企業からのニーズが高い人事政策全般をカバーしていく。
「企業における人材の価値の向上」をミッションに掲げ、さまざまな事業を展開しているヒューマン・アソシエイツグループ。その中核を担うエグゼクティブ・サーチをはじめ、人材紹介やEAPメンタルヘルスなど、さまざまな領域の事業について話を聞いた。また同社が描く今後のビジョンと、大手と差別化を図るための戦略にも迫った。
日系企業からサーチ依頼が増えている理由
ヒューマン・アソシエイツグループは、2016年4月に事業再編しました。新体制はどのような組織構成なのでしょう。
持ち株会社ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングスの下に、4つの会社があります。そのうち3つが人材紹介です。AIMSインターナショナルジャパン(以下AIMS)は、リテーナー方式かつグローバルの上位案件に特化したエグゼクティブ・サーチ。A・ヒューマンは、マネージャーから経営層までの幅広い国内案件。オプティア・パートナーズ(以下オプティア)は、外資系企業の上位案件に特化。この3社で日系・外資系、幅広い年収のレンジやポジションなどをカバーし、各領域で質を強化しています。もう一社のヒューマン・フロンティアは、EAPメンタルヘルス会社。約400社の顧客に対し、80名のカウンセラーが、ストレスチェックや相談業務などを行っています。
グループ全体として、どのようなミッションを掲げているのでしょうか。
私たちのテーマは、“企業における人材の価値の向上”です。人材紹介は、候補者を適材適所に配置することで、外側に表れる能力を高めることが目的。EAPは、社員の内側を整えることで、パフォーマンスを最大化することが目的です。業態は違っても、どちらも組織の中で、社員が能力を発揮できる環境を作り、人材の価値向上を支援することがミッションです。
エグゼクティブ・サーチにおいて近年、企業のニーズの変化に傾向はありますか。
最近は日系企業のクライアントが増えています。理由として、大手企業が新規事業を始めるとき、任せられる人材が不足していることが挙げられます。またベンチャー企業の場合は、その成長過程でやはり人材が不足するため、我々に依頼を行うことが多い。そういった背景で、日系企業のウエイトが高まっています。
候補者の個別ニーズに合った提案が必要
求人企業の新規開拓は、リテーナー型と成功報酬型で、それぞれどのように行っているのか教えてください。
リテーナー型のAIMSでは、テーマ性を求めているので、例えば「成長企業100社」など雑誌の特集で掲載された企業にDMを送り、幹部や経営者にお会いするという流れが多いです。そのDMを見て連絡をくださる方もいますし、SEO対策もしていますので、WEB経由での問い合わせもあります。成功報酬型のA・ヒューマンとオプティアでは、コンサルタントの知人や、同業に紹介してもらうなど、ネットワークを活用することが多いですね。
では、候補者のサーチやアプローチについてはいかがでしょう。公開できる範囲でお話しいただけますか。
まずクライアントとディスカッションしながら、業種・職種を絞っていきます。サーチは正攻法で行いますね。例えば、研究職や技術職であれば、国会図書館で論文を調べるなど。そして候補者がどこに所属しているか判明したら、公開されているアドレスからメールをしたり、会社に手紙を送ったりします。たどり着くまでは大変ですが、大抵の方は頭の片隅で、転職やキャリアについて考えているので、良い反応であることが多いです。
最も効果的なアプローチは、候補者の個別ニーズに合った提案です。「あなたは今、こういう仕事をしています」「社会は今後、こういう風に変化していきます」「だから、こういうキャリアがあなたにとってベストです」と、踏み込んだ話をすると、一般的なスカウトとは違うと感じてもらえますね。
AIMSが行っているエグゼクティブ・サーチ領域は、今後もさらに規模拡大を目指していくのでしょうか。
そうですね。これまでに常に拡大することを考えてきましたし、今後も同様です。エグゼクティブサーチはオーナー会社が多いですが、俗人的になり過ぎると発展しづらい。そのため、いい意味で、大企業型の会社運営やマネジメントを目指していきます。
業界よりも経営者の考えを理解する
コンサルタントもさらに必要になるかと思いますが、採用や育成・マネジメントはどのようにしているのでしょう。
ヒューマン・アソシエイツグループのコンサルタントは、シニアの方が中心です。それなりの企業で、部長など管理職を経験してきた方が多いですね。AIMSのコンサルタントは9名で、未経験者がそのうち6名。リテーナー方式は難しいので、成功報酬型をしてきた人では、なかなか務まりません。ゼロからスタートした方がむしろ活躍できています。また業界分けもしていません。紹介するのは経営陣に近いポジションなので、業界というより、事業や経営者の考えを理解していることが何より大事になります。
A・ヒューマンは登録型ですが、一気通貫型のため、クライアントとも候補者とも会います。高い専門性が求められるので、業界ごとにチームを設け、原則的にはその業界出身のコンサルタントを配属しています。育成は基本的にOJTで、ベテランコンサルタントとペアを組み、半年間で一人前を目指してもらいます。
全てに共通しますが、この世界で大事なのは活動量です。達成意欲の強い方こそ、常に高い活動量をキープできます。なので、前の会社で達成経験のある方を採用することで、必ず成果が上がります。あとは、それほど厳しく定めてはいませんが、数字目標やKPIを作ることで、コンサルタントに競争心を持たせるようにしていますね。
人事政策を全てカバーしていく
今後のグループとしてのビジョンを教えてください。
ヒューマン・アソシエイツグループは来年早々にも株式の上場を目指しています。これは事業拡大のための資金調達はもちろんですが、人事・人材に関わる業種であるため、社会的な信用力を高めるとことも大きな目的です。事業としては、アセスメント領域への参入を考えています。人材の評価は重要ですし、企業からもニーズが高いはずです。そしてゆくゆくは、人事制度コンサルや戦略アドバイスの領域にも進出し、企業の人事政策を全てカバーしていきます。
こういったビジョン・戦略を描いているのは、業界大手とどう差別化するかが、中規模である我々の課題だからです。量では勝てないので、質を追求するしかありません。車は性能がすぐに分かりますが、人材は非常に奥が深く、分からないことも多い。だからこそ、いい意味でのアナログ型で勝負していけるのです。学歴や社歴などの情報だけでなく、その方の考えや強み、課題などを掘り下げて理解する。企業のことも同様に、理念やビジョン、社風をしっかり理解し、深い部分でマッチングを行うことが、エグゼクティブ・サーチとして生き残る道でしょう。