キャリアアドバイザーは合意形成ができてこそプロフェッショナル
2022年秋、CAのコンサルティングスキル向上を目的とする「PCACプロジェクト」が始動した。同プロジェクトは、もともとセールスキャリアエージェント社とエリメントHRC社が開催していたロープレバトル式の勉強会「アルティメットコンサルティングバトル」の運営を、パーソルキャリア社が引き継ぐ形で再始動したものだ。この連載は、同プロジェクトの成り立ちからイベントの様子、コンテスト優勝者インタビューなどを数回に分けてお届けする。第2回は、23年1月に開催されたロープレコンテストの優勝者、セールスキャリアエージェントの社長、亀田昌吾氏に話を聞いた。
▼前回記事
人材業界全体のキャリアアドバイザーのスキル向上を目指す「PCACプロジェクト」始動!
PCAC優勝が自分の目指すコンサルティングの証明に
業界全体のCA(キャリアアドバイザー)のコンサルティングスキル向上を目的とした「PCAC(Professional・Career・Adviser・Contest)プロジェクト」での優勝、おめでとうございます。感想をお聞かせください。
ありがとうございます。優勝できてうれしいのはもちろんありますが、正直ホッとしました。当社は「PCACプロジェクト」の前身である「アルティメットコンサルティングバトル」を始めた会社ですし、社内に過去の優勝者が2名おりますので、社長である私がここで優勝しないわけにはいかないというプレッシャーがありました。参加が決まってからは、優勝者の二人にアドバイスをもらいながら何回も何回もロールプレイングを積み重ね、本番に備えました。
優勝者からは、どのようなアドバイスがありましたか?
曖昧な質問や会話を可能な限り具体的にかみ砕き、意志の齟齬(そご)がないか都度確認するようにと、アドバイスを受けました。2019年の入社以来、求職者の価値観、人物特性や、本当にありたい姿を明確にすることをモットーにコンサルティングしてきましたが、第三者にチェックしてもらったことで、まだまだ改良すべき点があることに気付きました。
私は社長でありプレイヤーでもあります。人材事業においては、トップのコンサルティング力が会社の考え方やクオリティに直結しますので、コンテストに参加して本当によかったと思っています。優勝したことで、自分が目指す方向性が間違っていないことの証明になりましたので、より自信を持ってお客様に接することができるようになりました。
フラットな視点、合意形成、ストレートな質問で優勝獲得
優勝の決め手について、審査員からはどのような評価がありましたか?
合意形成力を評価していただきました。経験値による思い込みで求職者の人柄や能力、適性を判断せず、データに基づくフラットな視点で質問を繰り返し、お互いの考えが合っているか都度確認し、ボタンの掛け違いが起きないように努めていたとのことでした。また、私は企業の人事担当者が聞きにくい質問もストレートに聞くようにしていまして、その点も評価していただきました。
聞きにくい質問をストレートに聞くコツはありますか?
聞いた質問に対して「なぜその質問をしたか」の説明を付け加え、ご納得いただいてから回答してもらっています。例えば「パートナーはいますか?」という質問。私が「この回答はキャリアや勤務地など転職の可能域を知るために必要です」と説明すると、皆さん抵抗なく答えてくださいます。
一般的に、パートナーの有無はデリケートな質問なので聞きにくいと思います。企業の人事担当者なら、セクハラとも思われかねないので尚更です。そこで「誰かに相談しましたか?」など遠まわしに聞くことになりますが、相手にしてみればこれこそ「その質問は必要なの?」と違和感を覚える質問になり、素直に答えにくくなります。家族や彼氏・彼女の存在を曖昧にしたまま内定を決めると、最後の最後で「家族の反対で辞退」という結果になってしまいますので、明確にしておくほうがいいと思います。
なるほど。遠まわしに聞くから回答も的を射ないものになり、意思の疎通が図れず、最後にお互いが「こんなはずじゃなかった」という結果になってしまうのですね。御社経由で入社した方の6か月以内の離職率が0.3%※と圧倒的に低い理由は、求職者の真の希望と適性を的確に捉えているからだと分かりました。
ありがとうございます。求職者の意向と性質を的確に聞き出し、最適なマッチングにつなげること。これこそが当社のモットーです。人材業界はいま、サービスの在り方の過渡期にあると思います。参入企業が増え、データやマッチングのシステム化が進む一方、マニュアル通りのコンサルティングに不満を感じるお客様も増えています。もちろん、デジタル化やDX化は必要です。ですがその前に、求職者一人ひとりが心を持った “人” であることを忘れてはいけません。求職者とクライアント企業の双方に良縁と思っていただき、長い付き合いができるよう、CAは日々工夫し、より満足度の高いマッチングを目指す必要があります。
※入社後6か月の個人の離職率
日本一のエージェント集団を作り、トップエージェントになる
亀田社長は23年1月に社長へ就任されました。抜擢の理由を前社長の斎藤会長からお聞きになられましたか?
経営者に必要な「土壇場の対応力」を評価したと聞いています。斎藤はグループの事業拡大にともない誰かに当社の社長を任せるつもりで、前々から土壇場に強い人を探していたそうです。
成績も優秀でいらっしゃると思いますが、入社時からトップコンサルタントだったのですか?
いいえ、とんでもない。実は、入社1年目は、同期の中で一番売上が悪かったです。2年目になり少しずつ売上が伸びてきたところで、コロナ禍になりました。この期間に持ち前の「知りたい欲」を活かして豆知識をつけたところ、それがクライアント企業とのコミュニケーションにつながり、先方の本音や希望を知るきっかけになりました。その後、徐々に求人数が回復し始め、私の売上も上昇しました。コロナ禍で転職したクライアント企業の人事担当者も多く、その方々が転職先で再び私に依頼してくださることが増えており、どんな状況下でもまじめに取り組んできてよかったと思いました。
御社の現在の取り組みや今後の展望についてお聞かせください。
当社は、営業職やバックオフィスなどをメインとした人材紹介事業として、以前は若手人材を中心に展開していましたが、徐々に世代幅を広げています。今後も事業を拡大する予定ですので、採用も増やしています。エグゼクティブクラスにも注力する予定です。
人数を増やしてもコンサルティングの質を落とさないようにするため、以前は個々に設定していたKPIをチーム制にしたり、頑張るほどポイントが加算される制度を設けたりしながら、どんな状況でもコンサルティングの質にムラがでないよう心がけています。ゆくゆくは、当社が日本一のエージェント集団を作り、トップエージェントになることを目標にしています。
最後に、「PCACプロジェクト」参加を検討中の企業へメッセージをお願いします。
人材業界のコンサルタントであれば、どの会社でも、どなたでも参加する意義があると思います。日々の業務の中で、いつの間にかコンサルが我流になってしまっていたことに気付きます。我流は、よい方向に働くこともありますが、うまくいかなくなる原因にもなります。いちど原点に立ち返り、先入観をなくし、真のコンサルタントとしての姿を整えるチャンスです。特にマネジメント層や教育担当者にはお勧めします。
《PCAC今後の開催について》
5月23日(火)/第3回:11月下旬予定
出場を希望される企業様は以下までご連絡ください。
パーソルキャリア株式会社 川嶋 kawasima@persol.co.jp