“地域”“金融機関”に特化した紹介会社がわずか2年で成約数を5倍に増やした理由

金融業界のプロから、トップコンサルタントへ。2015年末に設立した人材会社で、若干3名のチームを率いるのが、DSBソーシングの常務である石井だ。これまでの知見やネットワークを生かし、メンバーたちと切磋琢磨しながら、同社の成長に寄与してきた。“金融”“地域”という明確なキーワードを持つ同社は、どのような理念や戦略を持っているのか。そして目指すビジョンは何か、石井に聞いた。

アウトソーシング事業から派生した人材事業

「私たちのコンセプトは、地域の銀行や証券会社に人材を紹介し、課題解決に貢献すること。そして、親会社であるだいこう証券ビジネスの発展にも寄与していくことです」

2015年12月に設立したDSBソーシングで、チームを率いる石井はそう話す。まだ3名の小規模な組織だが、地方の金融機関に特化した人材紹介を軸として、着実に業績を拡大している。

石井は地方銀行での勤務を経て2015年、58歳でだいこう証券ビジネスに転職。同社は証券会社を中心に、金融業界に特化したアウトソーシング事業を主に行っており、取引先である金融機関の人材ニーズに応えるため、DSBソーシングを設立する運びとなった。石井は立ち上げから参画し、人材ビジネスに携わるように。担当業務は主に求人開拓だ。

「開拓方法は主に2つです。一つ目は、だいこう証券ビジネスの取引先である金融機関の、担当者や人事からの紹介。グループのシナジー効果ですね。二つ目は地銀時代のネットワーク。私は本部勤務や支店長の経験が複数あるので、そのときの繋がりを生かしています」

一方で求職者の集客は、自社で運営する求人サイト「nezasスカウト」への登録者を中心に、大手媒体のデータベースも活用している。そのほか、企業からピンポイントで「こんな方が欲しい」と相談を受けた場合、独自のネットワークや手法でサーチもしている。

変わりつつあるビジネスモデルと人材のニーズ

DSBソーシングが対応する求職者は、U・Iターンを希望する方が主な対象だ。「働き方が多様化する中、移住を伴う転職希望者は潜在的なニーズを含め、市場に相当数存在する」と石井は考えている。例えば、メガバンクやメガ信託で働いていた方が、親の介護などで地元に戻らないといけないとき、経験を生かせる場所として地銀を選ぶことが多いという。金融機関側からのニーズが大きいのは、専門知識を持ったスペシャリストだと石井。

「M&Aや相続、年金、遺言信託、企業の海外進出支援など業務は多岐にわたります。そういった業務を、机上の理論だけでなく、実際に行える方は活躍しやすいですね」

採用にあたり、地方の金融機関がスキルを重視するようになったのは、ビジネスモデルの変化が大きい。日銀のマイナス金利といった外的要因もあり、金融機関は従来のように、預金と貸出金の利ざやで安定的な収益を確保し続けることが難しくなった。そこで個人客へ投資信託販売などの、新たな手数料で収益を上げる必要が生じているからだ。また、フィンテックやシステムの普及によって、IT人材のニーズも高まっていると石井は話す。

「金融機関の業務は、ITによって代替されるようになります。それに伴い、求められる人材の質も変わっていくでしょう。地銀の採用担当者も、理系の方に来てほしい、と明言しているケースが多々あります。一方で、先に挙げたような専門業務ができる方も求められる。人材のニーズが多様化している状態です」

長期間就業への意識も薄れつつある。以前は新卒で入社し、長期的にキャリアを積んでいくのが当たり前だったが、現在は転職が当たり前になっている。終身雇用の終焉や人材の流動化に伴い、メガバンクが新卒採用の人数を抑えるなど社会的背景の影響もあるという。年齢では30~40代のニーズが高い。石井によると、バブル崩壊後、金融機関が採用を抑えた時期があった。そのため多くの金融機関では、30~40代が少ないのだという。とはいえ、多くのクライアントが求める層だけに、市場には絶対数が少ない。石井やコンサルタントが間に入ることで、多少年齢の幅を広げてもらい、その代わり求めるスキルや経験でカバーするなど、付加価値を提供し続けている。

成約数が10数件から50件超に増加

DSBソーシングが人材ビジネスを開始したのは、2016年の4月。以来、累計で60名を超える人(2018年6月現在)が成約に至っている。特筆すべきなのは、1年目の成約が10数名なのに対し、2年目で大幅に増加したことだ。その要因の一つを、石井はWEBマーケティングの成果だと明かす。

「まずnezasスカウトをリニューアルしました。またSEO対策をして、検索したときに上位表示されるようにもしました。WEBマーケティングや広告にコストをかけて対応しています」

チームの連帯力も成果を支えている。個別案件が入るたびに、金融のプロフェッショナルである石井と、人材業界出身のメンバーと議論を重ねた。また、それぞれが持つ知見や経験を共有し、金融業界で人材ビジネスを行ううえで、必要なスキルを身に付けていった。そういった取り組みのおかげで、2年目に成果が一気に表れたのだ。しかし、石井はまだまだ満足していない。

「今後は件数だけでなく、収益拡大を目指していきます。そのために強化していくのは、求人環境の強化。地方銀行は全国に104行あり、そのうち取引いただいているのは40行(証券会社も含めると83社)です。地方銀行や証券会社など、各社の異なるニーズに応えて、親切に対応することで、お取引先をもっと増やしていきたいですね」

地域経済全体の活性化も支援

DSBソーシングのミッションには、地方の金融機関の支援はもちろん、地域全体を活性化させることも含まれている。地方の若者たちが就職で都市圏に行ってしまう、一極集中が顕著であるからだ。

「地方の金融機関を回っていると、どこもそういった悩みを持っていると聞きます。このままでは、地域全体が疲弊してしまいます。極端な話ですが、メガバンクは利益が出なくなったら支店を閉鎖すればいい。しかし地方銀行は、地域に根付いているからこそ強みがあるため、ほかに行く選択肢はありません。だからこそ私たちも使命感を持って、求職者に地方や地域の魅力もしっかり伝え、移住を含んだ転職のサポートをしていきます」

地域の金融機関の活性化を通じて、企業や地域経済全体も元気にする。それがDSBソーシングの存在価値だと石井は明言する。移住を伴う案件が多いため、マッチングの際は、求職者の人生設計もふまえて行っている。目先の成約だけでなく、長期的な視点に立って、求職者と企業、地域、さらには自社を幸せにすること。それを真摯かつ愚直に実践し続けているのが、DSBソーシングの成長の秘訣なのかもしれない。そして、あるべき人材ビジネスの姿なのだと、トップコンサルタントが教えてくれたようだった。