はぜひ参加を

コンテスト終了の間際、主宰であるパーソルキャリアの川嶋氏が総評として「まずは、こんなに強いプレッシャーがかかるコンテストに挑戦してくださった参加者の皆様に拍手を送りたいと思います。今回は、本当に接戦でした。差がついた点は、論理性ではないかと個人的に思います。今回の挑戦で、自分はまだできる、悔しい、と思ってくださった方は、ぜひご自身の論理性を客観的に見て、そしてまた挑戦してください」と次への期待を語っていた。

人材紹介業界の21年度の市場規模は3千億円に届く勢いで、1兆円到達も夢ではないといわれている。新規参入や未経験採用も増加する中、コンテストに参加するCAのレベルが上がっているということは、業界全体のCAの質が向上している可能性が期待できる。各社のコンサルティングスキルの向上は、業界全体を盛り上げる一助となるだろう。まだ未参加の企業は、ぜひ次回のコンテストに参加してもらいたい。

■第二回PCACの参加企業(抜粋)
株式会社エリメントHRC
株式会社セールスキャリアエージェント
株式会社マイナビ
パーソルキャリア株式会社
株式会社メイテックネクスト

■審査員の方々(抜粋)
株式会社エリメントHRC 代表取締役 狩野 洋輔
株式会社セールスキャリアエージェントグループ代表取締役会長 斎藤 信人
株式会社ミラカナ 代表取締役 黒澤康子
株式会社エリメントHRC 採用コンサルティング事業部 営業戦略本部長 濱田 博靖
パーソルキャリア株式会社 エージェント事業部 ゼネラルマネジャー 住永 正

■次回大会は11月下旬を予定
出場希望者は以下までご連絡ください
PCA川嶋 kawasima@persol.co.jp