使命は「社会課題を解決する人材と機会の創出」

成長産業支援事業を展開するフォースタートアップスのグループ会社として23年10月に活動を開始したシングレス株式会社は、スタートアップのエグゼクティブ領域に特化した転職支援サービス会社だ。フォースタートアップスの執行役員を経てシングレスの代表取締役社長に就任した六丸直樹氏に、スタートアップ支援事業にかける熱い思いを聞いた。

国策としてスタートアップ支援が進むなか、経営人材需要の高まりは必至だった

――最初に、御社の事業内容をお聞かせください。

シングレスは、成長産業支援事業を展開するフォースタートアップスのグループ会社として、2023年10月より活動を開始しています。スタートアップのエグゼクティブ領域に特化した転職支援サービス会社です。この事業はもともと、フォースタートアップスが東証マザーズ(現グロース)に上場した20年の9月頃に立ち上がった社内プロジェクトでした。資金調達市場が拡大を続ける中、今後スタートアップの経営体制を強化する必要性が高まることが予測されていた為、経営人材を支援するチームとして始動しました。

22年になると、当時の岸田政権が「スタートアップ育成5か年計画」を発表し、日本経済団体連合会からも「スタートアップ躍進ビジョン」が打ち出されるなど、スタートアップ支援は国策として進み始めました。スタートアップのマーケットに経営人材のニーズが高まっていくと確信した私たちは、より機動性高く、より意思決定のスピードを上げるため、社内プロジェクトの域を超えて分社しました。支援領域はDX、AI、D2C、ディープテックなどが挙げられます。

当社は『「人」の挑戦が、社会を変える。』という想いの元に、社会課題を解決する「人」を増やすことを使命としています。人は、挑戦する機会を通じて成長します。成長する機会を創り続けることが、当社の存在意義であり、存在価値だと考えます。

――エグゼクティブ領域にフォーカスした理由は?

経営・事業に大きなインパクトを与え、会社・組織を大きく前進させる事ができると考えているからです。その人が参画したことで、大きく事業が成長し、経営のステージが上がっていく現場を何度も見てきました。だからこそ私は人の可能性を信じていますし、エグゼクティブ領域への挑戦に寄り添うことで、当社も社会を前進させる一助になると考えています。

社名・シングレスの意味は「人と同期(Sync)し、進化・前進(Progress)する機会の創出」

――続けて、六丸様のご経歴もお聞かせください。

私は千葉大学を卒業後、20名規模のベンチャー企業に新卒で入社しました。アライアンス営業から始めて、子会社の広告代理業の立ち上げに従事した後、2007年にパソナキャリア(現パソナ)に入社、インターネット業界向けの営業組織立ち上げとマネジャーを経験しました。15年から、ネットジンザイバンク(現フォースタートアップス)に参画しました。19年に、同社の執行役員に就任し、成長産業支援をテーマとしたスタートアップの取締役~執行役員や、CxOなどの経営幹部への転職を支援した後、23年にシングレス株式会社の代表取締役に就任しました。

――御社の社名は造語だと聞きました。由来を教えていただけますか?

シングレスは、「人(起業家、ベンチャーキャピタリスト、求職者)と同期(Sync)して進化(Progress)する機会を創出する」という意味を込めて、「Sync」と「Progress」を一つにした造語です。ロゴデザインは、漢字の「人」をグラフィックに落とし込んだものをベースに、重なり(同期)し、前進(進化)しているイメージを表しています。

――御社のサービスやチームの強みは何でしょうか。

挑戦者同士を結びつけ、社会課題の解決に寄与したいという想いだと考えます。起業家の皆さんが成し遂げたい、解決したい課題に立ち向かう為には仲間が必要であり、ご支援の要望を預かります。一方、候補者が挑戦機会を探す際は、誰とどのような課題に立ち向かうのか、を重視されています。

この両者を結びつける為に、起業家の想いを理解し、熱量含めて我々自身に憑依させて候補者に伝えています。

――憑依のメソッドがあるのですか?

今まさに未知の領域に向かって一点突破しようとしている起業家を尊敬する心があれば、自分の中に起業家の想いを憑依させて、候補者に届けることができます。起業を思い立った背景や将来の展望などを掘り下げて聞いていくことで、100%ではなくても、代弁できるほどの情報と熱量を受け取ることができます。

――現在、ヒューマンキャピタリスト育成の課題がありましたら教えてください。

起業家の想いを憑依させるためには、起業家の熱量を肌で感じる機会が必要不可欠ですが、この創出が課題の1つだと感じています。起業家や経営陣の事業への想いを肌で感じることができるよう、オフィス訪問や会食などオフラインでの接点を持てる機会をつくっています。

スタートアップに留まらない挑戦機会を用意する

――エグゼクティブ人材とスタートアップ企業をマッチングする上のポイントは?

感覚の話になってしまいますが、起業家の志に共感・共鳴できるか否かがマッチングで非常に重要なポイントになります。経営陣は、お互いを信じあえる関係でなければ成立しません。

――いい人材と出会うために必要な採用企業側の準備や心構えがありましたら、アドバイスをお願いします。

採用はゴールではなく、入社後活躍し成果を創出いただく事が目的であり、特にエグゼクティブとして入社される方に対しては、経営陣がオンボーディングまでサポートする事が重要だと考えています。過去輝かしい実績をお持ちの方も多くいらっしゃる中、受け入れ側としては「優秀だから任せておこう」とサポートがない事もあります。セルフオンボーディングを実行してはいるものの、サポートにより組織に溶け込むスピードが上がり、より早いタイミングで成果創出につなげることが可能となります。

――これまでの支援での成果例を教えてください。

当社は設立から1年程度であり、これからというタイミングですが、ご支援した方をヘッドとして部門が新設されたり、内部昇格でタイトルに就いた事例は既に生まれています。

――今後注力する取り組みは?

労働人口減少が進み、人材の希少性は高まり、経営人材についてはよりニーズが高まっていくと想定しています。挑戦を通じて人は成長していくと考える我々としては、より多くの成長機会となる挑戦の場を提供していく必要性を感じています。その為、今後についてはスタートアップ企業でも支援先としては多くなかったディープテック領域の拡充や、新たにファンド投資先や大手企業の新規事業、外資系企業などのエグゼクティブ領域の支援も視野にいれています。