企業には採用力を
求職者には前向きなキャリア展望を

企業の採用成功の確度向上を目的に、幅広い人材サービスを同時並行で提案する一方、人材の流動性・企業の採用力アップなど、業界の将来を見据えた取り組みも行っているインテリジェンス。
人材マーケットの変化を的確にとらえ、採用に捉われないサービスを展開していくという。
同社が描いている具体的な戦略やビジョンを、峯尾社長に聞いた。

採用成功の確度を上げるため採用支援サービスを多重化

まず御社が近年、注力されている事業や領域を教えてください。

弊社は大きく分けて、アルバイトメディア、転職メディア、人材紹介、その他(新卒紹介、エグゼクティブ紹介、再就職支援、新規事業開発)の4つの領域で事業展開しています。売上比率が最も大きいのは人材紹介で、その次にアルバイトメディア、転職メディアとなっています。注力している取り組みとして、人材紹介領域でここ数年、サービスの領域拡大と多重化を行ってきました。具体的には、既存のモデルに捉われない方法での人材紹介です。その一つが、非対面の人材紹介サービス「DODAプラス」。求職者とも求人企業とも対面せず、求人案件に適した人材にアプローチするという観点で、マッチングを行っています。また人材紹介の領域拡大は、若年層や中堅層、政令都市以外の地方、国内・外資のエグゼクティブ層などのチームを設けました。いずれも人材紹介ですが、事業モデルや収益構造、マネジメント構造はどれも全く異なります。企業の採用成功の確度向上を目的に事業展開しています。

どのような背景で、転職支援サービスの多重化を試みてきたのでしょうか。

弊社がお預かりする求人数は年々増加してきています。個人の登録者も過去最大のボリュームを更新し続けています。それだけご期待いただいているものの、必ずしもすべての法人・個人の期待に応えられているわけではありません。

そんな状況の中、弊社内にある法人顧客資産、求職者資産を最大限活用して、採用成功の確度を上げることを目的に多重化を行ってきました。例えば、上記で説明したDODAプラス以外にも、同じポジションの方を採用するのに、人材紹介、DODA転職サイト、転職フェア、ダイレクトリクルーティング、リファーラルリクルーティングなど、いろいろなサービスを同時並行や選択して使っていただく、という発想ですね。

今後は同じ発想で、求職者にも転職成功の確度向上を目的に複数サービスを提供していきます。転職サイトでは不満のある方に人材紹介のコンサルティングを促したり、逆に人材紹介のカウンセリングを受けた後に自律的な転職活動を希望する方にはダイレクトリクルーティングをご紹介したり、もしくは同時並行をご提案したり、という風に。転職活動の状況や心境の変化に合わせて、いずれかのサービスで過不足感があったり、成果が上がらなければほかのサービスを提案したり、といった風にして、求職者の転職成功の精度も上げていきます。

既得権益を守り続ける業態はいずれ受け入れられなくなる

今後はどのような分野やサービスに力を入れていくのでしょう。

広い意味では、はたらく人々のやりがいやキャリアが前進する取り組みをしたいと思っています。その一つとして、転職後の活躍やご苦労についてのリアリティを世の中に届け、前向きな適材適所を増やしていきたいです。例えば現在の企業・ポジションで活躍実感の持てていない方も、ほかに活躍できる場所は必ずあります。より、キャリア開発を実感できる場所もあります。今はマーケットが堅調なので、比較的年齢が高い方の需要も高まっています。ただし、転職をすることや、活躍できるのか不安に思っていらっしゃる方もたくさんいる。不用意に軽々しく転職を想起していただくべきではありませんが、年間数万人にのぼる我々の膨大な転職支援実績を通じて、求職者個々の状況や指向性に整合感あるリアルな事例を共有させていただいたり、場合によっては実際の体験者を直接ご紹介したりして、現実感ある追体験をしていただけるような取組を考えています。

対企業に対しては、どのような取り組みを行っていきますか。

企業の採用力を高める支援もしていきます。私どものお客様企業に対し、今後の経営課題となりつつある、人材獲得競争力を高めていただく為に、ダイレクトリクルーティングのノウハウや、求人マーケットと採用計画の整合をどのようにとっていくかなど、「リクルーターアカデミー」という無料講座を年間100回以上実施しています。既存の人材紹介業界からすると、競争優位性を低めかねないという声もありますが、既得権益を守り続けているだけでは、マーケットに受け入れられなくなると考えています。長期的に見たとき、産業全体も成長していくはずですし、今後も強化していきます。

AIなどシステム開発にも、引き続き積極的な投資を続けていくのでしょうか。

AIはもちろんですが、業務システムによるプロセスフローの可変性を上げることに力を入れています。現在、生産性の向上を目的に、システムを一新しています。その背景として、さまざまなサービスを展開し、プロセスフローもどんどん進化し続けているため、業務システムに動きが規定されると進化への足かせになってしまうからです。例えば職種や領域によって、採用プロセス特性が違います。場合により多すぎる機能や画面を適切に制御したほうが使いやすさも向上されます。またUI・UXを常に最適化し、直感的に使えることで習得期間を短縮化することも重要ですし、取扱いデータが膨大になってきてますので、反応スピードも上げる必要があります。組織形態も変えていきます。我々の業務は複雑な業務フローやデータベースの塊なので、ITの活用は極めて重要。これまではIT部門だけがITを理解していれば問題ありませんでしたが、現在は事業企画、人事、営業企画、マーケティングなどにIT人材を配置しています。

マッチングに捉われない事業領域で企業と求職者の支援をしていく

人材マーケットは、これからどのように変化していく見通しでしょう。

ここ2年くらい、弊社の登録者のうち、20代前半の割合が7割も増加しています。また転職35歳限界説がなくなり、40代の応募者や転職決定者が大きく増えています。資格や技術スキルを保有している方は、シニア向けの求人も拡大しています。現在は人口動態や産業構造、個人の価値観の変化などが影響し、過去にないレベルの大きな変化が起こっている最中という認識です。そのような中で人材の適材適所だけでなく、キャリア開発や組織開発など、我々に求められる領域は間違いなく大きくなっています。—具体的にはどのような施策・戦略を描いていくのか教えてください。

これまでは純粋なマッチングビジネスが中心でしたが、今後はパーソルグループのビジョンである「人と組織の成長創造インフラ」として、事業領域を広げていきます。個人に対しては、成長を軸としたはたらく力の向上を支援していきます。スキル開発・キャリア開発・働き方改善などは転職支援の近接周辺サービスとして捉え、展開していきます。

また最近では、他社とのアライアンスも積極的に展開しています。その一環として、今までの人材会社サービスのデータベースでは希少であったハイエンドなビジネスパーソンに対して、採用ブランドを魅力的に訴求し、アプローチができる機会を提供するため、経済ニュースプラットフォーム「NewsPicks」と提携を始めました。今後も自社で新サービスを行っていくことだけに拘らず、他社との積極的なアライアンスも視野に入れていきます。

人材サービス領域では、どのような展望を抱いていますか。

転職市場は景気に左右されますが、それ以外にも我々へのニーズが増えるタイミングがあります。それは、企業が競争力を高めるために、変化を求めるときです。これら二つの要因が重なって、活況が続いています。企業向けサービスとして採用支援にとどまらず、組織課題を解決するソリューション磨きに努め、変化を求める企業のニーズにしっかり応えていきたいですね。