正社員採用にこだわらない!事業成長のカギはハイクラスフリーランスの活用
企業のフリーランス活用が増加している。フリーランス活用のメリットについて、フリーランスと企業のマッチングサービス『PRO PARTNERS』を展開する株式会社Hajimari (以下、Hajimari)の代表取締役 木村直人氏に聞いた。
「自分の意思で決定し、その選択が正解だと信じられる」世界を目指す
――最初に、御社の事業内容をお聞かせください。
Hajimariでは、「自立した人材を増やし人生の幸福度を高める。」をビジョンに掲げ、フリーランスや起業家、副業の人材支援事業を展開しています。具体的には、優秀なフリーランスやIT起業家と成長企業のマッチングを支援するサービス『ITプロパートナーズ』、現役の経営者や役員による社外メンター紹介サービス『メンタープロパートナーズ』、即戦力人事と成長企業の業務委託マッチングサービス『人事プロパートナーズ』などがあります。
――ご自身のキャリアと人材業界に関わるようになった経緯を教えてください。
私は普通の大学生だったので、新卒では多くの人と同じような就職活動を行い、大手保険会社に入社しました。非常に働きやすい環境でしたが、ルーティンワークのような毎日に退屈し、周りにロールモデルと思えるような人も見つからずに明るい将来を描けなくなっていました。現状打破したいと考え動いたりしたものの、当時の私では、大手企業のルールを変える力はありませんでした。そこで、自分を成長させ人生を好転させることを目指してベンチャー企業への転職活動を開始。その際に利用したベンチャー規模の人材サービスに対して非常に好印象を抱き、人材業界に足を踏み入れました。
――そこから起業へ至った経緯をお聞かせください。
当社を創業するタイミングまで、一度も起業したいと思ったことはありませんでした。父が経営者で、苦労しているのを見てきたからかもしれません。そのため、入社した人材サービス会社で骨をうずめるつもりでしたが、必死で3~4年働いた時点で「自分のキャリアを自分で創れるようになる」という入社当初の目標を、ある程度達成出来たと思うようになりました。
そこで初めて、「自分はビジネスにおいて何を実現したいのか?」と考えるようになりました。結果として自分の体験から「自分の道を自分で決めて、選んだ道を正解にする為に挑戦する人」を応援していきたい。そうすれば「人生が充実し、毎日が楽しくなる人」が増えるんじゃないかと思うようになりました。こうした思いから、同じ方向性のビジョンを掲げるベンチャー企業に転職し、Hajimariの前身となるITプロパートナーズ事業部を立ち上げました。
この後事業は順調に成長していったのですが、さらなる成長を実現させるために新会社を作り、資本戦略なども含めて独自性を高めてやっていくことになりました。結果として私が立ち上げた「ITプロパートナーズ事業」を新会社に業務移管する形でHajimariが誕生することになりました。
自分たちが本当にフリーランスの方に助けられているからこそ、サービスに誇りを持てる
――ITプロパートナーズのサービス内容について、もう少し詳しく教えていただけますか。
ITプロパートナーズは、即戦力になるフリーランスや起業家といったプロの人材を企業様に業務委託で紹介するサービスです。正社員の採用と比べると人材獲得のスピードが早く、かつ即戦力として活躍いただけるので教育コストも抑えられます。現在、10万人の登録者と、4,000社の企業にご利用いただくまでに成長しております。
――登録者の職種や特徴についても教えてもらえますか?
全体の約80%はエンジニアなどIT系の職種です。言語トレンドを抑えたフロントエンド・バックエンドエンジニアや、上流のPMなどのIT人材を、ITプロパートナーズというサービスで扱っています。そこから派生し、今ではマーケター、人事、経理・財務など様々な職種に広げており、各種専門人材の登録があります。フリーランスにお支払いする金額は時給平均で計算すると月80万円ほどで、年収に換算すると1,000万円ほどになりますので、ミドル以上のフリーランスに活用いただくサービスとなっております。
弊社自体にも多くのフリーランスの方が活躍しています。200名の社員に対して事業責任者、マーケティング、エンジニア、人事、経営企画、労務、総務、セールス、広報など様々な職種のフリーランスが100名弱いる状況です。自分たちが本当にフリーランスのプロフェッショナル人材に助けられているからこそ、サービスに誇りを持って提供できていると感じています。
優秀なフリーランスの採用で、事業成長を成功させた事例
――御社が創業した2015年頃は、フリーランスに対する企業の理解は今ほど高くなかったように思いますが、取引先を開拓するのには苦労されたのではないでしょうか?
そうですね。ITプロパートナーズは平均年収1,000万円クラスのミドルレベル以上のフリーランス人材を活用頂くサービスなのですが、当時はそういったレベルの人材がフリーランスで働いているという認知が進んでいませんでした。フリーランスというと正社員になれない人材だというようなネガティブな認識を持つ採用担当者様も多く、フリーランスと言うだけで敬遠する会社が多い状況でした。
また、当時は、ほとんどの人がハイレベルなフリーランスと働いた経験がない状況で、チームにフリーランスを入れることの効果や、渡せる仕事量や難易度、気にかけるべきポイントなど、すべて手探りの状態からスタートする必要がある企業がほとんどでした。
しかし、どの企業も即戦力人材は不足していたこともあり、弊社に登録いただいているようなフリーランス人材のニーズを潜在的に持っている企業は多く、1社1社丁寧に対応し結果を出していく事で、徐々に利用企業が増えていきました。
――初期はどのような取引先が多かったですか?
ベンチャー企業が多かったです。最初のお客様は、マッチングアプリを運営する企業様でした。当時同社は、これからサービスを拡大させていこうというフェーズで、まだエンジニアが2~3名しかいない状況でした。サービスを急速に拡大していくには10名~20名とエンジニアが必要になっていく一方、エンジニアの正社員が思うように採用できず困っていたのです。その際にITPROを活用いただいたことで、スピーディーに即戦力人材を獲得することができ、結果としてサービスの成長につながっていきました。
――他にも御社との出会いをきっかけにフリーランスを採用し始めた企業の例があれば教えてください。
大手精密機器メーカーは、自社エンジニアを多数抱えていましたが、いざ内製アプリの構築を指示してもその領域のスキルを持つ人材がいない状況でした。そこで、ITPROを活用し、最初は4~5人の人材が入っていきサービスを立ち上げていきました。それ以降は他部署からも複数ご依頼いただくようになり、最終的には50名以上の人材を活用いただくようになりました。
正社員とフリーランスを分けて考えないことが成果を上げる一番のコツ
――企業がフリーランスに業務委託を依頼する際のアドバイスはありますか?
正社員とフリーランスを分けて考えないことが大切です。なぜなら、フリーランス活用の目的が優秀な人をチームにいれることで事業を前進させるためだからです。
現在、当社では、優秀なフリーランスに自社の若手社員育成を手伝ってもらう上司代行サービスも展開しています。正社員の採用にこだわるあまり、経験が浅い社員を事業リーダーにすれば、当然失敗のリスクは高まり、採用としては本末転倒です。経験豊富な外部人材を上司として加えることで、事業のスムーズな成長を促進しますし、彼らは次のリーダーを育ててくれます。特に若手中心の会社は知見が未熟なまま事業展開をする傾向にあるので、きちんと言語化して的確な判断をしてくれる経験者の存在は重要でしょう。
しかも、優秀なフリーランスは、契約終了時に次の課題や事業を成長させるための注力ポイントまで出してくることも少なくありません。そのため継続稼働をお願いされるケースも多々あります。実際、最近では開発や事業の責任者クラスのオーダーが増加しており、当社の利用により管理職不足を脱することができた企業は少なくありません。もはや、フリーランスはスポットワーカーという時代ではなくなりました。
当社はこういった実績を積み重ねることで、フリーランスは事業成果にコミットしないというイメージを払拭し、企業がフリーランス採用をイメージできる土壌を作れたと思っています。
正社員、フリーランス問わず、ともに働く理由を共有できる会社にこそ人は集まる
――最後に、今後の展望をお聞かせください。
米国では現在、企業で働く約3分の1がフリーランスや業務委託です。日本も今後は、正社員とフリーランス・業務委託の混合チームで勝負する必要があると考えます。ではハイスペックでスピード感あるフリーランスだけを集めれば強いチームが作れるかと言えば、そんなに簡単な話ではありません。会社を理解し、愛情を持ち、会社のビジョンに共感して働いてくれる社員の存在は、会社が存続する上で、フリーランス活用以上に大事なポイントです。
今後、今以上に一社に長く勤務する社員は減っていくはずです。そのため、「給料分だけしっかり働いてよ」という姿勢の経営では、人は離れてしまうでしょう。ビジョンへの共感や価値観の共鳴など、ともに働く理由を共有できる会社にこそ人は集まると強く思っていますし、Hajimariはそういった企業になっていきたいと思っています。

