キャンディデイトの目指すゴール地点は?“想像力”が働いたとき、成約が生まれる

農林水産省で5年間働いた後、2年間イタリアンレストランに勤務。その後、 ひょんなことから人材業界に転職した経歴を持つ林は、入社してわずか1年半でトップコンサルタントへと成長した。ロジカルな思考よりは、「直感」「想像力」を駆使して断トツの成績を上げ続ける彼女の仕事術に迫った。

「会社にいそう」とイメージできるかどうか

元々、人材業界に興味があったわけでなかった。「暑いのが苦手」という理 由で内勤を希望し、営業職に就くつもりもまるでなかった。そんな林だが、 2012年にビースタイルに入社。社会人インターンサービス「Re-ing(リーイン グ)」の企業担当コンサルタントとして、ぶっちぎりの成績を上げている。同 サービスは、派遣社員として入社し、6ヶ月間で正社員へと切り替わる紹介予 定派遣に似ている。違いは、6ヶ月という期限がない点だ。その間、求職者はリーイングからコーチングを受けて足りないスキルを磨き、正社員への登用を待つのだ目指すのだ。元々は林も、求職者として「Re-ing」に登録していたのだという。「転職活動のためにビースタイルの『Re-ing』に登録したんです。初めは他の企業を紹介いただいたのですが、喋りすぎということでそこでの派遣採用はNG になってしまって……」

苦笑いしながら林は当時を振り返る。そのエピソードが示す通り、林は明るい笑顔を終始浮かべて、ハキハキと喋り続ける。めげずに新天地を求めて転職活動を続ける中、ビースタイルから「うちに入りませんか?」と声をかけてもらい、「せっかくなので」と入社を決めたという。

「一番心がけているのは、クライアントにコンタクトするとき、どういう人物像が良いのかを重視したヒアリングをすることです。Excelのスキルや実務経験は、紙に書けば誰にでも見えるので、ジャッジしやすいですが、それよりも『この人はこの会社にいそう』というイメージが湧くかどうか。人柄やパーソナリティを含めて、総合的にマッチしそうな人材をコーディネーターに伝えています。スキルの部分は後からですね」

成約を上げ続ける秘訣を、林はそう語る。人の印象は個人の感覚によって異なる。林が“こういう方です”とクライアントに紹介しても、担当者からすれば“聞いていた人と違う”となることも少なくない。そのミスマッチングを引き起こさないよう、「この人はこの会社にいそう」という感覚を大事にしているのだという。そのためには当然、クライアントのこともよく知る必要がある。実際に足を運んで雰囲気を知ることはもちろん、WEBサイトや担当者のメールや声のトーンや話し方など、総合的に把握した上で、人材担当に求める人物像を伝えるのだ。

ゴール地点を想像できるかどうか

ビースタイルの人材担当は企業に出向かないので、林からの情報のみでマッチングをしないといけない。そのため、「残業が多い」などデメリットになりがちな労働条件も全て伝えてもらい、それに対して求職者がどうリアクションをしたかを共有した上で、企業に紹介するのだ。その際、年齢などのスペックだけではなく、希望する働き方やキャリアなど、事前に伝えることでマッチングに繋がりそうな情報であれば、企業に積極的に伝えるようにしているという。そして職場見学などで、初めて人材と企業が顔を合わせるときは、より踏み込んだ話をするのだそう。本来ならクライアントと求職者が話をすればそれで済むが、お互い言いづらいことや聞きづらいこともあるはず、と林は話す。例えば、求職者は「オファーをもらいたい」という素直なやる気を、企業側には「このくらいまで仕事を任せようと思っている」ということなどを伝えてもらい、その場で労働意欲や採用したい気持ちがあるかを確かめるようにしている。その反応を見て、林の「想像力」が働いたときこそ、人材を送り出しているのだという。

「クライアントにも人材にもWin-Winになるようにリサーチして、人材が紹介先で活躍できるかイメージできたとき、最終的に送り出すようにしています。本人の意思が絶対なので、無理に説得したりすることはありませんが、入ってからイメージと違ってガッカリすることがないよう、疑問は事前に全て解消し、クリアにしています。入社後は、私は見ることができませんから」

林の強みは、まさにこの「想像力」や「直感」にある。「この求職者と企業は合う」というゴール地点を瞬時に思い描けるからこそ、自信を持って人材を送り出せる。もしイメージしたゴールとズレがあっても、軌道修正できそうであれば、間に立って微調整しながら進めているのだ。

常に意識しているスタッフ目線

林の勤務時間は、基本的に9時から18時。担当している人数が多いため、遅くなることはあるそうだが、引継ぎさえスムーズに行えれば、残業はあまりないという。スケジュールとして、午前は事務処理をしたり、来社したクライアントの担当に進捗報告をしたりしている。午後はクライアントとの顔合わせが多く、1件~3件の企業様とお会いすることもあるという。そんな中で、林が時間をかけるのは、多くのクライアントと会うことではなく、一つのクライアントと欲しい人材について感覚値のズレを出来る限りなくすためにも綿密に打ち合わせをすること。結果、成約数は平均で月11~12件だという。

このように、時間を効率的に使い、好成績を出し続けている林が常に意識していること。それは、常にスタッフの立場で考えることだという。「入社して間もない頃に、企業様とスタッフさんの引継ぎがたくさん来て、よく分からないまま半年ほど過ごしたことがありました。そもそも、その企業はどういう会社なのか、そしてスタッフさんはどうしてその企業を選んだのか。あと、人となりもそうですが何を思ったり迷ったりして就業しているのか、それが分からなかったことが今思えばとっても歯がゆかったんだと思います。この時期がきっかけで、スタッフ目線を意識するようになりましたね。ただ今は、スタッフが迷っているときに、選択肢を2~3個しか提示できないことが多いです。私からアドバイスできる選択肢をもう少し増やせた方が選びやすいし、自分の意志で決めたという納得感や自信にもなって、次に結びつきやすい。もっとキャリアを積んで、その辺りを強化していきたいです」

自分自身も転職して中途入社という経歴があることから、スタッフの立場から物事を考えることの大事さを良く知っている。だからこそ、スタッフにもクライアントに的確な提案ができ、自然と結果が付いてくるのかもしれない。

ノウハウの共有が今後の課題

今の仕事が天職かは分からないけど、すごく楽しいんです、と林は白い歯を見せる。

「この仕事の何が楽しいのか考えてみたんです。そうしたら、私が人に影響を 与えることは無いと思っていたのが、社会人経験のない若いスタッフたちと接する中で、この人の応援をしたい、と思うことが楽しさの原点でした。私と接する人が変わっていく姿を見て、楽しいと思うようになってから、仕事への思い入れも変わりましたね」

もちろん、クライアント企業から信頼してもらえることも、仕事のやりがいやモチベーションの原動力となっている。クライアント企業から『林さんに依頼をしたい』と言ってもらえることが何よりのやりがいなのだそう。

トップコンサルタントに相応しい成績を上げ続けている林だが、仕事ではプランニングや検証、逆算などが苦手。「想像力」「直感」を駆使することが多いため、ノウハウの共有が今後の課題だという。実際に、メンバーや後輩たちからアドバイスを求められても、うまく答えられないことが多いのだそう。「絶対に決めよう! という思いだけで動いています。成約したときは、なぜうまく行ったのか、後から理由を付けているスタイルなので、ノウハウの共有が難しいんです。ただ、このままではいつかマネジメント職に就いたとき、必ず苦労すると思います。ですので、今からノウハウを整理して言語化して、ナレッジシェアをしていきたいです」

この先、さらに事業拡大していくであろうビースタイル。コンサルタントの数が増えると、人材育成にも注力していかないといけない。林が無意識に実践しているノウハウは、そのときに必ず必要になってくる。俗人的になりがちなコンサルタントという仕事のノウハウを共有し、全体的な決定率の向上や安定就業に繋げることが今後の課題だと、林は最後まで明るさを絶やさずに話した。