誰よりも相手を知る「クライアントヲタク力」で 高品質のサービスを

総合人材サービス会社コンフィデンス・インターワークスは、2023年に人材サービス事業を展開する2社が合併して誕生した。合併による事業の変化や顧客満足度向上への取り組み、今後の展望について、同社常務取締役の工藤政嗣氏に聞いた。

4つの軸で企業と求職者の両方を支援

――最初に、御社の事業内容をお聞かせください。

コンフィデンス・インターワークスは、人材派遣事業、フリーランスマッチング事業、ミドル・ハイクラス層の転職支援事業、人材紹介事業、メディア運営事業などを展開する総合人材サービス企業です。2023年8月に、ゲーム・エンタメ業界向け人材サービス会社のコンフィデンスと、製造業を中心とした幅広い業界に向けた人材サービス会社のインターワークスが合併したことで、現在の商号となりました。現在は派遣・紹介・採用支援・求人メディアの4軸で企業と求職者を支援しています。

――工藤様のご担当領域についても教えてください。

私は人材紹介事業の総括と、2024年にグループインしたプロタゴニストの代表取締役を務めています。プロタゴニストは、先端技術に特化した独自の情報サイトを有しており、そのデータベースを活用してテックスタートアップを中心としたWeb3.0や生成AIに関する多様な働き方に対応できる人材事業を展開しており、同社とコンフィデンス・インターワークスとの協業によって、グループは一気に拡大すると考えています。

――合併後における人材紹介事業の変化を、どのように見ていますか?

クライアントに対して、より幅広いサービスを提案できるようになったと感じます。また、事業やサービス内容が増えることで、社員の活躍する場所も広がりました。最近では、事業部を横断できる社内公募制度を開始し、活躍の選択肢を積極的に増やしています。

売り手市場だからこそ重要視する〝情報の質〟

――現在の人材紹介事業マーケットの採用トレンドを教えてください。

業界全体の傾向として、離職者やマーケットに出てくる人材の減少に伴う売り手市場の加速が挙げられます。これは給与・報酬のベースアップにより、離職する人が減ったことが要因でしょう。加えて、大手求人検索エンジンがクローリングサービス(求人情報の自動取集サービス)の廃止や、スカウト送信ルール変更なども起因し、求職者確保の難易度はより上がりました。

――これらの状況に対して御社ではどのように対策していますか?

減少したとはいえ、求職者は間違いなく存在します。そのため当社では、やみくもに数を追うのではなく、情報の質を高めるようにしています。求職者に対しては「預かる求人をどれだけ魅力的に伝えるか」や「求職者の転職に対するポテンシャルをどう描くか」にフォーカスし、クライアントに人材を提案する際には、その企業に合わせたピンポイントの人材提案にこだわっており、強みにもなっています。

加えて当社では、クライアントに顧客満足調査を実施し、お客様からの評価を可視化することで、提案の“質”と“精度”の両面からの向上を図ってきました。こういった取り組みの結果、マッチングの質とコンサルティング能力、レスポンススピードなどの部分について高い評価を得られるようになりました。

さらなる要望や改善案など出していただけることもありますので、それらの意見を適宜反映しながらサービス品質の向上に取り組んでいます。

また、必要なポジションに適切な人材が見つからない場合は、PORTERSのようなCRMを活用することで他業界にまでマッチングの範囲を広げることもあります。このように、データを活用しながら、日頃から業界横断で人を見つけるように心がけることで、紹介までの流れを一辺倒にせず、幅広い選択肢を生み出すよう心掛けています。当然ときには、担当外のクライアントに担当者自身の求職者をつなぐ必要があるパターンも生じます。しかし、それでも求職者の可能性をつぶさないことが最も重要です。そのため、なるべく担当の垣根はなくしてマッチングを考えるようにしています。

最近では、求職者からのリファラルを強化しているのも特徴の一つです。リファラルをしてくださるのは高い満足度の証ですので、数値目標にも取り込み、今後も注力していこうと考えています。

――最近は、ダイレクトリクルーティングに注力する企業も増えた印象がありますが、今後の展開をどのように見ていらっしゃるのでしょうか?

たしかに増えていると思います。しかし、採用企業のうち、ダイレクトリクルーティングに注力できる担当者がいる企業はそれほど多くありません。ゆえに、ダイレクトリクルーティング手法は企業の採用全体の7割程度で頭打ちになると予測しています。特に難易度の高いポジションについてはダイレクトでは難しくエージェントが動かざるを得ないとも思っています。

また、併せてクライアントを深く知り、活躍できる人材を探し出して入社の承諾をいただくためのコミュニケーションを企業と二人三脚で取ることができるエージェントの介在が求められ続ける状況は、当面の間変わらないでしょう。

未経験コンサルタントのレベルを上げる仕組みとは?

――人材紹介事業の体制はどのように構成されていますか。

当社は、CA(キャリアアドバイザー)とRA(リクルーティングアドバイザー)は両面型ですが、弊社の強みである質だけではなく、マッチング量も求めていきたいので、今後はさまざまなツールを導入しながら、品質を落とさずに両面型とCA・RA分業型のハイブリッドを目指す予定です。現在コンサルタントは約80人体制で、クライアントごとに担当者をつけています。グローバル企業など大手企業の場合は事業部ごとなどで担当者を配置し、1社に10名ほどが担当している場合もあります。

――御社のコンサルタントの採用は経験不問ですか?

はい。未経験者も積極的に採用しています。未経験者の場合は、求職者とファースト面談ができるスキルレベルまでいち早く引き上げるための導入研修を2週間実施しています。そして、幾度かのロールプレイングを経て、最後は私とロールプレイング・テストをします。ちなみにこれまで私のテストに一回で合格した人は一人もいません。

――厳しいですね。(笑)

あえて合格ラインを厳しく設定しています。なぜなら、簡単に合格を出してしまうとそのレベルのままでOKだと思ってしまうので、研鑽を積んでもらう意味で厳しくしているんです。悩んだり考えたりした回数が多いほうが、コンサルタントデビューしたときの感動は大きく、今後の自身の成長が楽しみになると思います。

クライアントのヲタクであれ!

――より顧客満足度を高めるための取り組みを教えてください。

先ほど話した、顧客満足度調査による改善が一つ。もう一つは、“クライアントヲタク” マインドの伝承です。この言葉には、私がかねてからモットーにしてきた “クライアント愛” をさらに深めた意味が込められています。好きなものをとことん追求するヲタク精神をクライアントに対して持つことで、深く企業理解ができ、より質の高い提案ができると考えています。

――どうすれば、クライアントヲタクになれるのでしょうか?

各自がクライアントを大好きだと思うことがいちばん大切ですが、そのためのアプローチとして、企業とのタッチポイントを増やすことが重要であると伝えています。クライアントとのアプローチを電話やメールで済ませてしまうのではなく、直接会って話すことで、人と人との間で深いつながりができます。深くつながっているからこそ、本音でコミュニケーションがとれるようになり、それがさらに良い成果を生み出します。

――コンサルタントの士気を高める取り組みがあれば教えてください。

コンサルタントは基本的に、企業とも求職者とも一人で向き合うため、孤独との闘いです。ミーティングなどでコミュニケーションをとる機会はもちろんありますが、最終的な成果は個の力に頼らざるを得ないため、チームへの帰属意識も薄くなりがちな側面があります。そこで当社では、野球やフットサル大会への出場や、ボウリング大会やバーベキューなど社内イベントを積極的に開催することで、こういった問題に対処するようにしています。

複数社の協業で質の向上とサービスの拡大を実現

――御社の人材紹介事業が抱えている課題があれば教えてください。

大手企業との取引数に比べて中小企業とのパイプが少ない点は課題です。人材の中には、大手企業の採用基準に合わなくても中小企業から歓迎される人は多数いるので、そういった方々もおつなぎできる状態にしたいと考えています。あわせて、まだ人材紹介のサービスの価値を把握されていない、地方の企業の方々にも提案を強化していく予定です。

――人材紹介事業の介在価値をどのようにお考えでしょうか。

企業の採用担当者が着手できていない業務や、マーケット観を加味した提案など、採用人事の方に示唆を提供できる点が、一番の介在価値だと考えています。特に当社のエージェントは “クライアントヲタク” の視点で各企業の特長をしっかりと捉えた上でアドバイスをしますので、複数からオファーがある優秀な求職者にも、第三者の立場で最適な1社を推薦することができます。

――最後に、今後の展望をお聞かせください。

まず、組織のさらなる拡大を目指します。なぜならそのほうが、クライアントへの貢献度が高まるからです。また、今後は人材サービス会社の淘汰が進むと予測されますので、各社が争うだけではなく、複数社での協業推進がポイントになっていくでしょう。

当社ではすでに、複数社との業務提携を進めています。具体的には、2023年に大学院生向け情報サイト『アカリク』を運営するアカリク、2024年に女性のキャリア支援SNS『CORE』を運営するCOREと提携しました。プロタゴニストでも、2024年にWeb3領域の転職支援サービス『ONGAESHI』を運営するInstitution for a Global Society、2025年4月にはWeb3.0 時代の仕事マッチングプラットフォームを展開するWAVEEと業務提携しました。業務提携やM&Aによる事業規模拡大はリスク分散にもつながりますので、今後も強化していきます