就職サイトでメジャーなマイナビが描く派遣・BPO業界の未来は
就職サイトとしてトップを走るマイナビが、傘下に持つ人材派遣事業とBPO事業を融合させるべく、人材派遣・BPO関連子会社8社をセグメントとして一体化し新たな挑戦をし始めた。今回はそのマイナビの人材派遣&BPOセグメントを担当する藤本勝典氏に取材をし、同氏が描く派遣業界やBPO業界の未来と、マイナビを冠した同セグメント事業の展望について聞いた。
スタッフ大争奪時代の到来。求人会社と人材会社のもたれあい構造を変えたい
――最初に、藤本様のご担当事業についてお聞かせください。
私は現在、マイナビグループの派遣会社4社と、BPO系の会社4社の管掌をしています。事務系派遣を中心とした「マイナビワークス」、機電IT系技術者派遣の「マイナビEdge」、介護士・看護師派遣の「ブレイブ」、金融コール系派遣の「マーキュリースタッフィング」の4社の派遣会社と、HR領域専門BPOの「マイナビBX」、学会事務局代行の「毎日学術フォーラム」、DМ各種発送代行の「マイナビサポート」、そして自身で代表を務める派遣スタッフ管理支援サービスの「エーピーシーズ」の計8社を受け持っています。
――藤本様は自身が代表を務める(株)エーピーシーズが2017年にマイナビにグループインした後、どのような経緯で、マイナビ社の人材派遣やBPO領域を担当することになったのでしょうか?
エーピーシーズの顧客は、人材派遣会社や多くの従業員を抱えるBPO会社です。その顧客企業が「未曾有の人材獲得難」に陥ると予見していました。また、採用コストや社保、有給などの原価が増大する中で、派遣会社の優勝劣敗がはっきり付いてくるとも見ていました。よってマイナビグループの各人材会社も同様で、近い将来を見据えて派遣・BPOというビジネスモデルの根幹的な仕組みを変えていかないと、という危機感があったと思います。
マイナビはメディアからスタートした会社です。その中で人材派遣・BPO事業を展開するにあたって私は両方の経験があり、双方の強みを生かした構造改革ができると考えています。
派遣で働くという制度をもっとスタッフオリエンテッドで考えたい
――派遣事業において感じられている課題を教えてください。
売上グロス優位な考えが、様々な進化を阻害していると考えています。働く人たちのニーズに対して、いろんな選択肢を提供できなくなってきているように感じるのです。
私たちは、派遣業としての売上絶対額を追うだけでなく、派遣で働くという方法をもっとアレンジそして進化させ、結果的に人材獲得が難しくなる時代となっても、派遣スタッフから支持される会社に進化できると考えています。そのひとつのアイディアが、「地域・地方特化型人材コンソーシアム」です。
――地域・地方特化型人材コンソーシアム構想とはどのようなものなのでしょうか。
一般的に、正社員希望の人は働きたい業界や職種から選び始めますが、派遣スタッフの多くは、自宅から近くて働ける時間帯に合った仕事を探します。また地域内で複数の派遣会社を転々とする傾向もみられます。
その一方で、地域で複数の派遣会社がそれぞれコストを掛けて同じ方々を募集しているわけです。ここで派遣会社の地域連携に価値が生まれると考えました。
この人材コンソーシアム構想というのは、その地域において派遣業としてはライバル関係にあったとしても、派遣会社同士で転籍手続きをしながら、地域の中でコストを掛けずに人材調達をしていくという考え方です。採用コストを抑え生産性も高めていくことができます。派遣という働き方を選ぶ人にとっても希望条件を叶えたり、スキルや経験を積み重ねることができ、合理的な座組です。
地域ごとに人材派遣会社が協力し合いながら、仕事を探してくるというコンソーシアムは、インターネット求人メディアでは叶えきれない細やかな価値を提供できる可能性があると思っており、マイナビという接続詞でこの構想を地域ごとに呼び掛けていきたいと考えています。
――マイナビとしては地方・地域に対してどんな強みがありますか。
マイナビは全国約50か所の支社があり、地域や学校などとの連携が強く圧倒的な集客力が強みです。
私の管轄であるBPO事業でも地方の人材活用は欠かせない基盤となっており、都市部の仕事を地方のセンターで請負う基盤もあります。
今までマイナビは就職や転職、人材紹介、アルバイトなどそれぞれの成長戦略を取っていましたが、派遣BPO事業とその既存事業を連携し、スタッフオリエンテッドを追求し、地方から都市部へキャリア転職したり、地元に根ざして派遣やBPOのセンターの中でも働くという沢山の選択肢を用意し、働くスタッフに対しての付加価値を高める姿が新たな派遣会社の使命だとも思っています。
派遣で働く人の問題から給与前払いサービスは生まれた
――藤本様が給与前払いサービス事業に目を付けた理由を教えてください。
給与前払い制度というのは、求人媒体上では「日払い・週払い可能」という風に表示されますが、これは時間給で生計を立てている人にとってとても重要な条件です。
一般的に給与前払いをすることは「単にお金にルーズな人が多い」というイメージを持たれがちですが、実は給与支払いの構造上どうしても必要な装置なのです。
例えば、企業に正社員で入社した場合、入社した月の月末に給与を貰えます。しかし、時間給や派遣で働く人は月末で勤怠を締めて、翌月の20日前後にならないと初任給がもらえないわけです。つまり、正社員と、非正規や派遣で働く人では生活のキャッシュフローに違いがあるわけです。更に言えば派遣の場合は有期の仕事でありますから、少なくとも数日、長ければ数ヶ月間、就業期間が空く事も珍しくもありません。そのような構造的な課題から、これは絶対になくてはならないサービスだという強い意思を持って、給与前払いサービスに傾注しました。
――今では、派遣スタッフ向けの様々なサービスを開発していますね。
昨今、HR系の人事労務管理システム導入は世の中で当たり前になっていますが、実のところ、多くのシステムは正社員を想定したサービスばかりで、いろいろな派遣先で働く派遣スタッフに適したシステムは、ほとんどないというのが実態です。
エーピーシーズは、給与前払いシステムという派遣業界に必須なツールから開発に着手し、2015年から「スタッフ向けアプリ」を開発し、派遣事業を運営する派遣元企業にとっても工数を削減できる機能を次々と開発してきました。現在月間のユニーク活用スタッフ人数は20万人を超えています。累計ではなくアクティブなユーザー数のため、ざっと200万人いると言われる派遣スタッフの10分の1の人たちが月1回最低アクセスしているという数字です。
――アプリ内にはポイント数という機能もありますが、これはどのような機能ですか?
エーピーシーズのアプリは、派遣会社の勤怠システムと連携していますので、このデータを活用して、あらかじめ派遣元や派遣先が指定した日時に稼働した場合に自動的にポイントを付与するという仕組みが搭載されています。つまり年末年始などの繁忙期や特定の日に出勤をしたら、派遣スタッフに自動でポイントが付与され、個別の評価や査定の指標として活用できます。更にはその評価が可視化されることにより、スタッフのモチベーション向上にも繋がっていくと考えています。
――最後に、マイナビの人材派遣&BPOセグメントと、このエーピーシーズの仕組みをかけあわせ藤本様はどんな社会的価値を提供したいと考えてらっしゃいますか?
正社員で働くだけが、未来の自分を見つける事ではない世界を作りたいと思っています。むしろ派遣というスタイルで働く事で、学校や資格を取ってキャリアを磨くといった、一人ひとりの未来の選択肢が広がる世界を作りたいですね。その為のシステム開発や、またマイナビ一社で作り上げるだけでなく、おそらくこの思いは人材派遣業界全般に共通する思いであるはずです。業界の企業の皆様とも協力し合いながら、この世界を築き上げられるようになれたらと思っています。

