CAは求職者だけではたどり着けない進路へ導く案内人

パーソルキャリア運営の人材業界横断プロジェクト『PCAC(Professional Career Adviser Contest)』の第6回大会が、2024年11月に開催された。同プロジェクトは「意向と性質、提案の橋掛け」をテーマに、CA(キャリアアドバイザー)のコンサルティングスキル向上を図るロールプレイング型のコンテストだ。今回の優勝者である株式会社マイナビの髙橋真人氏と株式会社セールスキャリアエージェントの神谷有紀氏に、CAとしての心構えや、コンテストを通じての意識変化などについて聞いた。

人と関わる喜びが人材業界に入るきっかけに

――コンテスト優勝、おめでとうございます。早速ですが、お二人の経歴と、人材業界に入ったきっかけを聞かせてください。

髙橋真人氏(以下、髙橋) ありがとうございます。私は、新卒でグローバル展開するアパレルメーカーに入社し、店舗販売職に就きました。のちに店長となり、そのときの経験が人材業界に転職するきっかけになりました。店長は店の売上をつくることが最大のミッションですが、そのためにはスタッフが満足して働ける環境が不可欠だと感じ、日ごろから意識していました。その思いがスタッフへ伝わり、「髙橋さんが店長だと働きやすい」と言ってもらえるたびに、私のモチベーションは格段に上がり、次第に人材業界に関わってみたいと思うようになりました。いま思えば、学生時代からその遍歴はありました。私は中学生から大学生までバレーボール部に所属し、中学と高校はキャプテン、大学では副キャプテンでした。特に大学時代は、キャプテンが技術向上に特化して私がメンバーをマネジメントする役割分担ができていました。当時は意識していませんでしたが、このときからメンバーのマネジメントが好きでした。

その後、本部へ異動して商品計画部に配属され、国内商品の管理を1年間担当したあと、ベンチャーの人材サービス会社へ転職し、その後マイナビに入社しました。入社後1年間は販売サービス領域を担当し、24年10月から営業や企画職も担当に加わりました。現在、入社2年目です。

神谷有紀氏(以下、神谷) 私は、新卒で証券会社へ入社して営業職に就きました。その後、人事部へ異動して自社の新卒専従リクルーターやアナリストを経験し、セールスキャリアエージェントへ転職しました。当社は若手の営業職向けエージェントで、私はCA(キャリアアドバイザー)とRA(リクルーティングアドバイザー)の両方を担当しています。現在、入社5年目です。

人材業界に入った理由は2つあります。1つは、専従リクルーター時代に、誰かの人生の決断に関わる仕事へのやりがいを強く感じたことです。もう1つは、証券会社で営業をしていたとき、成績がふるわなくて同僚が辞めていくたび、「あの人は資料をまとめるのが上手だったから、その能力を活かす仕事ならきっと活躍できただろうな」など、人材のミスマッチを感じていたことが、人材業界に興味を持つきっかけになりました。

――お二人がPCACに参加した理由は何ですか?

神谷 私は、面談の質を向上させるために参加しました。前回参加した人から「学びがあった」「面談の質が向上した」と聞き、私もレベルアップしたいと思いました。

髙橋 何か「質を上げたい」と思うきっかけがあったのですか?

神谷 入社から5年が経ち、1~2年目のときほど必死にならなくても仕事がまわるようになってきて、成長スピードが鈍化した感覚があったので、コンテストをきっかけに自分をブラッシュアップしようと思いました。

そういえば、髙橋さんは社内に前回の優勝者がいらっしゃいますよね。「次は自分が優勝する!」という気持ちを持たれたのでは?

髙橋 まさにその理由で出場しました。(笑)実は、前回優勝者の和田楓は、ほぼ同期のライバルなんです。同じ部署にいたころは、いつも売上1~2位争いをしていました。和田が優勝したのだから自分も優勝したい、できるはず、そう思いエントリーしました。

CAの介在が求職者の選択肢を広げる

――知識やスキルを磨くために努力していることを教えてください。

神谷 求職者に信頼、納得していただくためには、業界や企業情報に詳しくなければいけないので、新聞や本、テレビなどからの情報収集は欠かせません。友人と会うときも、友人が働く業界の近況を聞いています。また、上司や先輩・同僚の面談に同席して、話し方やコミュニケーションのとり方、提案の方法などを学んでいます。うまくいった面談の理由を分析して自分の面談に活かし始めてから、売上が伸び始めました。

髙橋 私は、求職者とのコミュニケーションの取り方をかなり研究しています。販売サービスに従事する人の多くは、当社のような法人とのやりとり経験が少ないので、私は、求職者が話しやすく心をゆだねやすい雰囲気づくりに注力し、求職者の年代や生活環境に合わせて、話し方や提案の仕方を変えています。また、より高精度のマッチングのために、なるべく出社してRAとコミュニケーションをとっています。最初はこちらから「こうゆう求職者様に合う求人あるかな?」とよく相談をしておりましたが、最近はRAから「この求人に合う方いますか?」と聞かれる機会も多く、積極的にコミュニケーションを取った事によって、互いにより連携するようになりました。

――自分史上最大の成果を教えていただけますか?

神谷 私は、1年前に売上目標200%超を達成して社内MVPをもらったことです。

髙橋 200%はすごい! どうやって達成したのか興味あります。

神谷 それこそ、PCACのテーマである「求職者の意向と性質に合わせた提案の橋掛け」が、初回の面談からピタッとはまった案件が多かった時期でした。求職者が「この会社へ行きたい」と心から思える提案ができ、採用までのスピード感がありました。髙橋さんは?

髙橋 私は前年に新人賞を受賞しました。売上目標達成率は約150%で、社内CAの中では銅賞でした。まだ上には金賞と銀賞があり、正直ちょっと悔しかったので、今回、PCACで優勝できてよかったです。

――お二人のCAへの情熱をひしひしと感じます。CAになってよかったと感じたエピソードはありますか?

神谷 以前、高卒が理由で求人の選択肢が少ない求職者様がいました。現職での経験は豊富にあり、面談で求職者様の意向と性質をヒアリングしていたので、すぐにマッチする会社が見つかりました。求職者様、企業様それぞれにおつなぎする理由を話した結果、入社が決まり、その求職者様はいま大活躍しています。先日その求職者様から「社内で成績トップになりました!」とご連絡いただいたときは、本当にCAになってよかったと思いました。

髙橋 私のエピソードも、学歴に関する事例です。その求職者様は専門学校卒で大手企業に入社しましたが、希望した総合職は大卒以上が条件だったため、一般職での採用でした。同社の一般職ではなかなかキャリアアップが見込めないと思い、当社に登録されました。そこで私は、学歴に関係なくスキルや経験で採用を判断する会社とおつなぎし、総合職での入社が決まりました。その求職者様と最後に話したとき、「総合職の道を諦めかけていたので、望んでいたキャリアへの道をつかめて本当に感謝しています」と言ってくださり、感慨深かったです。同時に、努力は無駄じゃなかったと思いました。

「意向と性質」を捉えた提案はコンサルティングの原点

――PCAC参加を機に、自身の面談は変わりましたか?

神谷 コンテストでの実技後、審査員から「話し方や見せ方の工夫」についてフィードバックをいただいたので翌日から実践したところ、うまく話が進みました。また、より一層「意向と性質」の大事さを感じました。「意向と性質」を捉えることは、提案の原点だと思います。

髙橋 参加に向けて自身のヒアリングを見直したところ、入社当時はできていたはずの深掘りができなくなっていることに気付きました。いつしか、求職者の性質を捉え、本当に合っている求人かを考える思考が浅くなっていたのです。また、CAとしての経験値が増えたと同時に、先入観で判断してしまいがちになっていたと気付きました。そこから、早急に面談の内容を改善しました。

――意向と性質を捉えるコツはありますか?

髙橋 CAそれぞれ違うと思いますが、私は、求職者の言葉に含まれる真意を考えながら質問し、熱量やリアクションを見ながら、重要なポイントを探し出します。反応が薄いポイントよりも、熱量高く自分の言葉でしっかり語るポイントをさらに深掘りしています。

神谷 これまで選んできた会社選びの軸にも性質が表れます。例えば、「起業を視野に入れてベンチャー企業に就職したい」と希望していても、これまで勤めた会社を見ると安定志向がうかがえる場合があります。なぜ起業したいかと質問すると「周りから向いていると言われた」「起業してかっこよく思われたい」などが理由になっていて、これが安定志向という真の性質をブレさせてしまっていると分かるケースがあります。このまま求職者が自分で転職活動をすれば、入社しても短期で辞めてしまう可能性が高いです。CAが介入することで、求職者の真の意向と性質を表面化して、本人に合う進路に導けるのだと思います。

――最後に、今後の展望をお聞かせください。

髙橋 人に関わる仕事の延長線上で、育成や人材開発、組織人事などにもいずれ携われたらいいなと思っています。

神谷 CA・RAを極めて、自分が関わることで誰かの悩みを解決したり、生活を豊かにしたりと、いい影響を与えていく人になりたいです。