海外育ちのなでしこコンサルタント
誰にでもポテンシャルを発揮できる場所があるはず

日本設立10周年となる昨季、東日本大震災の影響をもろともせず、過去10年間の中で一際高い業績を上げたマイケル・ペイジ・インターナショナル・ジャパン。精鋭揃いのコンサルタントの中から、トップコンサルタントとして選ばれたのは意外にも若い女性だった。トップコンサルタントに相応しい実績を生み出し続ける彼女の、仕事にかける思いや原動力に迫った。

中学卒業後、単身でオランダへ向かう

やがて日本が直面するグローバル化の兆候を、そのときすでに彼女が感じ取っていたのかは定かでない。とにかく、中学生だった彼女の胸には「卒業したら絶対に海外へ行く!」という強い思いがあった。

「義務教育が終われば自由にして良いでしょ? って思いがありました。少しでも早く外に出たかったんです」

そして中学卒業後、単身でオランダに渡ったその少女こそ、大村朋子である。オランダを選んだのは、幼少の頃に数年間住んでいたことがあるから。だが決して同国だけにこだわるのではなく、その後アメリカに生活拠点を移して大学卒業までの日々を過ごした。ちなみに両親は、したいことを何でもさせてくれる教育方針。「何かあったら自分で責任取りなさい」とだけ言われ、送り出されたのだという。

「楽なことと難しいことがあれば、本能的に難しい方を選んでしまう性格なんですよね。大変なことの中から、面白いことを見つけるのは楽しいですし、そこから何か見つけられれば喜びも大きい。元々がプラス思考なんでしょうね」

物事に対して考え過ぎるほど考えてしまう一方で、「まぁ、いっか」と切り替えられる楽天的な面もある。帰国後に人材業界に飛び込み、現在マイケル・ペイジ・インターナショナル・ジャパンでコンサルタントとして活躍する大村は、自らの性格をそう分析する。そんな彼女は、日々どのようなことを心掛けて仕事に臨んでいるのだろう?

売り上げ以外にも表れる一流コンサルの実績

大村が所属しているのはITチーム。キャンディデイトの層は20代後半~30代後半が中心で、年収ゾーンは400万円~3000万円超と幅広い。その中で、大村はコンスタントに毎月2~3件の成約を上げている。年収の高いシニア層(年収400万円~1800万円の案件を担当)のマッチングが中心のため、金額にするとトップコンサルタントに相応しい数字となっており、同社のアジア圏で活躍する約600人のコンサルタントの中で、昨季はなんと6位の売り上げを出したほどである。

「入社当初にKPIの設定をされるので、最初はそれを指標に目標達成を目指しますが、1~2年働いていると『何人にインタビューをすれば何人成約するのか』などイメージができてきます。それを表にして、『キャンディデイトが少ないので集めよう』『求人数が足りないから開拓をしよう』など、かなり細かく設定して進捗管理していますね」

さらに大村には、売り上げ以外でも誇らしい実績がある。それは、成約した求人企業のほとんどが新規ということ。また入社以来、紹介したキャンディデイトが一人も辞めていないことだ。

「とにかく相手のお話を聞くように心がけています。人って自分の話を聞いてほしいじゃないですか。無駄話のような話もたくさんしますが、それも大事にして、話しやすい相手でいられるように心がけていますね」

大村はプライベートでも、学生時代の友人や仕事仲間など分け隔てなく、仲の良い人を集めて交遊することが好きなのだそう。ふと気が付くと、自分の知らないところで友人たちがコミュニティを築いていることもあるのだとか。そんな才能ともいうべき性格が、仕事でも存分に発揮されていることが伺える。

「楽しいなと思うのが、キャンディデイト様がほかの求職中の方を紹介してくれたり、食事に誘ってくれたりすること。たまにお仕事の悩みを相談されることもありますが、私のところに戻ってきてくださることが嬉しいですよね。人の役にどれだけ役に立てたことが実感できて、モチベーションに繋がっているのかもしれません」

笑顔でそう話す大村だが、ただ、とも付け加える。

「リレーションシップを作るのは得意ですが、人が相手なのでどうにもならないこともあります。いかに信頼を築くかは永遠のテーマとして考えていきたいですね」

不可能と思われたキャンディデイトをマッチング

同社でコンサルタントをする中で、特に印象に残っているという成約エピソードを大村が話してくれた。キャンディデイトは40代半ばの女性。IT業界一筋で働いてきたが、病気を患ったために2年半ほどブランクがあり、それがネックとなってなかなか再就職ができずにいた。

「IT業界では2年以上もブランクがあると復帰が難しく、また40代半ばという年齢もマイナスに見られてしまいます。私にどうお手伝いができるのだろう?と最初は悩みましたが、お会いして話してみると大変優秀な方でした」

IT業界でコンスタントに積み重ねたキャリアが、ブランクをハンディとしない自信となって表れている。また、憧れのキャリアウーマンというより、温かく元気な人柄が印象的だった。

「誰でも一度会ったら必ずこの方を好きになる。そう確信して、『とにかく一度会ってみてください』と企業に伝え、その方がどんな意志を持って仕事に取り組んでいるのかをアピールしました。病気のことや年齢のことがあったため、通常は3回で終わるはずの面接は8回行われ、期間も3ヶ月半かかりましたが、結局世界的なIT企業に入社が決まったんです! そのときにかけていただいた『これでまた頑張ることができる。ありがとう』という言葉と笑顔が忘れられないですね」

今でも交流があるというそのキャンディデイトとの思い出を、感慨深げに大村は振り返る。トップコンサルタントでありながら、新人の初成約のように、心から嬉しそうに話す姿が印象的だ。

ちなみに入社前、ITについてあまり詳しくなかったという大村だが、ハンディだと感じたことは一度もないという。

「ITの知識をどこで学んだかといったら、ほとんどがキャンディデイトからです。わからないことがあっても、教えてくださいという姿勢でいれば親切に教えてもらえるものですよ。そもそも、私の仕事はコンサルタント。ITのスペシャリストであるキャンディデイトの、就職を支援するプロであればいいと思っています」

大村もキャンディデイトも、プロであると同時に一人の人間でもある。そのことを理解し、尊重し合った上でリレーションシップを築く。そんなスタイルも、大村が結果を出し続けられる要因の一つなのかもしれない。

「いかに信頼を築くかは永遠のテーマとして考えていきたいですね」

日本人としてどう会社作りに貢献していくか?

10代~20代の初めを海外で過ごした大村が、日本で就職することを決めた理由。そこには、外に出ることで改めて気づいた日本の良さや日本人の素晴らしさがあった。

「私は仙台出身で、故郷の田んぼや何もない風景が広がっているのを見るのが好きです。また東北の文化である、我慢強さや忍耐強さなども好きですね。実際、私は海外生活が長いですが、『誰よりも日本人っぽい』と言われてばかりなんです」

33カ国に拠点を置くなどグローバル展開している同社は、今後拠点ごとにローカライズしていく展望があるのだという。そんな中、大村は自分の「日本人っぽさ」を活かして、真に地域に根付いた会社作りに貢献していきたいのだという。

「色々な国の人が働いているのは素晴らしい文化ですが、いつかは拠点に日本人のマネージャーを置いて、地域ビジネスを確立する役に立てればと思います。そして、日本人がもっと活躍できる会社作りをして、ローカル企業との付き合いを大事にしていきたいですね」

海外育ちというバックグラウンドを、日本人として活用する。そして人材の流動化に貢献し続けているトップコンサルタントは、さらに大きな目標を持っている。

「現在、私の担当は日系企業がほとんどです。『マイケル・ペイジ』と名乗れば外資系企業には通じますが、日系企業の認知度はまだまだ少ないです。前職で新規事業部の立ち上げに関わったことがあり、ゼロから企業のドアをノックしていた経験があるのですが、実はそのときとほとんど変わらない状況なんです。日本で『マイケル・ペイジ』のことを知っている方が10%だとしたら、残りの90%の方にいかに知ってもらうか? それが今度の課題で目標ですね」

もちろん、顧客満足を最大の価値として守り続けることは忘れない。その上で日本人として、社名にある「ジャパン」を背負い続けることを、大村は力強く宣言。

「転職市場は、まだ日本ではそこまで大きくありませんが、国内の人材流動化や適職へのマッチングに、人材ビジネスがもっと貢献できるようにしたいです。結局、社会は人で成り立っているので、誰にでも自分のポテンシャルを発揮できる場所があるはず。『マイケル・ペイジ』のキャッチフレーズは『Maximize the Potential』ですが、本当にそう。人や企業が次のステップを考えたとき、弊社が一番最初に相談してもらえる場所になれればいいと思います」

趣味は旅行や自転車での遠出。ロードバイクで、何と東京から箱根にまで行ったことがあるという。難しいことへチャレンジするのが楽しいという性格の大村は、プライベートでも仕事でも、いつもワクワクすることに囲まれているのかもしれない。