登録者数100万人突破!
ノンデスク産業向けSaaS・HRプラットフォームを提供するクロスマイル急成長の理由とは?
物流・建設・製造などのノンデスク産業に特化した人材プラットフォーム『クロスワーク』などを運営するX Mile(クロスマイル)株式会社 代表取締役CEOの野呂寛之氏に、ノンデスク産業の現状と未来について聞いた。
目指すはノンデスク産業のプラットフォームを担う「ノンデスク版リクルート」
――最初に、御社の事業内容をお聞かせください。
クロスマイルは、ノンデスクワーカーの人材プラットフォーム『クロスワーク』の運営をはじめ、物流事業者向けのSaaS・プラットフォームなどを展開している企業です。支援している顧客領域は、物流、建設、製造など多岐にわたります。
――クロスワークの規模感や職種などを教えてください。
クロスワークは現在、会員数が100万人を突破しました。トラックドライバー、タクシードライバー、フォークリフトオペレーターをはじめ、施工管理者や整備士など、幅広いノンデスクワーカー(現場職)からの登録があります。完全成果報酬のシステムを採用しており、企業側の利用費は初期費用、月額利用ともに無料です。
――クロスワーク以外にもサービスを提供されていますか?
はい。お客様の課題に応じて、複数のサービスを展開していますが、中でも代表的なのは『ロジポケ』というサービスです。本サービスは、物流業界特化の労務管理および教育管理などを備えたSaaSプロダクトです。
――野呂様がノンデスク産業に注目する理由は何でしょうか。
これまでのキャリアが背景にあります。私は大学時代、建設DX・製造業のスタートアップ企業で働いており、物流業界や建設業界の人手不足を目の当たりにしてきました。
その後、FinTech企業でもノンデスクワーカー(現場職)の顧客に関わることが多く、いざ「起業しよう」と思った時に頭に浮かんだ事業は、社会的価値の高さに対する労働対価が低い「ノンデスク業界への支援」でした。
当社を設立した2019年は、起業直後にコロナ禍となりました。ECが一気に普及したことで物流量は急増しましたが、一方でドライバーは不足していました。さらに、現役のドライバーは50代以上の方が多く、10年~20年後にはさらにドライバー不足が深刻化します。この社会課題を、複合的にサポートすべく、当社を創業しました。
――事業のゴールをどのように考えていますか?
端的に言うと、「ノンデスク版リクルート」のような会社を目指しています。リクルート社が手掛ける衣食住全般における経営支援のように、ノンデスク産業の総合的な支援を通じて、同産業のプラットフォームとなることを目指します。このために採用支援はもちろん、生産性向上に繋げるSaaSプロダクトの展開、事業承継のご支援など様々な取り組みが含まれます。
ノンデスク産業で紹介業のニーズが急騰!
――現在、特に注力している事業は何でしょうか。
クロスワーク上での企業と求職者の登録数、マッチング率、ブランド認知向上に注力しています。ノンデスクワーカーは、デスクワーカーに比べ人材サービスの利用率が低く、サービス自体の認知度がまだまだ低いため、より多くの求職者様・採用企業様にサービスを活用いただきたいと考えています。
――近年では、ノンデスク領域の転職支援会社が増えてきており、市場が盛り上がってきていますね。
そうですね。特に、ノンデスクワーカー領域への参入はよく耳にするようになりました。実際、同業界は、コロナ禍前後から有効求人倍率が明確に上がり出しました。加えて、これまでハローワークを中心に採用活動をおこなっていたケースが多かったのですが、最近では人手不足でハローワーク経由での採用が難しくなってきました。こういった要素が我々のような人材サービスの活用を促進していると言えるでしょう。
また、ノンデスク領域では給料も着実に上昇傾向です。例えばタクシードライバーの平均年収が500万円を超える会社が存在していたり、その中には第二新卒で1千万円以上稼ぐドライバーもいたりします。こうなると、若い人ほどデスクワークやノンデスクワークといった垣根がなくなり、待遇がいいドライバーや施工管理職などの職への人気が高まります。
米国でも「ブルーカラービリオネア」と言われており、AI活用で一般のホワイトカラーの稼ぐ機会が減少する一方で、ブルーカラーと呼ばれるノンデスクワーカーの労働者の方が稼げるチャンスが膨らんでいる状況があるようです。
求職者の定着率が高水準を維持する理由とは?
――競合他社が増える中での御社の強みは何でしょうか。
大きく二つあります。一つ目がノンデスク領域に早くから特化してきたので企業から信頼を得やすい点。そしてもう一つがデジタルマーケティングを活用した圧倒的な集客力です。実際当社では、累計100万人以上のノンデスクワーカーの登録獲得に成功しており、自社の社員も年間300人近く採用しています。また、現在当社は組織規模がが600人規模となっており、この人数はノンデスク領域では国内トップクラスだと自負しています。今後も組織をさらに拡充していく予定で、この先数年で1,000人まで増やそうと思っています。
また、当社はDXと採用支援の両軸で事業展開していますので、採用業務のDX化を合わせて提供できる点も他社との差別化ポイントの一つですね。
――1年で300人採用できるのはすごいです。何か秘訣があるのでしょうか。
当社が社会課題を解決する成長スタートアップ企業であるところが、採用に大いに寄与していると思います。
また、当社では経験者を優先的に採用していますが、カルチャーマッチをする方であれば業界未経験者でも採用しています。入社後の教育は専門知識を持った業界経験者が担当していますので、新人でも早くから業界の知識を持って転職支援できるようになります。
――先進的な取り組みであることと専門性の高さが、採用力や顧客満足度の高さにつながっているのですね。
ありがとうございます。おかげさまで、当社が支援した求職者様の定着率は非常に高い水準を誇っています。求職者様との関係構築を重視し、専門知識を活かして入社前後のギャップをなくす努力を続けていることが、早期離職防止につながっていると思います。加えて、入社後のサポートは専任スタッフがおこなうため安心感も与えることができているのだと思います。
――ノンデスクワーカーはどのような理由で早期離職することが多いでしょうか。
例えば「企業から面接で聞いていた話と仕事内容が違い、ギャップを感じてしまった」などがあります。「簡単な軽作業と聞いていたのに、かなり重い荷物の持ち運びがメインで腰を痛めてしまう可能性がある」などというものです。こういったギャップを生まないように当社では、求人票を見ただけでは分からない仕事の詳細を弊社がしっかり把握し、あらかじめ求職者に丁寧に伝えるようにしています。
物流課題解決の肝は、「利用者が持つ発想の転換」
――ノンデスク産業が抱える課題について、ご意見をお聞かせください。
ドライバーに関して言えば、運賃やそれに伴ったドライバー賃金が上がってこない場合、現在の物流サービスの持続については大きな社会課題となります。米国では、インフレに伴って物流コストが上がることで運賃やドライバーの給与も上がってきていますが、日本では大きな変化は見られません。運んだ先の店の商品価格は上がっているのに運賃は上がらないままでは、ドライバーの賃金に反映したくてもできないですよね。
また、現在の物流サービスは過剰すぎるという課題もあります。一部では、実は今ほど繊細でなくても物流は回るという考え方も主張されるようになってきました。置き換えによって効率や生産性が高まりますし、直接届けずに置き配でも意外と問題ありません。これらの発想が今後はさらに注目されると思いますし、物流サービス以外のノンデスク業務においても発想の転換が起こることで、課題の解決につながると感じています。
――最近では、荷物とトラックをマッチングして空き車両を作らないようにするサービスがあるようですね。
はい。荷物の定義は幅広く、「建設資材」から「消費財」まで様々なものが対象になりますし、常温と冷凍でも扱いが異なります。当然、車両のサイズや形状によって運べるものも大きく異なるので、これらを完全に自動でマッチングするのはかなり難しいです。
加えて、物流業界では今もファクスや電話でやり取りする企業が多く、情報の入力も人力で行われています。それにも関わらず、物流の工程では複数社が関わるため、流れがかなり複雑で、誰が、どこに、いくらで、荷物を運んでいるかを明確に把握するのは至難の業です。こういった課題があるので、当社が運送側とメーカーの双方にDX支援をすることで、受発注の面から明確化、効率化を実現したいと考えています。
ノンデスクワーカーの地位向上で持続可能な物流業界を実現
――「ノンデスク版リクルート」としての今後の計画を教えてください。
ここ2年間で自社の社員数を千人超にまで増員し、ノンデスク領域のDXスタートアップとしてトップシェアを取り、リーディングカンパニーとして業界を変革していきたいと考えています。
特に交通・運輸業界は、もし運転手をきちんと採用できない場合、稼働しない車両が発生してしまうことになります。そういった無駄を発生させないためにも、ノンデスク領域のインフラとして、『クロスワーク』や『ロジポケ』を活用していただけるような存在になりたいです
――最後に、ノンデスク産業に対する野呂様の展望をお聞かせください。
ノンデスクワーカーが“稼げる職業”になることで、従事者の社会的地位が上がることを目指します。そうなれば、ノンデスク産業に従事したい人が増え、結果として業界の持続可能性が上がると思っています。
また、利用する側の意識も改革したいですね。物流を例にとっても、今の至れり尽くせりな配送が当たり前ではない、誰かが運んでいるから物が届くという当たり前なことに意識が向くようにすることで、持続可能な物流業界の構築につながると思います。

