Column/News

2023.12.08
コラム

【連載】選ばれる企業になるための採用マーケティング大全

【第1回】
採用マーケティングの基本

※ 本記事はPORTERS MAGAZINE Agent Vol.35掲載記事です。

 人材不足の時代、売り手市場が続き、優秀な人材の獲得競争はますます厳しさを増しています。採用業務に関しては従来、「採用事務の社員が、求人票をハローワークや求人広告会社にお願いするもの」でした。しかし、それでは母集団形成や、欲しい人材の採用は上手くいきません。 

 公募すれば集まる時代は終わり、「誰がほしいのか」「そのためにどの様なコンテンツを作ればよいのか」「作ったコンテンツをどこに設置してみてもらえばよいのか」を実行することが必要な時代です。 

 採用は事務業務ではなく、マーケティングです。 

 本記事では、採用マーケティングを実施する際のフレームワークならびに設計時のポイントについて記載します。 

 

【1】採用マーケティングとは  

 採用マーケティングとは、採用業務に以下のマーケティング戦略を埋め込むことを指します。一つひとつ見直すことで、母集団形成・対象人材の面接数アップが見込めます。


【2】3C分析 

  まず、3C分析を行いましょう。3C分析とは、自社の採用活動を取り囲む環境要因を分析するためのフレームワークの1つです。 

 3Cは、「Company(自社)」「Competitor(競合)」「Customer(顧客/人材)」の頭文字をとったもので、ターゲット人材であるCustomerの視点から、自社や競合他社がどのように映るのかを考え、採用戦略に活かすことを目的としています。 

 採用マーケティングにおいて、自社、競合、ターゲットの位置付けを明確にし、関係者間で認識のズレが起こらないようにすり合わせることが大切です。ここが不十分だと、迷いが出たり、メッセージの一貫性が欠け、現場が混乱に陥ることがあるので注意が必要です。 

① 自社を知る_Company 

 まず、自社理解をしましょう。自社の経営理念や経営戦略、事業計画といった大きな部分から職場環境や福利厚生といった現場目線まで細かく把握します。その際は、他社からの評価も確認することがベストです。自社を知るための手法には次のようなものがあります。 

•就職・転職してきたばかりの社員へのインタビュー

•人事交流会などの社外との交流 

•展示会やセミナーでのアンケート 

 

② 競合を知る_Competitor 

 次に、採用を行う上で競合となりえる会社について同じように分析をします。これを競合調査といい、競合調査では主に、次の項目を把握します。 

•競合はどこか 

•競合の強み弱みは何か 

•競合が行っている採用手法は何か 

•競合は何を訴求しているか 

 

 調査を進めていくと、自社にあって他社にないもの(=強み)や自社になくて他社にあるもの(=弱み)が見えてきます。これらの特徴を洗い出すことで自社のアピールポイントも明確になります。また、競合の行っている手法や訴求内容は、後述するチャネル選定やコンテンツ企画の検討に活用してください。 

 

③ ターゲットを設定する_Customer(顧客/人材) 

 採用マーケティングでは、従来の採用手法と比べて、いかに効率的にターゲット人材にメッセージを届けるかが重要です。そのためにはターゲットを定義し、①、②の流れで把握した自社の情報をもとに「自社にどのような人材が必要か」「どのような人に来てほしいか」を明確にしましょう。 
 

【3】SWOT分析 

 SWOT分析は「Strength(自社の強み)」と「Weakness(自社の弱み)」、「Opportunity(機会)」と「Threat(脅威)」の頭文字をとったもので、競合や市場のトレンドなどの自社を取り巻く外部環境と、自社のブランド価値や資産といった内部環境を、それぞれプラス要因とマイナス要因に分けて分析する手法です(図参照)。 

 自社が置かれている状況を客観的に把握できるほか、既存の採用における改善点や将来的に予想されるリスクの発見にも役立ちます。 

 

【4】ペルソナ設計 

 ペルソナとは、ターゲットの居住域や年齢、性別、志向などからその人物像を具体的に想定したものです。ターゲットとなるペルソナ像が職種などによって複数ある場合は、別々のペルソナを設定します。 

 ペルソナ設定の際は、「一人の人物」をできるだけ具体的に描写することがポイントです。そうすることで、ターゲットペルソナが解決したいと思っている課題や(仕事を通じて)得たいと思っているニーズを浮き彫りにすることができ、効果的なメッセージ(訴求)を打ち出すことが可能になります。ペルソナが完成したら、それをチームに共有することも忘れないようにしましょう。 

【5】カスタマージャーニー設計 

 ターゲット人材のペルソナができたら、カスタマージャーニーの設計を行います。 

 カスタマージャーニーとは、求職者がどのようなプロセスを踏んで、採用に至るのかを分析する戦略図にあたるものです。 

 具体的には、ペルソナを念頭におき、各フェーズ(認知→比較検討→選考参加→内定承諾)において、どのようなタッチポイントを設け、どのようなメッセージ(訴求)を届けるのかを検討、明確にしておきます。一度作成した後は、効果検証をしてPDCAサイクルを回し、時には見直しを行いましょう。 

【6】チャネル選定 

 ここまでできたら、それぞれのフェーズごとに、実施するチャネルを検討・選定します。 

 チャネルを選定することで、ターゲットペルソナ(求職者)が求めているニーズに対してより効果的に自社の魅力を伝えることができます。 

 下の図は採用マーケティング時におすすめするチャネルをフェーズごとにまとめたものです。参考にしてみてください。 

 

【7】コンテンツ制作 

 チャネルが決まったら、チャネルごとに必要なコンテンツを準備します。この場合のコンテンツには、採用サイトや採用LP、メディアに掲載する記事や動画コンテンツ、広告で活用するクリエイティブなどが含まれます。 

 これらの準備には、多くの場合で高い専門性が必要になるため、外部パートナーを持つ企業がほとんどです。 

 最近では、採用マーケティングのコンサルティングからクリエイティブ制作までをワンストップで任せられる会社もあります。企画段階から気軽に相談に乗ってもらったり、負荷のかかるポイントで協力してくれる外注先を見つけておくと安心です。 

 

【8】計測 

 従来の採用では、担当者の記憶・経験・勘に頼らざるを得なかったかもしれません。しかし、採用マーケティングでは、記録・傾向・客観性という新しい武器を手に入れることができます。 

 自社へのエントリー率、ウェブサイトのページビュー数、メールの開封率、説明会への参加率、面接の実施率、被紹介者の応募率といったデータを管理・分析し、改善につなげましょう。 

 また座談会や面談、面接に来た方などはその認知経路を確認しておきましょう。 

 アンケートを実施するのが難しい場合は、「どこで(会社やイベント)のことを知りましたか?」と質問するだけでも構いません。 

 効果的な流入経路がわかれば、そこの予算配分を大きくすることなど対応が可能です。また自社の施策がどのようにターゲットに届いているかが分かり、市場感の把握やモチベーションの高揚にもつながります。 

 

【9】最後に 

 「求職者を選ぶ時代」から、「求職者から選ばれる時代」になった今、理想的な人材を獲得するために採用マーケティングの必要性は高まっています。一方で、採用マーケティングには、高度な戦略と実行が必要になる場面が多く存在するため、従来のリソースだけでは対応が困難であったり、イレギュラーな事態に疲弊し、業務が立ち行かなくなるケースも。 

 人事担当者の負担を軽減し、採用マーケティングをより早い段階で軌道に乗せるために、従来の採用方式の見直したり、採用マーケティングを外部に依頼する会社も増えています。戦略段階から気軽に相談できるブレーンを持つことは、採用マーケティングを成功させるカギと言えます。 

 

 

著者 今村 邦之

ナウビレッジ株式会社  代表取締役 

1987年生まれ。米国アラバマ州立大学ハンツビル校にてマーケティングを専攻。2012年、第二新卒向けの人材紹介会社を設立し、代表取締役に就任。2020年に退職。同年10月に、デジタルマーケティングカンパニー・ナウビレッジ(株)を設立。創業3年間で200社の顧客支援を行い、うち100社様は人材紹介会社様向けに求職者獲得を支援。東京医科歯科大学デジタルマーケティング講座非常勤講師としても勤務。