2023年4月、Adecco Group Japanの人材紹介ブランド「Spring転職・就活エージェント」が「LHH」に統合し、ブランドチェンジした。すでに国内での知名度がある「Spring」の名を、なぜこれから認知拡大が必要な「LHH」に変えたのか。その理由を、LHH Japan のCountry Presidentに就任した板倉啓一郎氏に聞いた。
統合はブランディングの最適解だった
最初に、LHHの事業概要をお聞かせください。
LHHは、Adecco Groupのグローバルビジネスユニット(注:事業ブランドと同様の位置づけ)である「Adecco(アデコ)」「AKKODiS (アコーディス/旧Modis)」「LHH(エル・エイチ・エイチ)」の一つです。
現在、世界に8千人の社員とビジネスコーチが在籍し、30カ国以上の1万5千を超える組織と連携、毎年約50万人の転職や人材育成、再就職を支援しています。2023年4月3日付で、Adecco Group Japanは人材紹介・転職支援サービスの「Spring Professional」を「LHH」へ統合しました。LHHは、人材紹介や転職支援はもちろん、人材育成や再就職支援、組織開発なども含めた包括的なタレントソリューションを提供しており、世界でも有数のタレントソリューション企業です。
統合前から、LHHというブランドはAdecco Group Japan内に存在していました。これをアデコと同じように一つのブランドと位置付けて認知拡大するため、再就職支援分野では認知度が世界レベルで高く60カ国以上の支援実績があるLHHにSpringを統合し、包括的な支援ができる体制に進化させました。
事業を包括的にして、より一層グローバルなブランドへ育てるために、世界の認知度が高いLHHにSpringを統合したのですね。
おっしゃる通りです。ですが、統合に向けて動きだした当時のLHHの国内認知度は非常に低かったのが事実です。その状態で突然SpringからLHHに変えるのはビジネスとしてリスクが高く、人材やクライアントの混乱を招きかねないと判断し、半年にわたり広告やSNSでの告知をはじめ様々な形でブランド統合を周知しました。そして、2023年4月3日付で、正式にLHHというひとつのブランドとしてスタートしました。
統合により既存社員の育成や再就職支援もワンストップで可能に
統合により、事業内容はどのように変化しまたか?
Spring時代は、人材紹介と転職支援に特化していました。その中で、顧客企業には人材周りのさまざまな課題があることを見聞きしてきました。リーダー育成やリスキリングが重要性を増し、業態転換をおこなう企業も増えてきたので新規参入ノウハウについての課題を抱えている企業も複数あります。これら人材周りの課題解決も弊社がワンストップで提供できれば、お客様も我々も〝Win Win〟になります。LHHへの統合で、人材育成や組織開発、再就職支援までを包括的に提供できるようになった点がもっとも大きな進化であり、我々が実現したかったことです。
具体的には、例えばお客様企業がDX化を図りたい場合、IT系人材の採用支援にとどまらず、既存の従業員のコーチングで変化・変革時に必要なスキルや意識を習得するプログラムや、リスキリングの機会を一体的に提供できるようになりました。リスキリングに関してはグループの別ブランドであるAKKODiSもノウハウを持っているので、横の連携でサービス提供することもあります。
ブランド統合前の旧LHHも、ハイレベルのタレントソリューションを提供していました。しかしながら、当時は少人数精鋭のチームだったため事業拡大が難しい状態でした。この度の統合により、そういった以前からLHHで提供していたサービスをより多くのお客様企業へ提供できるようになった点も進化です。企業からの問い合わせや相談件数も徐々に増えています。
入社後満足度と定着率を上げるカギは「ビジョンマッチング」
統合に際し、御社の従業員の採用に変化はありましたか?
採用は統合の有無にかかわらず常におこなっています。いま社内には、競合他社から転職してきた人材や異業種転職者、ずっとAdecco Group Japanで働いてきた人材など多種多様なキャリアの持ち主で組織が構成されています。これまでSpringブランドで人材紹介・転職支援サービスを提供してきた「エンジニア」「DX&デジタルマーケティング」「IT&WEBセールス」「ライフサイエンスメディカル」「ケミカル&エネルギー」「エンジニアリング&コンストラクション」「ファイナンス&リーガル」「建設&不動産」「セールス&マーケティング」「HR&総務」「新卒」「エグゼクティブ」の12の職種専門部門に、LHHの人材育成支援や組織開発支援、再就職支援のチームが加わった形です
入社後は、最初に基礎研修があり、その後は各部署のOJTが研修の主になります。弊社の営業スタッフはCA(求職アドバイザー/個人)とRA(採用アドバイザー/企業)のどちらも担当しますが、業種はIT、バイオ、物流、建設、バックオフィスなど各分野に専門特化します。専門特化することで業界を深堀でき、深い知識を持てば顧客企業と人材からの信用と安心感が増し、業界内から幅広い情報が入るようになります。
業界を深堀して支援の幅を広げることで、ビジョンマッチングも向上すると期待しています。ビジョンマッチングとは、年収や勤務地などの条件だけでなく、何をやりがいに感じるかや、ライフプラン、企業理念への共感などの項目も合わせてマッチングする手法です。我々が約2年にわたり実施した入社後の満足度調査では、入社後の満足度が高い方は企業のビジョンへの共感度が高いという共通点があり、共感度が高い人は定着率も高いことが分かっています。
求職者と採用企業、双方から深い考えを引き出す作業を自動化することは現時点では難しく、人の関与が欠かせません。そもそも転職時に明確なビジョンを持っていない方も多いため、コンサルタントから人生に対するビジョンや人生設計を聞かれて初めて自分の人生について考える人も少なくありません。ビジョンマッチングに関しては自動化せず、コンサルタントが常に寄り添い、情報を引き出す作業をする必要があります。
ビジョンマッチングは統合前から注力していた取り組みですが、統合によりスタッフが人材紹介や転職支援だけでなく、人材の育成支援や組織開発支援まで総合的に関わるようになったことで、ビジョンマッチングはさらに向上すると予測しています。
人と企業が躍動すれば社会は自然に変化する
最後に、現段階の目標や展望をお聞かせください。
LHHへ統合してからまだ1カ月強ですので、まずはブランド認知度を高めることに注力していきます。合わせて、統合により加わった人材育成や組織開発、再就職支援分野の知識を高め、より多くのお客様に提供していくことが近々の目標であり、課題です。
LHHのスタッフは非常に多様性に富んでおり、多種多様なバックグラウンドとスキルをもった人材の集合です。それぞれの経験や知識を社内で積極的に共有し、より高精度のソリューションを生み出せる環境づくりを積極的におこなっています。
働く人々がやりがいを感じながら生き生きと働くことができれば、それが企業の成長にもつながり、社会も変わっていきます。我々は、働く人々と企業が躍動するためのサポートをする存在でありたいと思っています。