トップ・キャリアアドバイザーを決める『PCACグランドチャンピオンシップ』優勝者の圧倒的なスキルとは
キャリアアドバイザー(以下、CA)のコンサルティングスキル向上を命題とし、人材サービス企業5社が共同で運営する『PCAC』というロールプレイングコンテストがある。2025年2月には、歴代優勝者の中からチャンピオンを決める『PCACグランドチャンピオンシップ』が開催された。歴代の優勝者たちの強い要望により、開催が決まったという。開催の背景とこれまでの変遷、目指すゴールについて、主宰者であるパーソルキャリアの川嶋由美子氏に聞いた。
『PCACグランドチャンピオンシップ』とは
――最初に、PCACの概要をお聞かせください。
PCAC(Professional Career Adviser Contest)は、人材会社に所属するCAのコンサルティングスキル向上を、人材業界全体のサービス価値向上につなげたいという想いで始まった、ロールプレイング(以下、ロープレ)型のコンテストです。年に3回実施しており、今年で通算10年目を迎えました。
PCACは、2015年にセールスキャリアエージェント社とエリメントHRC社が『アルティメットコンサルティングバトル』として始め、22年にパーソルキャリアが主宰を引き継ぎました。運営はこれまでマイナビ、エリメントHRC、セールスキャリアエージェント、ミラカナと当社の5社で協働しておりましたが、おかげさまで賛同企業が増え、近く9社になる見込みです。
コンテストは、20分の面談ロープレ形式で行います。候補者役を前回のコンテスト優勝者が担当し、PCACのテーマである「意向と性質のヒアリング、提案の橋掛け」の実践度合いを審査員が判断して優勝者を決めます。
――「意向と性質のヒアリング、提案の橋掛け」について、詳しく教えていただけますか。
「意向」は転職希望者の真意、「性質」は転職希望者の価値観などを指します。求人票に記載された条件だけで判断せず、転職を希望するに至った背景や理由、目指す未来などについて深掘りし、より真に迫る橋掛け(マッチング)を実現するコンサルティング、という意味です。
――25年2月に開催した『PCACグランドチャンピオンシップ』はどのような大会ですか?
過去大会の優勝者の中からチャンピオンを決めるコンテストで、歴代優勝者の頂点となります。歴代優勝者のCAは、皆さま常に向上心をお持ちです。優勝者同士で競ってみたいという声が複数あったこと、また主催者としても真のグランドチャンピオンを作りたいと思いから今回の開催に至りました。
――開催した感想をお聞かせください。
挑戦者のCAは全員優勝経験があります。高いスキルと経験値を持ったCAの方々が、今回のチャンピオンシップに向けて何度も練習を重ねて挑むため、とにかく“すごみ”を感じました。今回はルールもテーマも熟知して挑んでくださっている方々でしたので、「理解力」と「提案力」が勝負どころになりました。
――その中で優勝した、セールスキャリアエージェントの亀田昌吾氏の勝因は何でしょうか。
安定感と俯瞰力が圧倒的でした。亀田さんが経営者でいらっしゃることも影響していると思いますが、言葉そのものの意味だけで判断するのではなく、経営視点を持って構造的かつ俯瞰的に理解・解釈する力が優勝の決定打になりました。亀田さんのロープレからも、改めてCAは自身の経験の厚みが表れる仕事だと思いました。
コンテストが人材サービスの真髄を再認識する機会に
――PCACで優勝を目指すためのコツはありますか?
社内で予選会を実施することをおすすめしています。まず社内での参加者を増やし、会社全体でCAのスキルレベルを上げていくことが大切になってきます。当社も、最初は苦戦しましたが、予選会を始めてから年に1度は優勝者をだせるようになりました。参加企業の中には、「コンテストで戦えるレベルのCAが社内予選で現れない場合は出場しない」と意気込む企業もあるくらい、皆さん本気で準備をされています。
――経営者がしっかり入り込む特性からか、PCACが業界内に口コミで広がっているようです。
ありがとうございます。参加企業からは、CAのスキル向上につながる機会提供に対する感謝の声を多数いただいています。歴代優勝者は社内ではエースとして活躍していることが多く、社内での成長機会は不足しているため、PCACをさらなる高みを目指すチャンスとして捉えてくださっている企業が多くいます。
また、参加企業の経営層からは、「緊急性は低いけれど重要なことをしっかりやらなければならないと気持ちを改める、初心を取り戻す機会」という感想もいただいています。
CAは、転職希望者理解がベースのコンサルティング職です。表面的なスキルマッチングだけではなく、真の意味で転職希望者を理解した上で求人を提案していくスタイルが人材ビジネスの真髄です。PCACの参加を通じて、日常業務に忙殺される中でコンサルティングスキルの高度化に着手できなかったことに気付き、同じ志を持つCAに出会うことで刺激を感じていらっしゃるようです。
PCACやグランプリファイナルが、真の意味で人材ビジネスの介在価値とコンサルティングの質の向上を考える機会となり、初心に立ち返る場となっていればうれしく思います。
コンテストを通じて業界の信頼性を高めたい
――PCACが人材事業やクライアントに与えた影響はどのようなものでしょうか
売上や利益など、成果を数値的にはかるのは難しいですが、内定辞退者や入社後の早期退職者が減少した実績なども聞いており、PCACの目的に対して成果が出始めていると感じています。
また、我々人材会社にとっても、自社のCAがチャレンジすべき目標や社内での成長機会を見出せなくなることによって退職を選択するという課題があります。この課題に対して、さらに上のレベルを目指して成長を続けられる環境が提供できるようになったことは大きな成果です。1人のCAが作ることのできる売上には限りがありますが、個人のスキルやサービスの質は上限なく高められます。組織でPCACに取り組むことで、組織全体が生み出す成果を最大化することができると考えています。
――PCACが目指すゴールは?
将来的には、PCACがコンサルティングスキルの高さを示せる基準になりたいと思っています。「PCAC優勝者」がCAの最高位のコンサルティングスキルを証明する称号になり、信頼感が得られるレベルの知名度にしたいと考えています。また今後は、人材業界の老舗企業に加え、近年人材ビジネスに参入した企業にも参加いただくことで、業界全体の信頼感向上と、スキルレベルの底上げを実現していきたいです。
――信頼感は、具体的にどのような面で高めたいのでしょうか。
転職希望者の中には、人材会社に対して電話やスカウトメールが多いという印象を持つ方や、個人情報を民間企業に渡すことに抵抗がある方、他人に仲介されることに苦手意識をお持ちの方もいらっしゃいます。
私たちは、特にこのような方々にこそ、CAとの対話の中で自分の目指したいキャリアがクリアになり、条件の優先順位が整理されていく感覚などをぜひ体感してほしいと思います。
そのためには、これからも1人でも多くの転職希望者にCAの価値を知ってもらうためのコミュニケーションを続け、転職希望者の真の意向と性質を理解し、提案の橋掛けとなるためのコンサルティングスキルを磨いていく。これらを人材業界に広げていくことで、おのずと業界全体の信頼感の向上につながるものと信じています。