ローカル企業を飛躍させる
優秀人材。U・Iターンで「企業力を超えた採用」を実現するには

人材不足や経営者の高齢化など、さまざまな課題を抱えている地方の中小企業。U・Iターンに特化した人材紹介を通じ、そういった企業の課題解決と、求職者の「暮らしたい場所で働く」を実現しているリージョナルグループ。求職者の動向や転職後の活躍事例、そして地方の企業の現状など、同グループ創立者の高岡氏に聞いた。

地元に戻りたい、という方は潜在的に多くいる

御社はU・Iターンに特化した紹介事業を行っています。どのようなきっかけでスタートしたのでしょう。

私は前職でリクルート社に勤めていました。1990年代に入ってバブルが崩壊し、東京一極集中だった人材が地方に戻っていきました。これはニーズがあると、U・Iターンに特化した求人情報誌を立ち上げたところ、地方の経営者たちから問い合わせが相次いだのです。景気が回復した2005年頃には需要が落ち着き、リクルート社はU・Iターンの採用支援事業から撤退。その後、2008年に私は独立し、U・Iターンの紹介事業を始めました。候補者から強く支持され、この事業は絶対に伸びるなと確信しましたね。実際、今年には累計1000人目が成約。リージョナルグループ全体で、現在は19エリアで展開していますが、あと30エリアは進出の余地があると考え、さらなる拡大を目指しています。

地方の企業は人材不足が顕著かと思いますが、U・Iターンに関心がある求職者をどのように開拓しているのでしょうか。

リージョナルグループでは、全国に約1万1000件以上の求人があります。転職サイト「リージョナルキャリア」から案件への応募があり、担当する各社に割り振られることが多いですね。また「エリア×職種」などの自然検索で、グループ各社のサイトにたどり着く方も増えています。拠点によってはリスティング広告を出したり、リクルートNEXTエージェントネットワーク(RAN)を使ったりしています。

どのような方がU・Iターンでの転職に興味を持つのでしょうか。

地方出身の人はたいてい「いずれは故郷に戻りたい」とか「地元に貢献したい」と思っています。そうした思いを持ちながら「親の病気や介護」「結婚・出産」をきっかけに地元に戻る決断をする。特に2011年の震災以降は地方志向の方が増えてきている実感があります。

ベンチャー出身の人材を採用し、売り上げが7倍に

求職者は基本的に、自らの意思で登録する方が多いのですね。

そうですね。ヘッドハンティングもできればと考えていますが、首都圏で地方出身者を探すには、従来のサーチでは難しい。地道にそのエリアの同窓会に行ったり、FacebookやLinkedInなどSNS経由でアプローチをしたりしていますが、基本的には登録がメインです。

Uターン・Iターンの割合は、どちらが多いのでしょう。

県庁所在地など、地元の方をある程度採用できる地域では、IターンよりUターンの方がニーズがありますね。一方で、採用が難しい地域の企業は、とにかく人が足りていないため、U・Iターン問わず求められます。エリアによっても異なります。北海道では大学に進学する人が約2万人おり、そのうち1万4000人が道内の学校を選びます。そのため、札幌でU・Iターンは全体の4割程度。そのほかは、ローカル人材のローカル企業への転職支援です。ほかに人材紹介を行っている企業が少ないため、ニーズが高いのです。一方で新潟や福島などは、6~8割が県外に出ます。地元に残る人が少ないので、需要が高くなります。

御社がU・Iターンの転職支援をした方は、どのようなキャリアを歩んできて、新たにどのようなキャリアを選択したのか、事例を教えてください。

都内のベンチャー企業に勤めている30歳の方が、北海道出身の彼女と結婚することになり、一緒に地元に帰ることに。それを機に、地元のブライダル系のベンチャーに転職しました。その会社で彼はCFOに就任し、事業を全国展開させ、売り上げを7倍に増加させました。また、大手企業で事業企画をしていた方が、札幌で上場しているドラッグストア運営会社に転職。関連会社のCOOに就任し、年商500億にまで伸ばした例もあります。私たちが目指しているのは「企業力を超えた採用」です。ローカル企業からすると、“格上”の人材を獲得することで、一気に業績を伸ばすことが多いですね。

U・Iターン採用を成功させるため
解決すべき2つの課題

求人企業の開拓はどのように行っているのでしょうか。

リージョナルグループでは、各社の代表が自ら、地元企業のトップにアプローチするスタンスです。やみくもに新規開拓をするのではなく、まだお取引していないところを狙い撃ちしています。

地方の企業がもっとU・Iターン人材を採用するために、どんな課題を解決していく必要があると思われますか。

2つのハードルがあります。一つは、情報がないこと。私たちが介在することで、求職者に提供する情報を増やしていきます。もう一つは給料や待遇。求職者から魅力的な案件だと思ってもらうには、人的コストへの考え方を変えないといけません。東京で高い給料をもらっていた方が、地方でも希望の給料をもらえるよう、企業に協力してもらっていますね。また給料以外にも、年間休日を増やしてもらうなどの提案もしています。「どうすれば採用できるか」の前に、「どうすれば魅力的な会社になれるか」を大事にしています。

U・Iターンを含めた人材の流動化は、今後も活発になっていくのでしょうか。

そうですね。ローカル企業へ転職する方は少しずつ増えていくでしょう。そもそも、東京で働く求職者の多くは、もともと地方にも目を向けています。ローカル企業がもっと魅力的な会社になっていけば、求職者の動きはさらに加速していくと思います。特に近年は求人倍率が上がり、新卒学生がなかなか採用できません。必然的に中途入社への需要が高まり、私たちの事業も伸びています。

ただ、地方の都市部以外の地域の企業は、これから数年で大きく変わっていきます。人材不足はより深刻になり、U・Iターンの人材採用でも間に合わず、また経営者の高齢化も進み、M&Aや廃業も増えて行くと思います。そんな中で、弊社は各エリアに合った戦略を立て、グループの経営会議でフィードバックしながら、各地域に貢献できるようさらに事業を拡大させていきます。