「信頼のアヴァンティ」を具現化し人と企業のかけはしに

顧客と長く付き合い、強固な信頼関係を築くことで成長し続ける総合人材サービス会社、アヴァンティスタッフ。信頼関係を構築する独自の過程などについて、代表取締役社長の黒川良太氏に詳しく聞いた。

「長くお付き合いすること」が信頼の証

――最初に、御社の事業内容をお聞かせください。

アヴァンティスタッフは、みずほ銀行・丸紅などを株主に持つ、パーソルグループの総合人材サービス企業です。金融業界や貿易関連を中心としたオフィスワーク人材が事業の9割を占めます。派遣業務は、総合受付、経理、財務、会計など事務系が主です。また登録スタッフを育成し輝ける場所を増やすことに力を入れており、受付業務やビジネスマナーなど派遣業務に必要な知識全般の研修を登録スタッフの方であれば就業の有無にかかわらず無料で受講が可能になっています。

近年はアウトソーシング/業務委託事業にも注力しています。例えば銀行の場合、繰り返される統廃合や組織再編、2026年末に迫った手形・小切手の廃止などで現場の業務が煩雑化しているため、アウトソーシングなどで外部人材を利用するケースが増えています。また、統廃合やDX化に伴う人員整理が発生したり、もともと経理や財務の担当者が一人体制で業務が回らないという企業などにも、当社でその企業の業務をまとめて請負うサービスを提供しています。今期のアウトソーシング事業の売上は、前期より120%増になる予定です。

他に、人材紹介や研修事業も展開しています。人材紹介は管理職以上のハイクラス層がメインです。研修は、一般研修と語学研修事業を展開しており、一般研修は、階層別研修やビジネススキル研修、組織エンゲージメント向上やChatGPTなど約90種類の研修を企業ニーズに合わせて提供しています。また語学研修はグループ内では当社だけのカリキュラムで、英語や中国語、韓国語など、多言語を学べるのが特長です。スタート時は商社の駐在向け研修でしたが、現在は、警察・防衛関連、学校など公的機関でも実施しています。語学研修により多言語対応が可能になったスタッフは、通訳としてグループ内の他事業部へ派遣することもあり、研修事業は人材派遣、アウトソーシング、人材紹介事業の横のつながりを生み、働くすべての人の笑顔と成長につながっています。

――就業中でなくても研修が受けられる点は、スタッフにやさしい取り組みですね。

ありがとうございます。いまは就業していなくても、いずれ当社で就業してくださるかもしれないですし、何か他のご縁につながっていくことも考えられます。また、同業他社で働かれるとしても、派遣スタッフ全体の質向上につながるのであれば、当社としては前向きに取り組みたいと思っています。

――人材業界における御社の強みを教えてください。

同じ企業と長くお付き合いをしている信頼関係があり、お客様から新規のお客様を紹介していただくことが多い点は、当社の強みと言えます。金融業界や商社の方々は、人脈が広く、人と人をつなぐことが得意で、OB・OGになられてもお客様を紹介してくださいます。もちろん自社で新規営業活動はしますが、新たな取引の多くは紹介で始まります。

当社の登録スタッフの特長としては、金融業界のキャリアが長い人材が多く在籍している点が強みです。金融業務は、作業そのものはシンプルでも、専門知識や過去の歴史への理解がなければ対応できないことが多々あります。そんなとき、知識を蓄積してきた当社のスタッフがいれば、スムーズに対応できます。営業で業務委託の提案をするときも、キャリアが長く業界を理解したスタッフが多い点が決め手になるケースが多々あります。

スタッフの中には、定年まで派遣スタッフとして勤め上げた人もいます。同じく、社員も長く働き続ける人が多い傾向にあります。取引先の社員が、退職後に当社で派遣スタッフとしてご活躍いただくこともあります。

――社員が長く働き続けたくなる要因は何でしょうか。

さまざまな要因はあると思いますが、一つに、組織変更や担当替えが少ない点があると思います。かねてより当社は「信頼のアヴァンティ」をモットーに、お客様とじっくりひざを突き合わせて話し、関係性を築きながら取引を進めるため、短期間での担当者替えを積極的に行わない傾向にあります。短期間で担当者が次々に変わると、せっかく築いた信頼関係を一から構築することとなり、なかなか腰を据えた取引ができません。当社では、なるべく担当者を変えないようにしつつ、さまざまな事情で担当変更を行うときは部長や課長がお客様との信頼関係を担保できるように工夫し、末永いお付き合いができるようにしています。中には、20年にわたり営業担当者が変わっていない取引先もあり、先方の窓口も20年の時を経て、幹部クラスになられていることもありますので、話がスムーズに進むメリットもあります。

長いお付き合いで強固な関係性が構築できていれば、無理な新規営業をかけずとも、取引が横に広がったり、新しい案件を紹介していただくようになり、それが働きやすさにつながっていると思います。

――黒川様は、社内の野球部に所属されていらっしゃると聞きました。部活動と仕事のシナジーを感じることはありますか?

かなりあります。部員は、幅広い年齢や雇用形態、肩書の社員で構成されているので、通常業務では生まれないつながりやコミュニケーションができます。取引先の銀行や商社にも野球部がある場合も多く、合同練習や試合を通じて信頼関係を作り、商談につながることもあります。

専門性と一人ひとりに寄り添う姿勢で差別化

――黒川様がアヴァンティスタッフに来られてから5年の間に、働き方を取り巻く環境は大きく変わりました。派遣会社として、どのように変化と向き合っていらっしゃいますか?

働き方が多様になり、〝自分らしくはたらく〟という価値観が受け入れられるようになりましたが、派遣スタッフにとってそれは、不安定な将来に向き合い続けるという不安でもあります。当社は、組織の人的課題や働く人の将来への不安に向き合い、「あなたに合った価値」「ちょっと新しい価値」を提供し続ける存在でありたいと考えています。また、最近は転職や就職のツールが市場に増え、お客様はどれを選べばいいか分からない状態になっています。当社は、お客様一社一社を良く知ることと、一人ひとりに寄り添う姿勢で支援をし、よい信頼関係を築きながら共に成長を目指します。

その甲斐あって取引先企業に対しては、ここ2年で労働市場の変化に合わせた派遣スタッフの時給アップにもかなりご理解いただくことができました。

求職者の「何を大切にして働くか」に寄り添った支援を

――今後の課題や取り組みについて教えてください。

常に課題意識を持っているのは、人材確保策です。スピードとコスト調整とマーケティングは、今後も強化し続けます。具体的な取り組み例として、グループのパーソルテンプスタッフが運営する求人媒体「ジョブチェキ」に当社の案件も掲載し、当社にもご登録いただけるような仕組みを作りました。これにより、登録者数は倍増し、マッチングのスピードが上がりました。

また、登録してから就業開始するまでの間のフォロー体制強化も課題です。登録者の中には、並行して正社員採用を探す方もいますので、派遣と正社員などどんな働き方がベストか、相談に乗ったりアドバイスしたりしながら、求職者にとって最も働きやすい道を選べるよう支援しています。派遣は自分のペースで働きやすいですが、労働時間が少なければ給料が減る点はデメリットです。正社員は、雇用期間の定めがなかったり、さまざまな休暇が用意されている反面、勤務日や時間はある程度一定です。「正社員を望んでいるが仕方なく派遣で働く」という方もいれば「積極的に派遣という働き方を選んでいる」という方もいて、「働く」に対する価値観は多様化してきています。私たちは、求職者一人ひとりが「何を大事にして働きたいか」を大切にしながら最適な雇用につなげていきたいですし、それが派遣会社の介在価値の一つだと思います。