現場改善コンサルティング・製造派遣・DX(RPA)の三軸でタイ製造業を支援
平山ホールディングスのタイ法人として2014年に設立したHIRAYAMA (THAILAND) CO., LTD. 。現場改善コンサルティング、人材育成事業でタイに参入後、ローカル人材派遣会社をグループに迎え、派遣事業を本格化、近年はDX(RPA)の支援も展開している。同社の代表取締役社長である藤田知功氏に、自社独自の取り組みとタイの人材派遣市場について聞いた。
現場改善コンサルティング・人材派遣・RPAの三本柱で躍進
――最初に、御社の事業内容をお聞かせください。
HIRAYAMA(THAILAND) CO., LTD. は、「タイの製造業の繁栄に貢献する」をミッションとし、製造領域に特化した人材派遣、請負、現場改善コンサルティング、人材教育などの事業を展開する人材サービス会社です。平山ホールディングスのグループ会社として2014年に設立し、同年に現場改善のコンサルティング事業でタイに参入後、15年に現地の派遣会社だったJOB SUPPLY HUMAN RESOURCES CO., LTD.を傘下に入れて、派遣事業を開始しました。
人材派遣は、製造業を中心にタイの方を派遣しています。また、労働者の定着率が芳しくない企業様へは、ミャンマー労働者のご提案もさせて頂いております。現場改善コンサルティングは、日本とタイの専門コンサルタントが、TPS(TOYOTA Production System/トヨタ生産方式)など生産業務をサポートします。RPA(Robotic Process Automation)は、オフィスや現場での入力業務を自動化、効率化して、生産性の向上を図っています。海外拠点は、タイとミャンマーにあります。
取引先は、日系企業様を中心に外資系企業が多く、特に自動車関連企業の割合が多いです。現在、派遣している派遣社員数は、2,500名程度です。タイの自動車生産が昨年度比で15%程度減少しており、弊社も少なからず、その影響を受けています。ゆえに、他業種への派遣を積極的に進めています。
――「現場改善コンサルティング」とは、どのような課題を改善する事業でしょうか。
お客様の悩みは様々ですが、「日本人コンサルタントをこれまで活用してきたが、タイ人の心に響いていない、やらされている感が大きい」「一般的なトレーニングではなく、自社の社員レベルに合わせたトレーニングを実施してほしい」「自社の課題をテーマに問題解決のトレーニングをして欲しい」などインハウスタイプのトレーニングを望まれる企業様が多いです。そのため、弊社は、タイ人のコンサルタントを中心に、課題や役職、社員レベルに合わせた改善指導とトレーニングを実施しています。
――藤田様は長く製造業や人材業界に携わってこられたのでしょうか。ご経歴をお聞かせください。
私は20年以上、人材派遣業界に携わっております。20代後半に、大手人材派遣グループの企業へ入社したのが始まりです。最初は製造現場(請負現場)の作業や、その事業所の管理からのスタートでした。海外は2012年にベトナムでの派遣会社立ち上げ要員として出向。その後2014年にタイ。こちらも派遣会社立ち上げになります。そして2018年に平山へ転職し、現在に至ります。
日系企業の採用課題は給与水準と決裁スピード
――タイにおける貴社派遣事業はどのような状況でしょうか。
タイにおける日系企業の人材派遣事業においては、ここ数年上位の実績を納めています。弊社は、チョンブリー県、ライヨン県をこの活動の中心としております。このエリアは自動車産業がメインです。昨今、日系自動車メーカー様の工場撤退が話題となっていますが、ここ数年、タイの生産拠点を他国へ製造移管し、地産地消を進める企業も増加しています。しかしながら、中国企業はタイ国内で増加傾向にあり、特にEV関連の工場は増えております。このように生産環境としては、目まぐるしく変化しています。弊社は生産環境の変化へ順応し、中国系企業や自動車関連以外の製造業など、新規取引先を拡大していく予定です。
――タイの自動車産業の生産台数の低下にはどんな要因がありますか。
国内需要の低下の原因は、タイ人は多重債務者が多く、自動車ローンや住宅ローンを中心に不良債権が増加しているため、ローンの規制が厳格化されたことです。また、日系企業のシェア低下も、タイにおけるEV車への補助金政策の導入などが原因となっております。ただ、輸出については、豪州、中東、米国が好調ですので、自動車生産台数は一定数、確保されると思われます。
――タイの製造業における御社の派遣スキームを教えてください。
タイの製造派遣では、1度のご依頼人数が、多い場合で100名以上になる場合もありますが、これを5日程度で募集から配属まで対応しています。人材募集は、弊社は登録フォームをWEBで設けているほか、チョンブリー県とラヨーン県に募集ブースを保有しています。地方から引っ越してきた仕事を探す18~20代後半までの求職者が多いです。
派遣契約については、基本的には年間契約ですが、弊社では短期派遣も承っております。派遣料金は、一般的には派遣社員の基本給と残業代、また手当などにサービスチャージを乗せてのご請求となっております。また、タイには日本のような派遣法はなく、労働者保護法に基づいた契約条件で派遣を行なっております。
余談ですが、現在、タイも日本と同じく少子高齢化の傾向にあり、人材不足は今後、懸念されます。日本と同様にタイ人に代わって外国人労働者が増加していくと感じております。また、日本では聞き慣れない労働争議についても、タイではボーナス受給月に近づくと、毎年どこかで発生しています。発起者は企業側の正社員になります。派遣社員は、労働争議や労使交渉に参加しないため、そういう意味でも人材派遣ニーズはあります。
――そのような市場の変化に対し、どのような対策をしていますか?
タイの製造現場ではこれまで、労働集約型で人材活用が多く存在していました。しかし、昨今、タイ人の製造業離れがあると感じています。特に3Kと言われる職場は、タイ人の定着率は非常に芳しくありません。弊社は、安定した人材の確保と労働者の定着が厳しい企業様へは、外国人労働者の活用をご提案させて頂いております。
また、正社員の賃金上昇など人件費による収益圧迫を抑えるため、自動化へ移行するニーズも出てきています。弊社では、オフィス業務や間接業務のオペレーションのDX自動化の提案をしています。具体的には、RPA(Robotic Process Automation/定型業務の自動化)を活用し、人的ミスの削減とルーティン業務の自動化をするなど効率を図ります。今後、一人ひとりの生産性が更に求められる時代になりますので、自動化だけではなく、人材育成トレーニング、現場改善コンサルティングも継続し、お客様のご支援させて頂きたいと考えおります。
――タイ製造派遣における、外資系企業と日系企業の採用の違いはありますか?
給与額と採用までのスピード感が異なります。近年、中国系メーカーなどは、あらかじめ高い給与設定で募集をかけています。マネジャークラスは、日系企業の倍額といっても過言ではありません。採用のスピード感では、日系企業の場合、決裁のために本社へお伺いを立てたり、何度もやり取りの往復をしたりと時間がかかりますが、中華系企業は意思決定が早く、採用結果が直ぐに出ます。
一方で、日本企業は許容の精神を持って、人を育成、マネジメントする姿勢が特長です。着実に成長していきたい人は、日系企業で働くことを選んでいると感じます。また一旦は、キャリアを積みたい思いから外資へ転職しても、働き方の違いや、人間関係、プレッシャーなどから、日系企業に戻ってくるケースも多くあります。
――今後、日系企業が取るべき対策は何でしょうか。
タイの方は、給与以外に賞与、年金積立や医療保険など、福利厚生も重視しています。日系中小企業の場合ですと、他の外資系企業のように、高額な給与を捻出するのが厳しい為、福利厚生を整えたり、社員のスキルアップに繋がるセミナー参加、社員旅行、社員イベント、祝日の日数を増やすなど、対策をしていく必要があります。弊社もお客様から、近隣企業の状況を知りたいと、ご相談を受けることがよくあります。
現場に即した教育メニューでリアルな知識習得の機会を提供
――現在、注力している取り組みは何でしょうか。
たくさんありますが、改善コンサルティングと人材派遣の強化です。改善トレーニングにおいては、企業様の課題にそった改善トレーニングを重視しています。例えば、仕事の教え方(TJI)、日常のマネジメント(Daily Management)、問題解決(Problem Solving)、など、正社員のスキル向上と習得機会を提供しています。また正社員比率の高い企業様へは、派遣社員の有効活用をご提案させて頂いております。
――コンサルティング事例を教えてください。
とある中小企業様をコンサルティングさせていただいた際の事例です。「社内報告業務が粗末で、クライアントへの品質改善策のレポートもクライアントから何度も突き返される状態。何とかしたい」とのお声を頂きました。弊社は、まず、現場の実態、担当社員の想い、日本人社長の想いなど、ヒヤリング、調査、分析します。そして、これまでに企業様で実際に起こった様々な問題や課題を、実際のトレーニング教材に取り入れます。これにより、トレーニングを受ける当人は、実践的なトレーニングやスキルを習得出来るため、前向きにトレーニングへ参加し、結果成果を上げています。
――最後に、今後拡大する予定の事業を教えてください。
コンサルティング事業と一般派遣の強化に加えて、製造スキル人材の派遣にも注力していきます。既に今年からスタートをしていますが、これまでのような未経験者や、初心者のレベルではなく、一定のスキル、例えばインジェクションやCNCの操作経験が数年あり、基本操作や、その特性を理解しているような人材になります。お客様のメリットとしては、より即戦力になる人材を派遣社員でご活用が出来ることにあります。
このように私たちは、これからもお客様のニーズを敏感に捉え、これまで以上にお客様のご支援が出来るよう努力し、また派遣会社としての差別化を図ってまいります。