成長企業の専属ヘッドハンターとして 〝採用” から企業成長のサポートを
HR領域、特に採用支援領域中心に事業展開している株式会社Challenge Fund。2023年6月には、転職前の副業インターン制度「PRETEN(プレテン)」をローンチした。即戦力を望む成長企業に対し、なぜ、どのようにインターン採用を促しているのか。今後の事業展開も含め、代表取締役の根本雄輝氏に聞いた。
中小企業やスタートアップ企業の専属ヘッドハンターに
――最初に、御社の事業内容をお聞かせください。
株式会社Challenge Fundは、挑戦者を支援するプラットフォームを軸にした人材サービス会社として、2019年9月に創業しました。最初に手掛けた事業は、中小企業の人事を経営戦略段階から支援するRPO(採用代行)サービス「KUROKO」です。企業の外部採用責任者をイメージしていただけると分かりやすいと思います。中小企業には人事部がない場合が多く、新たに設置する予算の確保や人材の追加が難しい現状があります。そこで当社が人事を代行し、取引先企業とともに経営戦略面から考え、適正な採用を実施します。他に、サービス業向け業務改善及び人材育成システム「koko tip」や、転職前に短期インターンで働く制度「PRETEN(プレテン)」などのサービスを提供しています。「PRETEN(プレテン)」は現在、CxO、営業、人事の3領域に特化しており、メインの取引先企業はスタートアップやベンチャーなどの成長企業です。
――多くの中小企業は、採用までに多くの時間や費用をかけられないと思います。どのようなアプローチでインターンを受け入れてもらうのでしょうか。
「PRETEN(プレテン)」は、転職前にインターンとして働くことで、履歴書や入社試験だけでは見えにくい適性を見極めて、ミスマッチや離職を減らすことを目指していますので、最終的には効率的な採用ができます。たしかに多くのベンチャーや中小企業は、即戦力をすぐに採用したいと考えていますが、採用難の現在ではなかなか良い方に巡り合えないのも現実です。同サービスでは、採用企業とは通常の人材紹介契約を行いつつ、併行して、才能があり、マッチした人材を副業インターンとして働いていただき、双方にトライアルのような機会を提供することで、然るべきタイミングで正式採用していただく流れを作っています。これにより、スキルが高いが、転職に踏み出せない潜在層の求職者に挑戦の機会を提供することになります。
転職前インターンは、結婚に例えると分かりやすいかもしれません。条件だけを見て結婚したら相性抜群だったという結果ならいいですが、けっして高確率ではないでしょう。恋愛でも転職でも、7割くらいは前向きな印象でも、残りの3割は不安が残ること、あると思います。キャリアアップや結婚、親になるタイミングだったりすると、失敗できないと考えるのでなおさらです。その3割の不安を払拭するために、当サービスでは最長3カ月の同棲、つまりインターン期間を設けて、個別のプログラムをオーダーメイドで実施しています。
自社の売上よりも企業や求職者の成長を優先する組織でありたい
――なぜ「PRETEN」を始めようと思われたのでしょうか。
一般的な採用代行事業は、企業が求める人数を採用する仕事であり、その人数を集められれば任務達成です。そのため、本当にその人数でいいのか、本当に必要な人材はその部署の人かなどについて考えずに、数集めだけに徹しがちです。ですが、例えば、営業を採用したいとオーダーがあり、詳しく話を聞いてみたところ、某企業と事業提携すれば営業は不要になるといったケースなども、実際にはあります。採用が不要になれば当社の利益はゼロですが、それでも大事な取引先企業が成長するためのベストな選択を提案したいのです。一方で、この思いをすべての取引先企業に対して実践するのは、数的にも時間的にも、そして売上的にも限界があります。「KUROKO」スタート時と同じ濃度のサービスを続けていきたい気持ちはあっても、それではいつまでたっても小さな事業のままになってしまいます。会社の拡大を考えると、私の意欲と人脈だよりで売上を伸ばすフェーズから、企業として成長するフェーズへの移行が必要でした。「PRETEN」を事業に加えることで、人材紹介事業の軸を持ちながら、企業と人材にとって、当社が思う本当の最適解を提案できる、そういう思いで始めました。
もう1点、我々はプラットフォーマーとして質の高いサービスを提供し、満足いただいて広めていただくことを目指していますが、「KUROKO」は人にサービスを紹介しづらいという課題がありました。RPOでありながら企業に合わせた人事戦略面もサポートするため、お客様がサービスを誰かに勧めたくても端的に説明するのが難しく、売上の成長度の割には紹介につながらない状況がありました。その点、「PRETEN」のサービスは「転職前の副業インターン」という伝えやすいキャッチコピーがあり、伝わらない場合も「営業と人事に特化した完全成功報酬型の人材紹介サービスです」と言えば理解してもらえます。採用が成立するまでは費用がかからないこともあり、おかげさまで「PRETEN」は紹介が多く、今では受けきれないほどの件数になりました。
「PRETEN」の取引先企業のほとんどは成長過程にあり、採用の内容や人数に未知数な部分が多く、例えば「営業が3名ほしい」とオーダーされても、話を聞いてみると現段階では1名で十分だったりする特性があります。このあたりの人事戦略アドバイスも、「KUROKO」で経営戦略に関わってきたノウハウを活かしています。
――根本さんの仕事や人に対する考え方がそのまま、御社の事業戦略になっているのですね。
僕は、人が大好きで、何をやりたいかよりも、誰とやりたいかを大事にしています。この思いは、求職者に対しても同じです。例えば、求職者のキャリアデザイン設計で「Will・Can・Must」を聞くとき、Will(やりたいこと)ばかり言わずにCan(できること)とMust(役割)をしっかり固めるような指導をするケースをよく見ますが、僕は少し考えが違います。キャリアが浅い求職者は、何が本当のWillか分からない状態でWillを捉えている場合が多いので、僕は、本当のWillを見つけだすためにCanとMustを整理してあげるような人、組織でありたいです。
中小企業こそ社長直下の№2を採用してほしい
――御社の従業員は人材業界の経験者が多いですか?
経験者、未経験者、どちらもいます。未経験者は、キャッチアップが早く、仕組みの構築が得意で、人としての信頼や責任感が強い、バリュー評価が高い人材を採用しています。経験者は、ポテンシャルが高く、知識や実績を活かしてしっかり結果を出してくれる、パフォーマンス評価が高い特長があります。どちらも大事なスキルですので、バリューは固定給に、パフォーマンスはインセンティブに反映してバランスをとっています。
――最後に、これから注力する事業を教えてください。
今後、人材紹介業界で勝ち抜く事業の一つとして、社長直下の№2採用に注力します。CxO(Chief x Officer)や事業責任者採用と言うと分かりやすいでしょうか。企業、特に成長企業は、人材の要件や人数が状況によって変化しやすいので、募集内容を柔軟に変化させられる環境が必要です。僕は今、取引先企業の専属ヘッドハンターとして、この役割を担っていますが、本来は取引先企業内に同等のポジションを担う人材がいたほうがいいと考えます。
例えば、ある医療クリニックが事業拡大で系列店を増やしたとします。すると、経営者は全店を把握できなくなり、ミッション、ビジョン、バリューが伝わらず、人が辞めるようになります。特に、医師や看護師は転職先がすぐに見つかる職業のため、帰属意識を持ちにくい傾向があり、そもそも、いつでも転職できる意識を持った人を採用している以上、何も策を施さなければ、人の流出は繰り返されます。仮にモチベーションが高い状態で入社した人材でも、ミッション・ビジョン・バリューの方向性が経営者と違えば、やはり離脱します。
クリニックの経営者は自身も医師であることが多く、人事やマネジメントの専門家ではありません。各店にミッション、ビジョン、バリューを継続的に伝え続け、人事統制していくには、経営者直下で動く№2が必要です。採用条件の決定も、やり方次第で入ってくる人材の質が変わりますので、やはり内部に専門スキルを持つ人材がいたほうがいいです。例えば、これは僕が実施した策ですが、いい人材を見つけたものの、その人は年収1,800万円で、企業の提示額が1,200万円という案件がありました。そこで私は、年俸1,200万円プラス、実績に応じて特別賞与600万円という給与体制を新たに作り、事業計画書にして提示しました。特別賞与をもらうためにどんな仕事をしていくか、求職者とミッションの共有をすると、求職者は特別賞与600万円を現実的に考えられ、モチベーションも上がります。
№2の採用後は、その人材が組織にきちんと浸透できるよう、例えばスタッフ交流を目的とした研修合宿を提案するなどのサポートをしています。今後は、№2採用を増やしていき、ベンチャーやスタートアップ、中小企業の事業成長を支援する人材市場のニッチトップを目指します。