スマートに働ける社会づくりのリーダー企業を目指して

育児や介護などによるキャリア断絶のない社会を目指す人材サービス会社、株式会社ビースタイルスマートキャリア。派遣事業を軸としてきた同社が新たに人材紹介事業を立ち上げて、今年度で4期目となる。人材紹介を始めた背景、フレキシブルな働き方における市場観、今後の展望などについて、同社取締役兼人材紹介事業の部長を務める藤田祥子氏に聞いた。

企業が求める人材像を掘り下げ言語化して求職者に伝える

――ビースタイルホールディングスの上場、おめでとうございます。改めて、御社の事業内容をお聞かせいただけますか?

ありがとうございます。おかげさまで、親会社の株式会社ビースタイルホールディングスは2024年12月27日、東京証券取引所グロース市場に上場しました。本来は20年の上場を目指していましたが、コロナ禍で一度延期し、ようやく漕ぎつけました。

ビースタイルスマートキャリアは02年の創業以降、出産や育児などでキャリアを断絶せざるを得なかった人が、キャリアを活かして時短で働くための支援を続けてきました。具体的な事業は、パートタイム型派遣事業(現・しゅふJOBスタッフィング)、時短×ハイキャリア向け派遣事業(現・スマートキャリア)、人材紹介事業(現・スマートキャリアAGENT)、ハイグレード副業(現・BIZ-directors)などです。職種の領域は、一般事務、経営管理、マーケティングなどのバックオフィスが主です。

――人材紹介事業の取引先企業も派遣と同じ業界でしょうか。

人材紹介事業は派遣事業をスピンオフして始めたため、派遣と同じく幅広い業界のオフィスワーク全般を支援しています。ただ、同じ職種でも業界によって年収や採用ポイントなどが大きく異なるため、今後はこれまで3年半事業をしてきたなかでの知見を活かして、セグメント化を進めたり、専門性を高めていければと考えています。

――藤田さんのご担当事業は?

私は、人材紹介事業で正社員やフルタイム勤務の人材紹介をメインに担当しており、同事業は今年で4期目です。当社はこれまでパートタイマー派遣を主軸にしてきましたが、働き方の多様化に伴って育児中や介護中でもフルタイムで働ける会社が増えたことや、企業様から正社員採用のご要望が一定数あることなどから、フレキシブル正社員の採用を始めました。リモートワークやフレックス制度を導入していたり、時短正社員として働けたりする企業様を中心に、サービスを展開しています。求職者は、育児中、介護中、資格取得に向けて勉強中など、プライベートと仕事の両立が必要な20代後半から40代半ばの人材がメインです。

登録してくださる求職者の多くは、「仕事を続けたいけれど、育児や介護との両立を考えると、今いる会社では実現が難しい」「両立するためにリモートワークが可能な会社へ転職したい」など、よりよい環境で仕事をするために転職を考えている、ハイスキルな即戦力人材です。当社が20年以上にわたり「キャリアを断絶せずに働ける場所」を提供し続けた結果、「フレキシブルに働く即戦力人材」の登録者が増え、いつでもハイスキルな人材を紹介できる状態になりました。この点は、他社との差別化になっています。

――他に、差別化ポイントはありますか?

採用企業様へのヒアリング内容を独自に考え、企業側の負担軽減に努めています。当社の取引先は中小企業が多く、採用担当者1名ですべての採用業務を担っていたり、他部署の人が兼任していたりするケースが多々あります。当社がやみくもに多くの人材を紹介してしまうと、企業側の作業が増えてしまいます。当社では、最初に企業様に時間をとっていただき、これまであった不採用やミスマッチの理由をしっかりヒアリングして、マッチする人材を効率的に紹介しています。紹介の質と効率を両立するために、ヒアリング専用のフォーマットを独自で作っており、求人票を見ただけでは分からない会社の雰囲気やカルチャー、職場の空気感などもヒアリングし、言語化して求職者へ伝えています。そのため、CA(キャリアアドバイザー)とRA(リクルーティングアドバイザー)のコミュニケーションにも力を入れています。

育児や介護によるキャリアチェンジ転職を希望する男性が増加中

――御社は、パートタイム・主婦層の人材サービス事業で創立されましたが、現在も女性の登録者が多いですか?

現在は男性の登録者が増え、半数近くが男性です。女性と同じく、育児や介護のタイミングで働き方を見直したり、将来の育児を見据えて、子育て支援に積極的な会社への転職を希望したりする登録者が多いです。40代半ば以降の人は、介護と両立できる環境への転職希望者が増えました。

――性別問わず、子育てのために自身の働き方を変える時代になったのですね。

本当に、時代が変わったと感じます。ひと昔前までは、プライベートを顧みず、がむしゃらに働いて経験を積む人がデキるビジネスパーソンという風潮がありましたが、現代は、人生の時間軸やライフイベント軸でキャリアを計画し、やみくもに時間をかけず自分の強みを伸ばしていく、効率的で自立したキャリアプランを考える人が増えたように思います。また、どの会社で働きたいかではなく、自分がやりたいことを実現できる会社を探す人が多いと感じます。例えば「IPOを経験したいから上場準備中の会社を探す」といった考え方です。

――御社はこれまで一貫して「キャリア断絶がない社会創造」を目指してこられ、求職者にも広く認知されているので、集客には困らない印象があります。集客面での課題はありますか?

おかげさまで多くの求職者の方にご登録いただいておりますが、まだまだ課題はあります。一例として、当社が注力する「フレキシブルな働き方」は、当グループ創立時に比べてかなりスタンダードになりましたので、以前ほど他社と差別化しづらくなりました。ですが、日本全国で考えると、地方はフレキシブル制度やリモートワークを導入している企業が首都圏に比べて少ないので、人材の首都圏集中を防ぐ意味でも、当社のサービスをいずれは日本全国に広めたいと考えています。

「長く働いてもらいたい」気持ちが育児や介護に理解ある職場づくりにつながる

――採用企業にはどのような変化を感じますか?

働き方が二極化していると感じます。フレキシブルな働き方に積極的な企業もあれば、労働条件や環境を変えることに着目していない企業もあります。企業側が時代に合わせた働き方にシフトしないまま「毎日出社して長く働いてくれる若い人」を求めても、なかなか見つかりません。

――フレキシブルな職場への転職に成功した人の事例をお聞かせください。

一例として、長らく専業主婦だった私の友人が、当サービスを利用して正社員になりました。なかなか仕事が見つからない状態が続いたそうですが、当サービスを利用して、時短・在宅・フレックスの三拍子が揃った会社に就職できました。仕事を始めてからの彼女はとても楽しそうで、「オンとオフが切り替わることで日々の生活にメリハリが生まれる」と喜んでいます。彼女の変化を見て改めて、当社のサービスは社会に必要だと思いました。

他のサービス利用者の声では、「育児・介護と仕事の両立に理解がある会社へ就職できた」という感想を複数いただきます。両立しやすい制度が整っていることはもちろんですが、そこで働く人の理解が深く、例えば子どもに何かあったとき「大丈夫?今日は帰ってね」という言葉を自然にかけてもらえる点に働きやすさを感じて、長く働きたいと思うようです。

――育児や介護に理解がある職場環境は、どうすれば作れますか?

世の中の流れだからといってフレキシブル制度を導入するだけでは、形式だけになってしまいます。大切なことは、「長く働いてほしい」という気持ちです。長く働いてもらおうとすると、必然的に働きやすい環境づくりに尽力します。採用する側に「辞めたらまた採用すればいい」という考えがあると、いつまでも働きやすい環境にはなりません。

――御社で働く人に対しても、理解ある環境づくりを意識していますか?

当社は、事業自体が「キャリア断絶のない働き方の支援」ですので、自ずと社風もその空気感があります。ただ、個人的にはそれに甘えず、意識して言葉にしています。子育て中の急な早退に対して、上司が「また早退するの?」という雰囲気を出すも「気にせず早く帰ってね」と気遣うも、その言動は部署に伝染しますので、積極的に「早く帰ってね」などと言葉にしています。今後は、この雰囲気づくりを体系化して、企業へ伝えていきたいです。

――最後に、藤田様の展望をお聞かせください。

個人的に考えている3つの展望があります。最初に、スマートな働き方ができる社会づくりのリーダー企業になること。その支援として、第2新卒に着目しています。将来、育児や介護のタイミングでフレキシブルな働き方をしたいと思ったとき、いつでも転職できるスキルと経験が必要になると思うので、当社が、未来を見据えたキャリア形成を支援できればと考えています。そして、これらへの理解を首都圏だけでなく日本全国へ広げていく。これが私の3つの展望です。