あなたならきっと実現できる。勇気づけて背中を押すのが私の役割。

人材業界に入社してわずか半年。いきなり目標を達成し、マネージャーとしてチームを率いることになったトップコンサルタントのタン・リ。ビジネスマンとして培ってきた理論や哲学を人材ビジネスに置き換え、大きな成果を出すと同時に、部下の育成に取り組んでいる。そんな彼女の仕事術や、何より大事にしている家族への思いに迫った。

すべきことをすれば売上げ187%増も簡単なこと

タンのキャリアはホスピタリティ業界からスタートした。営業やマーケティングのプロジェクト立上げなどを8年間行った後、ヘッドハンティングされてロバート・ウォルターズに入社。

2008年のことだった。マネジメントポジションでの入社を打診されたが、タンは「リクルーティングを勉強するための時間を6ヶ月欲しい」と回答。設定したKPIのターゲットレベルに達成したら、ぜひマネージャーになりたい、と伝え許諾された。そして6ヶ月後、人材ビジネス未経験だったタンは見事目標を達成し、人材紹介・金融系部門のマネージャーとして、10人のチームを率いるようになっていた。直近の四半期は187%の売上げを出すなど、会社に貢献し続けている。「戦略やビジョンを設定し、チームが結束さえすれば簡単なことですから」と涼しい顔で言い切る。

そんな彼女が最も大事にしているのは計画性だ。業務の習慣として、まずToDoリストを作成し、その日にすべきことを全て書き出す。例えば、10件の求人を抱えているとする。それぞれの進捗状況、どの求人で履歴書が必要か、求職者やクライアントの最新進捗はどうか、システムの事務的サイドで必要なことは何かなど、優先順位を付けた上でリストアップして業務に取り組み、目標に対して自分がどこにいるのかを、常に把握するようにしているのだ。もちろん、メンバーたちにも同様のリストを作成するようにしている。「現在は10~12人のメンバーを見ています。それぞれ異なる背景、能力、結果の程度、研修要件を持っているので、スケジュールを立てないと一人ひとりに注意を向けることが不可能ですし、全ての管理タスクを達成することもできないのです」

ユニークなルールがある。始業時間の8時30分に3分以上遅れると、チームメンバー全員を飲みもしくはお茶に連れて行く、というものだ。僅かな時間であっても、遅刻は計画したスケジュール全体に影響をもたらしてしまうため、時間を厳守することは非常に大事なのだとタンは強調した。

サービスを勧めるのではなく、相談を受けるスタンス

タンは求人企業の開拓も、明確な理論に基づいて行っている。例えば石油・ガス業界のニーズを知りたいとき。最初はイベントやネットワーキングに参加して業界の人と会い、トレンドを知るようにする。同時に求職者との人脈を作った上で、クライアントのターゲットを絞るのだ。アポを取る際に大事なのは、クライアントが直面している問題を知り、解決策を提案できるかだという。

「テレアポでもし断られてしまった場合、私は企業のCEOに『業界の特定の分野で人脈の規模を拡大したくありませんか? お忙しいことは理解しているので、すぐではなく数週間後にでもお話する機会をください。私が持つ労働市場の最新の知識をお伝えします』とメールを送ります」 会う価値があると思ってもらえたら、次はミーティングを設定する。その際もカジュアルに臨むという。先方のことを、即座に自分のクライアントにしようとしていない、と理解してもらうためだ。まずは組織のことを知り、ニーズや戦略、課題を把握。再び数週間後にランチやお茶に誘い、同様に話を聞く。すると、徐々に信頼されるようになっているという。そこで人材について相談を受けると、はじめて「あなたの商売を押し上 げてくれる人が欲しいのか。または技術に熟練しており、システムに慣れている人が良いのか」など、優先事項をヒアリングし、提案していくのだ。「これが私たちの料金で、これが履歴書で……といった感じで話しをしないので、気に入ってもらえるのだと思います」

求職者への接し方も同様だ。彼ら彼女らが知りたいのは、「自分たちはこのような経験をしてきた。次はどんな企業あるいは業界・業種に進めばいいか。その相談をするために、どんな紹介会社を選べばいいか」ということ。上級レベルのコンサルタントを揃えることは大前提。その上で、多様性を持たせるために、ジュニアからシニアまで幅 広いコンサルタントを揃え、地域性も考慮した上でカウンセリングを行うという。

安定したチーム構築はコミュニケーションから

コンサルタントの育成でも、タンはトップクラスの成果を出し続けている。まず教えるのは、MBAや金融学修士号を持った多くのエリートが、なぜコンサルタントの仕事に就いているのかを説明。この仕事がいかに魅力的で、やりがいに満ちているのかを伝える。そして、一人ひとりが持っているスキルをどのように活用すべきかを指南し、モチベーションを高めている。売上目標は最初のステップにしてはいるが、決してゴールにしないことも特徴だ。

「成果を200%増やしなさい、と命令することはしません。少しずつ増やしていきましょう、あなたにはそれを実現できる可能性があります、と勇気づけて、快適帯から一歩外に出るようにし、自立できるよう背中を押しているのです」

それら全ては、日ごろからのコミュニケーションから生まれている。コンサルタントがミスをしたとき、攻撃的に叱責するのではなく、冷静に「問題は何か?」「どうすれば解決できるか?」を話し合うことで、良好な関係が築けるのだとタン。人は指摘されるよりも、サポートされることを好む。そのため批判をせずに、改善のために正しい位置へエスカレーションし、そのサポートを行うことが自身の役割だとタンは考えている。 「私にとって、個人とのコミュニケーションと、その個人の利益はとても大事です。チームを有益にするために目指すべきゴールを伝えても、自分には関係ないと思ってしまいますよね。しかし、『どんなことがチームに起きても、私が責任を取ります。チームの面倒を見ることが私の仕事だからです。信頼しあって、一緒に仕事をしましょう』と伝えることで、意思の疎通ができるのです」

現在はとても良いチームの基礎が出来上がっており、非常に安定しているのだとタンは笑顔で話す。

ビジネスでの新しい子供の誕生

現在、二児の母親でもあるタンが、「新しい赤ちゃん」と待ちわびているのが、IT部門の新設立だ。ソフトウェアやアウトソーシング、ITソリューションなど、技術的な面でのリクルートメントだけでなく、営業やマーケティングでも需要が拡大しているIT業界。人材を派遣する貴重なチャンスがたくさんあるため、この分野にもっと注力していきたい、とタンは意気込む。「私はテクノロジーに精通しているわけではないので、新しい知識が必要です。新たにIT部門ができたら、テクノロジーについてたくさん勉強しなければなりませんし、IT業界の人たちのことを知る必要もあります。すべき仕事は増えますが、私には新しいことが必要なのです」

朝起きて、その日すべきことについて考えるのは、とても気持ちがいいとタン。またITという新しい領域で、ミーティングを通じて求人企業に啓発を与えることができ、「あなたと話していろいろ気づくことができたわ」と喜ばれることこそ、何よりも刺激的なのだという。ITという新しい領域へのチャレンジを、タンは心待ちにしている。

「あなたと話していろいろ気づくことができたわ」と喜ばれることこそ、何より刺激的。

仕事のことは一切考えない週末

トップコンサルは、オフの週末もアクティブに活動している。と言っても、仕事のことは一切頭から追いやり、家族と過ごす時間を思い切り満喫するのだ。7歳と3歳の娘と遊んだり、夫とコーヒーを飲みながら一週間の出来事を共有したり、ヨガをしたり、プールで泳いだり。ときには家族みんなで、1時間30分のフライトでシンガポールに行って、週末を楽しむこともあるのだそう。

「ユニバーサルスタジオや水族館があるセントーサ島に行くのが大好きです。前回行ったときはリバーサファリにも行きました。娘たちはとても気に入っていましたね」

タンがロバート・ウォルターズを選んだのは、家族のためでもある。娘の教育のため、10年後にはアメリカへの移住を考えているタンにとって、世界中に拠点を構える同社はまさに理想的なのだ。

「ロバート・ウォルターズは国際移動が可能です。アメリカでも私の持つ知識を発揮して、会社に貢献できればと思います。私にとってリクルートメントは、人生で知らなかったたくさんのことを知る楽しみなのです」

一生かどうかは分かりませんが、と前置きした上で、タンは「最低でも次の10年はこの業界にいたいですし、外に出る計画はありません」と断言する。人材ビジネスという天職に出会い、トップコンサルタントに上り詰めたタン。その長い物語は、まだまだ序章を迎えたばかりのようだ。