一気通貫型の導入とDX化の推進が
コンサルタントの成果と顧客満足度をさらに高める

新型コロナをはじめとした社会の変化の中で、株式会社パソナの人材紹介事業は、市場のニーズや求職者の動向をどう見ているのだろう。そして戦略や取り組み、目指すべき人材紹介のあり方をどう考えているのか。他の人材紹介会社と差別化を図り、独自の強みやブランドイメージを生かして、同社が行っていること、これから強化していくことを聞いた。

IT・EMC領域と管理部門を強化していく

まず御社の人材紹介事業の特徴について教えてください。

弊社は東名阪を中心に、全国で人材紹介事業を展開しています。オリコン顧客満足度調査「転職エージェント」ランキングで、3年連続総合1位に選ばれたように、顧客視点の丁寧なサービスが強みだと自負しています。現在もクライアント・登録者にNPS調査を定期的に行い、サービスの改善・強化を常に行っています。

また総合人材会社であるパソナの、幅広いサービス提案をできるのも特徴です。これまでは企業に対し、人材紹介事業本部として、「求人があるか・ないか」というコミュニケーションが中心でした。すると求人がないときは、それ以上の接点が持てません。求人がなくても、人的課題に対して弊社のほかのサービスを提案できれば、企業は満足してくださいますし、求人が発生したタイミングでスムーズに人材紹介の提案もできるのです。候補者の意向に対しても、一つの窓口で、色々な選択肢やキャリアプランのアドバイスが可能です。

新型コロナの影響も大きいですが、最近のトレンドとして、どの領域・業界の採用ニーズが高まっていますか?またそれに対し、御社の取り組みや戦略をお聞かせください。 

ニーズが明らかに高まっているのはIT業界です。採用単価も上がっています。ただ弊社の人材サービスは、事務系に強いイメージを企業からも候補者からも持たれがちで、乖離が大きいのが現状です。その中で専門職領域を強化していくのは難易度が高いですが、チャレンジしていきたいと考えています。

またパソナのイメージやブランド力を生かして、管理部門にも注力しています。この領域の人材は、2020年4月の緊急事態宣言後、企業からのニーズが瞬間的に落ちました。管理部門はいわゆるコストセンターなので致し方ない部分はありますが、コロナの影響を受けてどの企業からも、業務改善や新規事業など、経営企画に紐づく領域はニーズが高まっています。コンプライアンスへの社会的な意識も同様に高まっていると考えています。戦略の一つとして強化していきます。

高まる即戦力人材へのニーズ、候補者は転職に慎重に

企業と候補者の動向は、どのように変化していると感じていますか? 

クライアントは、即戦力人材へのニーズが高まっている一方で、20代のポテンシャル採用求人は減っている印象です。ただし、必要とする人材やポジションに対し、紹介会社を経由して採用したいというニーズは変わりません。そこに応えられるスキルをより強化し、企業の成長に寄与するために、研修や成功事例の共有、組織横断してマネージャーたちがミーティングを行うなどしています。

候補者は、転職への意思決定が慎重になっているように感じます。例えば転職することで、年収が数十万円減ってしまうと、以前ならチャレンジの気持ちで踏み切れたけれど、今は踏みとどまっておこう……という方が、若干増えたのではないでしょうか。

新型コロナで、御社の人材紹介の売上や組織体制などにも影響はありましたか?

新型コロナの影響で、人材紹介事業本部の人員は、一時的に7割程度に縮小しました。一方で他の事業部である、再就職支援のニーズは高まりました。人材紹介事業本部から、キャリア支援事業本部(再就職支援)に異動になった人員もいます。会社全体としては業績は向上しています。これはリーマンショックのときも同様でした。

その中で、コンサルタントの動き方や、対応方法に変化があれば教えてください。

商談や面談は、オンラインで行うのが当たり前になりつつあります。コロナが広まりだした直後は、テレワークへの移行に伴う混乱で、クライアントと一時的に連絡が取れなかったことも。求人をクローズするか、面談結果はどうか、などが把握できなかったこともありましたが、最近はそういったこともなくなりました。

候補者とのコミュニケーションは、接点をいかに増やすか、を重視しています。オンラインだと、集中力は持っても30分程度です。そのため、3日や1週間など短い間隔で接点を持ち、適切な情報提供や、候補者の不安の払しょくに努めています。

DX化の推進と一気通貫型の導入

人材開拓ではどのような工夫・取り組みをしていますか?

弊社は自社で集客できる媒体を持っていません。外部媒体の活用や、過去の候補者の掘り起こしもしていますが、一番は現在のキャンディデイトとしっかり向き合うことを大事にしています。候補者の動向で注目しているのは、女性の活躍です。ここ一年ほどで、社会全体で女性の働き方の変化や、女性活躍を推進する気運が高まっていると感じています。女性にとって働きやすくなりつつあるのかなと。弊社の人材紹介部門も、管理職は3割弱、部長も3割が女性です。この流れも意識して、候補者開拓や企業への提案を行っていきます。

今後のコンサルタントの採用や、育成計画をどうお考えですか?

人材紹介は、人員数に応じて売り上げが伸びるビジネスモデルなので、コンサルタントの人数は増やしていきたいと考えています。これまでは未経験のジュニア層を採用し、育成する方針でしたが、これからは経験者にも広げていくと思います。

育成は、一気通貫の手法を強化していきます。他の人材紹介会社は、求人数も登録者も多いので、システムマッチングでも良い成約が生まれやすい。ただ弊社の規模では、コンサルタントが企業の採用ニーズや課題を聞いた上で、自ら人材をスカウトし、成約を目指す手法の方が、良いサービス提供を実現できるからです。

ありがとうございました。最後に今後のビジョンについて教えてください。

引き続き、顧客満足度を軸に他社と差別化を図っていきます。またDX化を推進し、生産性や顧客満足度の向上につなげていきます。人材紹介の業務は、システムに任せられる部分がまだ少ないので、そこを広げていきます。。蓄積したデータや情報をもとに、精度の高いマッチングも実現したいです。実際、私の仕事の3分の1はDX化と言っても大げさでないくらい、注力している取り組みです。同時に、コミュニケーションやヒアリングなど、人にしかできない部分を磨いていきます。