人材業界全体のキャリアアドバイザーの
スキル向上を目指す
「PCACプロジェクト」始動!

2022年秋、CAのコンサルティングスキル向上を目的とする「PCACプロジェクト」が始動した。同プロジェクトは、もともとセールスキャリアエージェント社とエリメントHRC社が開催していたロープレバトル式の勉強会「アルティメットコンサルティングバトル」の運営を、パーソルキャリアが引き継ぐ形で再始動したものだ。今回は、同プロジェクトの成り立ちからイベントの様子、優勝者インタビューなどを連載形式でお届けする。第1回は、再始動の経緯やプロジェクト内容、期待する人材業界の未来について、再始動プロジェクト発起人のパーソルキャリア株式会社dodaエージェント事業部 エグゼクティブマネジャーの川嶋由美子氏に聞いた。

CAは意向と性質を深く把握し求人との懸け橋をつくるべき

まずはPCACプロジェクトの概要についてお聞かせください。

PCACはProfessional・Career・Adviser・Contestの略で、業界全体のCA(キャリアアドバイザー)のコンサルティングスキル向上を目的とした、面談ロールプレイング(以下ロープレ)式の勉強会プロジェクトです。プロジェクトには前身があり、2015年からコロナ禍前の19年まではセールスキャリアエージェント社とエリメントHRC社が「アルティメットコンサルティングバトル」の名称で運営を行い、当社は参加企業側でした。その後、中断を余儀なくされたと聞き、「これは継続するべき取り組みだ」と思い、当社が運営を引き継ぎました。現プロジェクトは当社が主宰で、他にエリメントHRC、セールスキャリアエージェント、マイナビの4社で運営しています。

主な活動は、年3回のロープレバトルです。バトルにエントリーした企業が1~3名の代表CAを選出し、当社が用意した転職希望者を相手に面談(実技)をしてもらいます。面談終了後は、外部有識者がアドバイスと審査を行い、優勝者を決めます。レース終了後は懇親会を行いますので、ふだん同業他社と接する機会が少ないCA同士の情報交換の場になります。

エリメントHRCの運営時代にも取材していまして、その際「意向と性質コンサル術」というコンサルティングの解を提唱していました。それは現在も変わらないですか?

方向性は同じです。「性質」は転職希望者の価値観や人物特性を指し、「意向」は、どうなりたいのか、ご本人のありたい姿を指します。CAは意向と性質をある意味求職者よりも深く知り、求人との懸け橋をつくるべきという意味です。

CAは、ただ転職希望者の希望条件に見合う企業を探し出すだけが仕事ではありません。それだけならAIで十分対応できます。CAに求められるのは、転職希望者の言葉の背景を深堀し、本当に見合う企業とマッチングするスキルです。例えば、年収アップのために転職したいと言われたら、なぜそう思うか、希望の背景を聞きます。スキルを活かすことで結果的にもっと高い年収の企業に転職したい人もいれば、同級生より年収が低いから同等の年収にしたいことが主訴の方もいます。後者の場合、年収そのものが目的になっているので、年収アップだけを目的に転職した場合の業務内容例を話し、本当にそれが望む転職の形かを確認します。転職希望者自身が自覚していないために、言語化されていない価値観やありたい姿をヒアリングさせていただくことで、転職希望者と採用企業の双方が長く一緒に働ける状態へ導くことがCAの使命です。

▼前回記事
人材紹介のたった一つの正解のかたち 株式会社エリメントHRC 代表取締役 狩野洋輔 / 株式会社セールスキャリアエージェント 代表取締役 斎藤信人

業界発展の最優先課題は信頼の構築

自社や運営会社内だけでなく、業界全体を巻き込んだプロジェクトにする理由は?

どの人材紹介業も感じていることだと思いますが、転職には人材紹介以外の手段もありますので、転職希望者がどの人材紹介業を選ぶかは、その次の話。つまり、転職の手段として人材紹介業界全体の信頼を高めることが最優先なのです。人材紹介サービスを安心して利用してもらうためには、転職希望者に真摯に向き合い、真の意向と性質を聞き出し、長く働ける企業とのマッチングができるCAの存在は不可欠です。もちろん、各社スキルアップ研修や勉強会は開催していますが、ある程度の実力がついてくると「自分の実力は業界全体の中ではどの程度か」「他社から見た自分はどんなCAか」などを確認したくなります。私自身、12年間のCA時代に幾度もそう思いました。このプロジェクトを通じて、各社のCAが互いのスキルを持ち寄り、共有し、お互いを高めて欲しいと思っています。

少し前なら、自社のノウハウや優秀な人材のテクニックを他社に教えたりするなんてあり得なかったかもしれません。ですが、いまは同業異業問わず、よいアイデアは共有し、ともに発展していく時代です。このプロジェクトを通して、人材業界全体のCAのスキルを高めるだけでなく、各社のトップにプロジェクトを知ってもらい、考えを共有していきたいと考えています。

川嶋さん自身も長くCAの現場にいたからこその想いがあるのでしょうか。

そうですね。私はCAの仕事が天職だと思っています。転職希望者の皆さんは会うたびにどんどん磨きがかかり、自分の魅力を知り、自信を持って転職していきます。転職希望者の皆さんが変わっていく姿を見ると、CAの仕事に携われてよかったと感じます。転職の模様は百人百様です。だからこそCAは常にスキルアップが必要ですし、それがやりがいでもあります。

優秀なCAの共通点とは

23年1月に開催された第1回の優勝者を選んだ決め手は何ですか?

第1回の優勝者は、セールスキャリアエージェントの亀田昌吾(かめだ・しょうご)さんです。亀田さんは、「聴く力」がずば抜けています。ヒアリングしながら要点を整理し、ポイントとなる言葉を捉えて深堀し、転職希望者が本当に求める仕事を引き出す能力がすごく高いです。優秀なCAは総じて、転職希望者の言葉の真意にたどり着くことができ、本当に望んでいる希望を探り当て、見合う企業をマッチングする力に長けています。そのため企業側からも転職希望者からも評判がよく、転職後の離職率も低くなります。

旧UCB時代の歴代優勝者は、現在どのようなキャリアを歩んでいますか?

CAとしてコンサルティング力に磨きをかけ続けている人もいれば、エンジニア領域の転職など専門分野の知識を高めていく人、マネジメント能力の強化を始めた人など、キャリアの高め方はさまざまです。一般的に、新卒から独り立ちするまでは一定以上のコンサルティング力をつけることに注力しますが、ある程度のスキルが身に着いた先は、個人の強みや目標に合わせたキャリアアップをする人が多いのではないかと思います。

第2回は23年5月開催。参加企業募集中!

第2回は23 年5月開催とのこと。どのような企業に参加して欲しいですか?

参加企業は、人材紹介サービス業であれば、幅広く歓迎します。CAのコンサルティングスキルにこだわる企業には、ぜひ参加していただきたいです。何度も転職する転職希望者も多い時代ですから、一回担当したら終わりでなく、二回目以降も指名されるCA、企業であることが、自社・業界発展のカギのひとつです。ぜひPCACプロジェクトを通じて企業同士が交流し、共に業界の信頼を高めていきましょう!

第2回:5月23日(火)/第3回:11月下旬予定
出場希望者:PCA川嶋 kawasima@persol.co.jp