和製ヘッドハンティング会社が
日本の市場を活性化する。
あらゆる業界の幹部候補をはじめ、女性管理職の紹介でも豊富な実績を持つサーチファーム・ジャパン。国内外の幅広いネットワークや豊富なデータベース、さまざまな業界出身のコンサルタントなど、確固たる強みを持っている。同社が行っているサーチやアプローチの手法、定着率アップの秘訣、そして業界の今後の見通しなど、吉永社長に聞いた。
サーチファームとしての4つの強み
まずエグゼクティブサーチファームとして、御社の強みや特徴を教えてください。
大きく4つあります。一つ目は、あらゆる業界のミドルマネジメント層から経営層まで対応できることです。企業経営の目線で言うと、どの業界であってもノウハウは大きく変わりません。一般的な知識とやる気があれば、どの業界も対応できるのです。また弊社のコンサルタントには、いろいろな業界の経験者がいますので、情報を仕入れることもできます。
二つ目は産学官にネットワークがあり、国内外に約600名のカンパニーフェローという情報提供者がいることです。企業様からご依頼を受けたとき、企業名を伏せた上で、その案件に関連する人材、業界等の周辺情報を収集します。また、海外案件であれば現地のホットな情報も聞くことが出来ます。このような広いネットワークを持っている企業は他にはなく弊社の優位性の一つの源泉になっています。
そのほかの強みはどのようなものがあるのでしょう。
三つ目は企業のデータベースです。私の場合、企業や候補者を含め、毎月100名の方とお会いして参りました。弊社ではこのように各コンサルタントが保有する情報が蓄積され、データベース化されています。例えばその情報をもとにその時の状況と現況を比較することで、企業の変化を知ることができます。このような情報を適切に活用することにより、クライアントのニーズを先行して把握し、最適な人材の発掘が可能になります。
四つ目は、コンサルタントに多種多様な業界出身者がいることです。私は議員秘書を経て、広告代理店で勤務をしておりました。他にはメーカー、IT、アパレル、金融、商社、流通小売など様々。人材業界経験者はほとんどおりませんが、むしろすんなり適応しています。登録型の紹介会社の多くは分業型スタイルですが、弊社は一気通貫で、営業もコンサルタント自身が行うため、業界に染まっていない人のほうが活躍できる傾向にあります。
採用成功率約90%、定着率も高水準。
企業開拓や候補者へのアプローチはどのように行っているのでしょうか。
まず企業開拓ですが、基本的には各コンサルタントに任せています。私の場合は興味がある分野か、お取引をお願いしたい企業様へのアプローチを基準にしています。そして役員様のプロフィールを見て、年次が近いなど、受け入れて頂けそうかどうかなどもポイントの一つにしています。その上で、直筆で手紙を書き、プロフィールを添えて送った後に、電話を掛けるケースもあります。
候補者の方は、前述したネットワークの活用、また、オープンな情報を駆使して探します。その後、手紙を送付、電話で接触を試みるのですが、大半は私たちと何の繋がりもない方です。ご連絡しても「どこで私を知ったのですか?なぜ私が選ばれたのですか?」とのリアクションが大半です。そこで、丁寧に、お声がけした経緯をご説明させて頂きます。その上でご紹介させて頂く企業様との親和性などもしっかりとした説明ができないと心を開いては頂けません。ご納得いただいてから企業様へご紹介という流れになります。その後、面接をセッティングする運びとなります。
マッチングをする上でどのようなことを大事にしているのでしょう。
私たちはスペックやキャリアだけを見るのではなく、企業様の目指す着地点やカルチャー、企業独特の香りを重視し紹介しております。香りというのは、社長や役員の身なり、立ち居振る舞い、会社の建物や調度品などの趣向がどうか…。そしてそれらが候補者の方と親和性があるか等々です。その結果、採用成功率は約90%で、定着率も高水準です。私たちは、「企業様と候補者の方の両方がハッピーになっていただかないと意味がない」と考えています。だからこそ、入社後のフォローも大事にし、企業様と候補者の方の双方に問題はないか、困っていないかなど話を伺います。直接言いづらくても、私になら言えることがあると考えるからです。双方の間に入って定着を図っていることが、実績として数字に表れていると確信しております。
女性の幹部候補を定着させる秘訣
少子高齢化で労働人口が減少している中、人材不足という課題にはどのように対応していくのでしょう。
女性の活用を積極的に行っていきます。実際、弊社は女性管理職のプレースメントが多く、女性の活用を戦略に掲げている企業に対し、具体的な提案もしています。例えば、プラント業界、メーカーは女性が育ちづらい傾向にあります。幹部候補の30代前半の女性が一人だけいても、文化的に女性が活躍しづらいのです。そのため、ポジションを決めずに2~5名程度を採用し、さまざまな部署に配属して頂くよう提案しています。彼女たちが注目を浴び、ロールモデルになって頂くことが目的です。ロールモデルの有無は非常に重要です。例えばメーカーの開発部門は本来、性別に関係なく活躍できる部署ですが、企業側が社内の女性社員に対し、幹部候補になってもらうよう提案しても断られることが多いのが現実です。それはロールモデルがないからです。実際、5名がご入社に至った企業では、彼女たちがロールモデルとなって、下の方々が育ち始めています。
大事なのは、女性の役員候補を採用するときは、トップダウンで行うこと。そうでないと、周囲の協力が得られず、定着もしないからです。いきなり役員候補が難しければ、部長と執行役員の中間で、理事というポジションをお願いして作ってもらったケースもありますね。
登録型紹介会社との決定的な違い
終身雇用が一般的な日系の大手企業において、幹部候補を中途採用するのはどのような背景があるのでしょう。
我々のクライアントの多くは事業をグローバル展開し、勝負の場を海外に移しています。激動する社会情勢、事業競争の国際化や価値観の多様化の中で競争するとき、無数の選択肢から、ある時点での最適解を採用するとき、必要な人材全てが社内に揃っていないという問題が表出してきます。その結果、社内の人材不足に制約され次策を選択せざる得ないことも、社会の変化に敏感な企業ほど、認識しています。同時にどのような状況にも対応できるオールマイティな人材は少ないこと、人材育成に王道はないことも認識しています。以上の観点からこれまでの日本の慣習には馴染まないものの、社外から「完成品」といわれるキャリア人材を採用する動きが確実に広まっています。そしてクライアントが潜在的に抱えている課題を顕在化し、解決のために人材をプレースメントする、第一線で活躍している方へのお声がけから始めて、市場を作っていくのが私たちのビジネスなのです。
今後の展望を教えてください。
エグゼクティブサーチ業界の将来について、前述の例を含め、例えば社会的、経済的、政治的、技術的な視点から検討した結果、まだ我々のような事業が発展する可能性は十分高いと考えております。海外進出した事業の国内回帰、女性の積極的な社会参加といったことを考えても国内の雇用機会は拡大することが明らかであり、新たに発生するポストを充足するために能力のある人材を社外から招聘することが益々増えていくことは間違いないと期待しております。その成長に合わせて我々も体制の拡充を図っていく所存です。