泥臭く実直なベンチャーマインドで急成長した若きエース
教育と人材ビジネスを融合させたサービス「営業カレッジ」を軸に、全国展開中の企業・ジェイック。同社の大阪支店に、驚異的な成績を上げている若きコンサルタントがいる。さわやかな外見と裏腹に、若さと熱さが溢れる仕事ぶりは、多くのクライアントの心をつかんで離さない。入社のきっかけや人材ビジネスに対する思い、そして大きな展望まで赤裸々に語ってもらった。
新卒一年目の若者が取った行動
「では、辞めさせてもらいます」
新卒で大手人材ビジネスビジネス 企業に入社したばかりの、一年目の若者は、上司にそう言い放った。時は2010年 。リーマンショックの影響をもろに受けた同社から下った、「新卒社員は全員客先へ出向をしてくれ」という辞令が我慢ならなかったのだ。
「事務系人材派遣の営業を担当していました。やり甲斐を感じていたので、ずっと続けていきたいと思っていたのですが、当時は若かったこともあり、社外出向の辞令が我慢出来ませんでした」
そう話す久野は、鼻っ柱の強い行動とは裏腹に、さわやかな笑顔と物腰の柔らかさが印象的な若者だ。退社後にジェイックに入社し、紹介ビジネスに携わっている。2012年2月から大阪支店で勤務。コンサルタント歴3年半の若手だが、分業制のジェイックで、企業側を担当し、2013年上半期の成績は、担当求人70件で成約が48人。そのうち新規成約率が37.1%。全社のトップセールス賞を獲得する逸材だ。
「当社の人材紹介が他と違うのが、教育と採用支援を融合させていること」久野はジェイックの採用支援「営業カレッジ」の特徴をそう話す。人材の対象は第二新卒や既卒など若手で、職種は営業のみ。担当業界は全業種だが、特に中小規模のメーカーや専門商社が多いという。流れとしては、WEBサイトや就職フェアで集まる月間約150名 の登録者を、説明会、面接、作文で30名程度に絞る。その後、3週間に一回のペースで研修を実施するのだが、その内容が非常にハードだ。まず、朝9時から始まる講義に遅刻したら即退学。その後、担当エリアの企業を回り、ジェイックが発行する小冊子を飛び込み営業で販売するのだ。
「研修は結構厳しいので、『行ってきます』と出て行ったきり帰ってこなかったり、来なくなる人もいます。結果、「働こう!」という意欲がある人だけに絞られるのです」
ジェイックは元々、教育研修ビジネスからスタートした企業。人材育成のノウハウを生かした約2週間の研修で、求職者を20名程度に絞り込む。厳しい研修にもめげなかった精鋭たちを、集団面接で企業に紹介。その後、気に入った人材がいれば個別面接、そして採用に至るというサービスだ。
きっかけさえつかめば活躍できる若者たち
一回の集団面接で5~6割、最終的に登録者の8割が就職しており、過去8年で7,000 名近い第二新卒の就職実績がある。今年は年間1000~1200人は成約する見通しだと久野は言う。成功報酬型で、第二新卒の人材紹介の中では、決して安くはないが、その分サービスの手厚さがポイントだ。
「人材の斡旋だけでなく、入社前の研修はもちろん、入社後にも早期に活躍するフォローを継続して行っています。組織の教育の部分にまで入り込んだ提案をしていく姿勢ですね。若者の受け入れをしたことがない企業が、人材を受け入れて定着するまでを一緒に作っていくのが私たちの役割です。ほかの紹介会社はスキルマッチングですが、私たちはポテンシャルマッチングを重視しています。「この若者は活躍するかも知れない」、という部分に企業に投資していただき、その可能性を実現できるように支援しているのです」
一方で、「若年層の就職を支援するという社会的意義も日々感じている」と久野は話す。就職が自分一人ではうまくできない第二新卒や既卒者たち。だが、きっかけさえつかめば必ず活躍のチャンスがある。「その支援に関われる現在の仕事に、日々大きなやりがいを感じている」と、笑顔を浮かべた。
企業は人が欲しいのではない
トップコンサルタントに相応しい数字を上げている久野に、そのノウハウを聞いてみると、意外な返事が返ってきた。
「成約を上げるためのノウハウは、自分の中にありません。それよりも、商談相手の採用決裁者にいかに信頼されるか。私たちのクライアントは、中小企業が大半です。決裁権はほとんどが社長なので、対面して話すことを大事にしています」 久野が言うとおり、クライアントの大半は社員数100名以下の中小企業。メールやFAXでサービスを案内し、反響があった企業に集団面接会の案内を行っているのだが、70%以上が新規問い合わせ企業のため、対面で信頼関係を築くことが非常に重要になってくる。もう一つは、研修を行う中で、一人ひとりの行動特性や将来予測も詳細にチェックすること。「そこから見えてきた良い面も悪い面も、しっかりクライアントに伝えることで、マッチングの精度を上げるのだ」という。そのためには、もちろん企業のことをしっかり理解しておく必要もある。
「企業が問い合わせをしてくるのは、人が欲しいからではありません。組織を変えていきたい、新しい事業を伸ばしたい、各社、異なる募集背景があるからです。例えば採用人数も、組織を変えていくために複数の方が良いと思えば、そのように提案しています」
企業はどんな課題を抱えており、どんな求人があるか? それに対し、どんな人材がいるか? 仕事中も移動中も常に頭を巡らせ、精度の高いマッチングや、適切な採用人数を考え抜いている久野。「絶対に諦めない」「企業の期待に応えたい気持ちは他の人の何倍もある」と言う通り、泥臭くても実直な姿勢でクライアントの信頼を勝ち取ってきたのだ。その一方で、「できないことはできないときちんとお伝えする」ことも久野のスタイルだ。
「私たちは営業職の紹介がメインですが、事務や経理やマーケティングなど、ほかの職種を依頼されることもあります。ただ、その要望を持ち帰っても、クライアントにとっても時間のロスになります。その場で『その職種でしたら、この会社が強いのでこちらからご連絡をし、ご紹介しましょうか』など、できないことは引き受けないようにしています」
女性が活躍できる社会を実現したい
元々、「独立したい」という思いを学生時代から持っていた久野。「サイバーエージェントの藤田晋社長の自伝的著書『渋谷ではたらく社長の告白』を読み、大きな感銘を受けた」という。
「暗唱できるくらい読み込みました。藤田社長が創業期には、週に100時間以上働いた経験があるということを読み、自分もそれくらいやらないと成功は収められないという思いが昔からありました。長時間労働を支持するわけではないが、何事も言い訳せずに一生懸命働いて、成果を出せる人間になりたいと思いましたね」
そんな思いを抱えたまま、様々な企業の説明会に参加した中で、大手人材ビジネス企業のトップの話を聞くことがあった。当時、リーマンショックで人材ビジネスに逆風が吹いていたとき。その中で、力強く日本の労働市場における人材ビジネスの価値を語るトップに魅せられ、「日本を元気にしたい」と思ったのが人材ビジネスに関わるきっかけだった。
それから約3年半。トップコンサルタントとなった現在の自分を振り返ってもらった。
「これまではビジネスマンとして、何をするにも時間がかかっていたので、業務効率を上げていかないといけません。現在、私の所属チームは5名。今年に入って求人ニーズがかなり高まってきましたので、訪問できないくらい問い合わせがあります。また、いまは一人で成果を上げてもあまり面白くありません。チームとして最高の成果を出したいので、自分の成功事例やうまく行ったノウハウを、社内や業界で共有していきたいです」
また、将来的には、「働く女性を支援したい」思いがあるという。久野が小学生の頃、建設会社に勤めていた父が早期退職して独立した。それをきっかけに、生活水準が下がってしまったことがあるという。そんな中、母や姉、家族の支援によって久野は大学に行くことができ、言葉にできないほどの感謝を覚えているそうだ。
「女性の営業がほしいという企業のニーズも増えているので、応えられるサービスも作りたいですね。若年層で早期に会社を退職してしまったけれど、能力が高い女性。そういう方に研修に参加していただいて、新しい職場を見つけられるようにしたいです。ほかにも、今は保育園が足りず、待機児童がたくさんいます。『働く女性の支援』を考えた時に出てくる問題に自分から挑戦していって、少しでも社会貢献できる事業ができればと思っています」
現在、若手の女性社員を部下に持つようになり、コンサルタント業務に加えてマネジメントも行っている久野。「いつか取り組んでいきたい女性の社会進出支援のために、マネジメント力も磨き、女性の部下が生き生きと働けるよう支援していきたい」と語った。最後に今後の目標を聞くと、久野は意外なことを明かしてくれた。 「実は去年まで、鳴かず飛ばずの成績だったんです。だからこそ、今年は絶対に飛躍するぞ! という思いがありました。上半期にトップセールスを獲ったので、下半期も獲りたいですね。一発屋と呼ばれないように(笑)」
学生時代に陸上に打ち込み、大学駅伝を目指していた久野。いまだに走ることは好きで、継続しているという。その持久力とチームワークで、久野はビジネスの現場でも走り続けている。その目に映るゴールを目指して、力強く。