働く人の感情を満たして幸福が連鎖する社会に
「関係者全員の幸福を追求する」を企業理念とし、破竹の勢いで成長を続けるレバレジーズグループ。今回は、同グループ会社の一つで、医療・介護などのヘルスケア領域に特化した総合人材サービス事業を担うレバレジーズメディカルケア株式会社の取締役である溝口幸治郎氏に、医療・介護・ヘルスケア業界の人材採用の現状と対策、人材サービス企業の介在価値などについて聞いた。
医療・介護の枠を超えヘルスケア領域の総合人材サービス会社へ
――最初に、御社の事業内容をお聞かせください。
レバレジーズメディカルケアは、医療・介護・ヘルスケア分野の人材紹介・派遣、HRM(Human Resource Management/人的資源管理)などの事業を展開する企業として2017年に設立した、レバレジーズのグループ会社です。看護領域は、もともとレバレジーズで09年から運営しており、続く15年に介護領域に参入した後、17年に看護と介護事業を分社化する形で設立しました。現在は医療や介護にとどまらず、ヘルスケア領域全体へのサービス提供を目指して拡大を続けており、おかげさまで設立以降、従業員、売上ともに約5倍になりました。
現在の主なサービスは、看護業界の人材紹介・人材派遣サービス『レバウェル看護』、介護業界の人材紹介・人材派遣サービス『レバウェル介護』、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の人材紹介サービス『レバウェルリハビリ』、医療技師業界の人材紹介サービス『レバウェル医療技師』といった人材サービス事業に加え、病院・連携先施設向けSaaSシステム『わんコネ』や医療介護特化型HRMサービスなどの組織支援事業も展開しています。
――なぜ分社化したのですか。
18年度の診療報酬改定で『地域包括ケアシステム*』の構築が基本方針として示され、医療・介護が連携して高齢者ケアに当たる必要性が高まったため、よりスピーディーな経営判断と事業の効率化が必要と判断し、子会社設立に踏み切りました。また、以前のレバレジーズはシステム開発やシステム系ITのサービス会社というイメージがあり、その中に医療や介護のサービスが加わったときに、レバレジーズが何のサービスを提供する会社かポイントがぼけてしまうため、分社化して分かりやすくしました。
*高齢者が自宅周辺(中学校区)で「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」を一貫して受けられるケア体制
――医療・介護領域の採用市場の現状を教えてください。
医療・介護領域はいま、圧倒的な人手不足です。有効求人倍率も高い状況が続いています。特に、地方の人手不足が顕著に出ています。求職者にとって、首都圏は働く場所がじゅうぶんあり、最新で高度な技術が集中する場所なので、それを上回るメリットがないと、なかなか地方で働くに至らない現状があります。『地域包括ケアシステム』により、介護・福祉領域のニーズは更に広がる一方で、急性期医療の看護師は変わらず不足しています。また、最近は医療の多様化に伴い、訪問看護のニーズが高くなっています。
――看護・介護から徐々に領域を広げた理由は何でしょうか。
看護職や介護職のサービスを提供する中で、取引先様から関連する職種の紹介も求められる機会が増えました。ヘルスケアをトータルにサポートしたいと考えたとき、看護・介護以外の領域にもサービスを広げることは必然でした。
働く人の感情を満たせば利用者が満たされる。
満たされる感情の連鎖を生み出したい
――最近始められた保育士の領域は、医療や介護とは少し異なる印象がありますが。
たしかに、業務内容そのものは専門性も働く環境も異なります。一方で、感情面を考えると、看護職、介護職、保育職は似ています。患者様や利用者様に対して精一杯の価値を提供する点が本質ですが、日々の業務に追われてしまったり、人間関係の悩みがあったりすると、それが転職や離職の動機になってしまうことも少なくありません。当社は「医療・福祉・ヘルスケアすべての感情に向き合い続ける」をミッションにしています。「感情」はレバレジーズグループが今までも大事にしてきたポイントです。人材ビジネスを展開するにあたり、働く人の感情を満たすことを最重要視して事業を続けてきました。特に当社が支援する医療や介護、保育領域で働く人々は、自分よりも人を優先して助ける使命感を強く持っている一方で、自分の感情を満たせていないケースが多いです。当社のサポートを通じて、働く人の感情が満たされ、満たされた人材によるサービス提供で利用者が満たされ、満たされた利用者を見て家族や周囲の人が満たされていく―― そんな風に、感情が満たされる連鎖が起きる社会をイメージして、日々の経営や事業運営に取り組んでいます。
――ミッションが社内に浸透しているからこそ、事業が成長し続けるのでしょうね。
ありがとうございます。レバレジーズグループの理念は「関係者全員の幸福の追求」であり、利他性を重視しています。実際に、他者への思いやりを持った従業員が多く働いています。当社では、全体ミーティングのときにお客様の生の声を動画で伝えるなどしながら、自分が関わっている仕事の価値、その先に届いている景色などを体感してもらう機会を設けています。
――御社の事業の強みは何でしょうか。
おかげさまで看護領域の人材サービスにおけるマーケットシェアはトップクラスになりました。医療と介護に関しては、2011年辺りから事業開発をオールインハウスで進めてきたことで、営業スキルの基準値が高まっており、かなり高い生産性を維持できています。また、エンジニア組織を保有するレバレジーズグループと連携しているため、機能追加や新規システム開発のスピードが速い点も、成長につながっています。
一方で、成長と同時に、お客様からより高度なサービスを求められるようになったと感じています。業界をリードする立場だからこそ、人材サービスの介在価値をお客様へ提供する使命は、より強くなりました。介護やその他の領域においても、サービスの質を向上していく使命は同じですが、シェアとしてはまだまだトップとは言えませんので、引き続きサービス拡大を続けます。
――「サービスの質」とは具体的にどのような内容でしょうか。
お客様からのサービスに対する評価は、どれだけ希望に合う求職者を紹介できたかや、紹介後のフォローができているかなどがメインになりますが、当社はさらに、採用の流れ全体にご満足いただき、任せてもらえる状態を目指しています。特に医療、介護、保育の業界は、人事などの専属者や専属組織がなく、現場で働く皆さんが採用業務を兼任しているケースが非常に多いです。採用の川上から川下までのすべてを当社に任せていただける信頼関係を築いていくことが、現在の目標です。
――テレビCMなどへの広告出稿も、信頼構築につながっていそうです。
ありがとうございます。広告はこれまで、想起される求職者へのアプローチが目的でした。今後は、認知度や信頼性を向上し、潜在的に想起していただくために活用したいと考えています。検索窓に「看護師 転職」と入れるフェーズから「看護師 転職 レバウェル」までを想起してもらえる状態にしたいです。
ヘルスケア領域を誰もが憧れる業界に
――業界の人材不足を解消するための取り組みを教えてください。
レバレジーズグループとして、外国人の育成と採用には注力しており、ベトナムに職業訓練学校を保有しています。また、ICT(Information and Communication Technology/情報通信技術)やSaaS(Service as a Software/クラウド上のアプリやサービスをインターネット経由で提供するサービス)により人的作業の無駄を省き、より効率的に働ける環境を作ることにも着手予定です。
――採用代行事業も拡大する予定でしょうか?
当社の考え方として、システマチックに採用代行ビジネスを拡大するよりも、採用を代行させてもらえる信頼関係を築き、採用後の定着支援までお手伝いしていきたい思いのほうが強いので、今のところ拡大にこだわってはいません。
――最後に、今後の展望についてお聞かせください。
看護職など女性比率が高い職種は、配偶者の転勤や子どもの通学などの理由で、転職や離職をする比率が高い傾向にあります。また、業界そのものから離れてしまう人も少なくありません。これらの方々が、ライフステージが変わっても、いつでもどこでも働ける環境を整えていくことは、当社の使命の一つと考えます。また、現在は介護士の資格取得を支援するスクールを運営するなど、保有資格に応じて収入が上がる仕組みづくりにも取り組んでいます。
看護や介護の仕事は「きつい」「大変」といったイメージが先行していて、それが新たな採用の妨げになっていることは否めません。医療・介護業界で働く方々とともに歩んできた我々だからこそ、楽しく働ける環境を整える一助となり、いきいきと働く人を増やし、「働きたい職業」に挙げられる業界にしていきたいと考えています。