Column/News
【連載】選ばれる企業になるための採用マーケティング大全
【第3回】
人材紹介会社との付き合い方(エージェント・コントロールのお作法)
※ 本記事はPORTERS MAGAZINE Agent Vol.37掲載記事です。
人材獲得競争が過熱する中で、依然として重要な流入導線である人材紹介会社。契約したら、いい人を紹介してくれる「待ちの時代」は終わり、採用パートナーとして強固な関係性を構築する「協業の時代」に変化しています。今回は「エージェント・コントロールのお作法」というテーマで、人材紹介会社様との付き合い方を記載していきます。本記事では人材紹介会社を「人材エージェント」、転職希望者を「キャンディデート」と記載します。
【1】人材紹介会社の組織構造
流入チャネルが多様化する中で、人材紹介会社からの採用の依存率は依然として高く、特にコロナ禍以降は依存率が急激に高まっています。
ところで人材エージェントというと「成果報酬で人材を紹介してくれる会社」というイメージがあるかと思いますが、紹介会社内での組織構造は下記となっています。
ポイントとしては、採用企業とキャンディデートの間にいる人材エージェントは、更にRA(Recruiting Adviser :法人営業)とCA(Career Adviser:キャリアアドバイザー)の二者が存在しており、RAは企業様としか対応をせず、CAはキャンディデートとしか話さないという特徴があります。
【2】人材紹介会社の課題
結論として、「求人が多すぎて、どこを紹介すれば、キャンディデートとして、人材エージェントとして良いか分からない」という点があります。
人材エージェント内では自ずと「注力求人に絞って紹介効率を上げよう」という力学が働きます。注力求人は以下3つの要素で構成されます。
[歩留り]
人材エージェントは推薦決定率を計測しています。推薦した数に対して、内定承諾が生まれた歩留りです。こちらが高い企業は、業務効率が良いため好まれます。推薦決定率を上げるにはストレートに記載すると、「誰なら内定を出すし、承諾がしやすい」という採用ターゲットを解像度高く共有する必要があります。後述する「ターゲットシート」で説明します。
[エントリーが取りやすい]
人材エージェントは無数の求人の中から貴社をピックアップして、キャンディデートに推薦します。1社1社の特徴を全て把握することは現実的に難しいため、ブランド名がある企業様やキャンディデートが行きたくなるような情報を持っている会社が好まれます。
[単価が高い]
人材紹介もビジネスです。同じような求人であれば、人材紹介手数料が高い求人を選びます。コロナ禍明けの2023年以降、人材需要が高止まりしているため、「年収の35%」が相場となり、他社より低い紹介料金で契約するということは減っているかと思います。推薦がこず、紹介料金が低いままになっている場合は、手数料の見直しを実施しましょう。
【3】エージェント・コントロール(設計編)
設計編では、推薦歩留りを上げるための「【エージェント向け:ターゲットシート】の作成」とエントリー率を上げるための「採用コンテンツの作成」を説明します。
[ターゲットシート]
求人票にはかけない情報である、年齢・性別・学歴・国籍・面接のチェックポイント・他社との違いなどを記載したドキュメントです。
雇用対策法で年齢制限を求人票で記載することはNGとされています。しかし採用する傾向が高い人材の特徴を明記することで、人材エージェントはキャンディデートのイメージが湧きます。また面接のチェックポイントや他社との違いを記載することで、年齢・性別といった定量面だけでなく、希望条件や人物像も含めた定性面のターゲットイメージも湧きます。
[採用コンテンツ]
注力求人の要素である「エントリーが取りやすい」を支援する「コンテンツ」を作成し、全てWeb上でアップロードしましょう。
各コンテンツの詳細は【連載】「選ばれる企業になるための採用マーケティング大全(第二回)」をご確認ください。
これでいよいよ準備が整いました。
【4】エージェント・コントロール(運用編)
「エージェント向け:ターゲットシート」と「採用コンテンツ」が揃ったのちに、人材エージェントに連絡をしていきます。ここでは運用編として、連絡の仕方、関係性の持ち方について記載します。
①人材エージェントへの初回接触は、Webよりも知り合い経由で繋がりましょう。
人材エージェントへの問合せはWebで申込みより、知り合いを通じて、評判のいいエージェントの社長もしくは営業担当を紹介してもらいましょう。評判のいいエージェントというのは、【推薦数】【決定数】【決定率】【就業後の満足度の高さ】が良い会社をさします。評判のいいエージェントは自ずと、よいキャンディデートをリファラルで集客しているため、貴社の採用候補にもあてはまります。
また、同じ人材エージェントという会社内でも、良い人材をご紹介いただけるかは、会社というより営業担当次第な部分も大きいです。そのため接点の持ち方によって、貴社へ良い方を推薦いただける確率が高まります。
②人材エージェントとの契約は選り好みせずに積極的に締結しましょう。
人材エージェントの契約時点での登録者の数が少なくとも、いつ自社にとっての採用ターゲットが、そのエージェントに転職相談を持ちかけるかは読めません。エージェント1社1社を選り好みせずに、成果報酬である以上、積極的に締結し、網を広げましょう。
③キャンディデート展開用
メッセージの作成しましょう。
「営業からキャリアアドバイザーへ」「キャリアアドバイザーからキャンディデートへ」同じ文章が展開され、かつ応募意志をキャリアアドバイザーを介せずして取得するために、【キャンディデート展開用メッセージ】を作成しましょう。
このように「伝言ゲームで情報量が減り、エントリー率が下がるリスク」を減らすことが可能となります。
④最初の推薦者は、多少ズレていても面接しましょう。
紹介会社様も労力をかけてエントリーを獲得しています。大きくズレていなければ多少目をつむって面接を行いましょう。最初の1~2名がエントリーで見送りになると、以降の紹介を敬遠する傾向があるためです。
⑤お見送り理由は200文字以上書きましょう。
キャンディデートのどのスペックがNG理由なのか、どのようなキャリアパス・希望条件がミスマッチなのかを200文字以上で丁寧に記載しましょう。紹介会社も納得のいく理由であれば、次回も推薦したいと思えます。
⑥人材会社を訪問し、キャリアアドバイザー向けに説明会を実施しましょう。
前述したとおり、キャンディデートに接触するのは営業ではなく、CAです。CAの方に採用要件を理解して頂き、紹介のやる気を持っていただくためにも足を運びましょう。「僕(人事)のChatworkアカウントを教えるから、キャンディデートからの質問で分からないことは、営業担当を経由せず直接連絡してもいいからね!」などといった距離感を縮める行動もお勧めです。
⑦決定実績がある会社は自社イベントに呼び込みましょう。
積極的に紹介をして頂き、採用に繋がっている人材紹介会社様には、エージェントランキングを企画して、表彰やプレゼントの贈呈を行いましょう。その規模までいかなくとも、自社の周年記念イベントや月次会に参加していただき、感謝のメッセージを伝えることで、より優先して紹介してくれる関係性になります。
【5】さいごに
エージェント・コントロールのお作法、いかがでしたか。売り手市場の中で、以前のような「35%払うんだからいい人を紹介してください」というスタンスでは、紹介会社は動いてくれません。採用パートナーとして、コンテンツ作り、フィードバック、自社理解の接点づくりなど相互理解を深めて、採用を実現させましょう。
著者 今村 邦之
ナウビレッジ株式会社 代表取締役
1987年生まれ。米国アラバマ州立大学ハンツビル校にてマーケティングを専攻。2012年、第二新卒向けの人材紹介会社を設立し、代表取締役に就任。2020年に退職。同年10月に、デジタルマーケティングカンパニー・ナウビレッジ(株)を設立。創業3年間で200社の顧客支援を行い、うち100社様は人材紹介会社様向けに求職者獲得を支援。東京医科歯科大学デジタルマーケティング講座非常勤講師としても勤務。