内定件数ではなく内定率100%を出すことが永遠の目標です。

2013年1月に人材ビジネス業界に転職し、コンサルタントとなった荻野。キャリアは浅いが、ずば抜けた内定率を叩きだし、一躍トップコンサルタントになった。業界の慣習にとらわれない行動や手法で、周囲からは「異端児」「変わり者」と呼ばれている。そんな荻野の仕事術に迫った。

新人ながら60%の決定率をたたき出す

人口約5万人の地方都市である岐阜県美濃加茂市で、荻野のコンサルタントとしてのキャリアは始まった。人材担当として、カメラや携帯電話など、エレクトロニクス系の機器を製造している会社を担当。120名の求職者が登録に訪れ、応募に対しての書類通過率は70%。わずか4ヵ月の間に60%が成約するという、新人離れした決定率を叩きだした。荻野自身も岐阜県在住という地の利と、製造業の人事部に従事していた経験・人脈を存分に発揮しての成績だった。

「人事をしていた経験から、『こういう人材が欲しい』という企業の気持ちが分かるんです。求人をいただいた以上は、何としても紹介したい。人材担当ではありましたが、企業にアドバイスを差し上げながら進めていった結果、この数字になったんです」

荻野の快進撃は続く。2013年下半期には、半年間での成約人数73名という数字に結びつき、再就職支援部門の 新規求人決定率第1位に輝いた。「これは自分一人の努力ではなく、人材を担当するキャリアコンサルタントとの共同作業の結果です」と笑顔を見せる荻野は、この仕事の最も大切なことは、企業の採用担当者と、どこまで信頼関係を築けるかと断言する。

「求職者が製造業の場合、希望する再就職先も製造業が多いので、まず同業界の企業をターゲットに回ります。初めは求人票の数を集めることに注力しますが、途中から求職者一人ひとりの希望やスキルを把握し、その方に合った求人、数から質に注力していきます」

“奇跡”の裏には地道な行動がある

求人開拓をする際に心がけていることは二つ。一つ目は必ず求人企業を訪問して、採用担当に会うのを基本としていること。仮に今は求人が無いと言われても、将来的に必要と感じ、良い付き合いができそうであれば、必ず会いに行くことにしている。それが、後になって成果に結びつくこともあるからだ。

「将来的に求人が来る、と思ったら、必ずアポを取って会いに行っています。実際に成果に繋がるのは、10社のうち1社だけかもしれません。それでも、その行動はあとあと生きてくるものです」

実際、企業から荻野宛に電話がかかってきて、「人材が欲しい」と依頼されることが頻繁にある。そんなとき、周囲は「奇跡ですね」と言うそうだが、荻野からすると当然の結果。常に種まき活動を怠らないからこそ、成果に結びつくのだ。

二つ目は、同社のクライアントに多い製造業を訪問した際は、必ず工場を見せてもらうこと。

「ただ求人を貰うだけではなく、その工場でどのような仕事に就くのか、具体的にどんな作業に従事するのか、男女比や年齢層、空調や職場の臭いの有無まで確かめて、きちんと求職者に説明すること。それを説明することによって、結果的にミスマッチが減るのです。だって、自分が企業の採用担当だったら、そこまでしてもらわないと求人依頼なんてできませんよ。求職者にとって再就職は一生を左右する大事なこと。そういう責任のある仕事をしているという気概を持って仕事をしています」

そんな行動を、気合や根性と称されるのは好きではない。自分はただ当たり前のことをしているだけ、と荻野は涼しい顔だ。ただ、そこまですることで、企業の採用担当者との間に信頼関係にも結び付くと言う。

創意工夫あふれる企業の開拓方法

「自分は企業のコンサルタントではありませんが、そこまで見て企業のことを知ったからこそ、『こうすれば応募が増えるのでは?』と深い話し合いができる。その結果が数字に繋がっているだけです。求人担当は楽をしたらダメ。汗をかかないといけません」

そう話す荻野は、求人開拓担当でありながら、求職者との三者面談に極力同席している。足を使って企業のことを理解しないと、求職者に紹介できない。それと同様に、求職者のことを知らないと、求人開拓はできない、というのが荻野の基本的な考え方だ。

「求人開拓担当と企業の採用担当のコミュニケーションで、最終的に最も大事なのは『信頼を築けるかどうか?』です。信頼があるからこそ、依頼していただけるのです。私は40人規模の会社に、一年間で9名の成約を上げました。『荻野さんに一任するから、もう一人欲しい』と最近は言われています。一社一社訪問して、顔を合わせて話をしてきたからこそ、今があるのだと思っています」

当該プロジェクトにおける荻野の毎月の新規求人開拓目標40件に対し、何もしなくても企業側から10件程のの求人が寄せられるという。それも、荻野にとっては当たり前のことだが、地道に泥臭い方法で信頼を積み重ねてきたからなのだ。

「信頼関係ができると、企業から『この求人内容で人は集まりますか?』とアドバイスを依頼されたり、『このような人が欲しいのでいろいろな会社に声をかける前に、荻野さんのところで探してもらいたい』と単独で依頼されることもあります。また、企業に応募書類を持ち込んで、『このような方ですが、一度検討して下さい』とのお願いにも応えていただけるようになります」

求人開拓の方法も、企業を訪問するほか、商工会議所に足を運んだり、市役所や工業団地組合を訪ね、地域の求人情報の収集、地元キーマンとの人脈作りなど、荻野独自の創意工夫を心がけている。

求人開拓担当と企業の採用担当のコミュニケーションで、最終的に最も大事なのは『信頼を築けるかどうか?』

どんな状況でも案件を獲得できるか

2013年7月、荻野は応募41件に対し、内定21件という成績を残した。決定率は48%。だがその数字に満足せず、「5件応募したら5件内定すること」を目標にしている。

「いろんな事情により、再就職活動がうまくいかない方にこそ、内定を出せることが本当の求人開拓担当の力です。厳しいですが、『紹介できる案件はありません』ではダメ。どんな状況でも案件を獲得し、内定件数ではなく内定率100%を出すことが永遠の目標です」

そう荻野は意気込んだ。最後に、仕事に対する思いを聞いてみる。

「昨年、キャリアコンサルタントさんから、荻野さんは考え方ややり方が変わっていると言われたこともありましたが、普通のことをやっていたら普通の結果しか出ません。人が思いつかないようなやり方に挑戦する必要があるんです。変わっているのが自分のキャラクターだと思うし、いくつになっても異端児でありたいと考えています」

そんな言葉で、“異端児”はインタビューを終えた。新人でありながらトップコンサルタントに輝いた荻野が、今後も人材ビジネス業界を席巻していくことは、想像に難くない。