非効率な新卒採用をしている企業へ
効率的な第二新卒採用へのシフトの勧め
人材紹介は一般的に、社会人経験が豊富な“即戦力”の人材が対象だ。しかし、大学卒業から数年以内の、“第二新卒”に特化した紹介業を行っている企業がある。新卒でもなく、即戦力人材でもなく、なぜこの属性に着目したのか。紹介サービスを利用した企業からの反響は。秋庭社長に聞いた。
新卒よりも定着率が高い?第二新卒
御社は第二新卒に特化した人材紹介を行っています。その経緯と狙いを教えてください。
弊社は社会人経験が浅い方、もしくは全くない方に特化した人材紹介を行っています。始めたきっかけですが、私は前職で企業の新卒採用の支援を行っていました。そのときに、中小やベンチャー企業の社長から、「新卒はいい人材が採用できない」という話をよく聞いていました。
当時は就職氷河期。未就職のまま大学を卒業した学生がたくさんいたものの、多くの企業は彼ら彼女らに目を向けず、翌年の新卒学生を採用ターゲットにしていました。そこで、既卒学生にもいい人材がいることを知ってもらうべく、第二新卒に特化した紹介サービスを始めたのです。
第二新卒と新卒では、どのような違いがあるのでしょうか。
多くの企業は、新卒採用にたくさんの時間と予算を費やします。そして10~20名を採用しても、1年後には半分になってしまうケースが多々あります。一方で第二新卒の方は、細かなデータに基づいた分析ではありませんが、新卒よりも定着率が高い気がしますね。
理由として、退職という選択肢は、トランプで言うと“ジョーカー”です。20代のうちにそれを一度使ってしまった新卒は、二度目をそう簡単に使えないからではないでしょうか。若いうちに何度も転職をすると、再就職先の間口が極端に狭くなります。そう自覚して、二度目は就職先を慎重に選んでいるため、定着率も高まっているのではないでしょうか。
また、新卒は4月にしか入社できませんが、第二新卒は企業が必要な時期に採用できることが大きな違いであり、メリットです。
第二新卒の人数は、どのように変化しているのでしょう。
売り手市場の影響もあり、大学卒業と同時に就職しない未就職の第二新卒は減っており、現在7人に一人ほどです。しかし一方で、新卒入社した会社を辞めた第二新卒者が増える傾向があります。理由の一つとして、企業が新卒者を確保するために、会社説明会や選考過程で、厳しい話を避けがちなのかもしれません。そのため、入社後のギャップが大きくなり、再就職先もたくさんあるので、結果的に第二新卒が市場に増えるのではないでしょうか。逆に求人倍率が下がると、企業は厳しいことも学生に伝えるため、ギャップが小さく、離職率も下がります。
求職者・企業それぞれへの啓もう活動
第二新卒は一般的に、大学を卒業して3年以内と言われています。その範囲の中で、決まりやすさに違いはありますか。
当社の傾向ですと、1年未満で退職した方の方が決定しやすいです。おそらくですが、すぐに辞めた方は、自らの意思で「この会社は違う」と判断し、行動したのではないでしょうか。そういう方が人物本位の面接を受けると、内定が出やすいですね。
御社が運営する既卒・第二新卒に特化した転職サイト「いい就職ドットコム」は何名くらい登録者がいるのでしょう。また、集客はどのように行っているのですか。
登録者は20万人以上です。ほとんどがWEB経由での登録ですが、特別なことはせず、自然に増えていきました。しいて言えば、弊社の書籍の読者や、登録者の友人が口コミで登録することも多いですね。母集団が多いため、登録者を実際に集めて、求人企業に会社説明会を開いてもらうことなどもしています。
第二新卒者の、入社後の定着率はいかがでしょう。
定着率は悪くないのですが、そのために工夫をしています。弊社に転職相談に訪れた方には、「20代で転職経験が何度もあると、書類選考すら通らなくなる。次が最後の転職だと思って臨んでほしい」と伝えるようにしています。そして、30歳のときにどうなっていたいか、どういう人生にしたいかを真剣に考えてもらった上で、企業を紹介していますね。新卒入社・早期離職した人は、企業の知名度ブランド、初任給の額など、イメージ先行で就職してしまったケースが多く見受けられるからです。あとは体験入社を導入しています。
体験入社とは、具体的にどのようなことですか。
内定前に1~2週間、企業で実際に働いてもらうのです。その期間中に、お互いのことを知ることができ、合うか合わないかもわかります。この体験入社で約30%、企業か求職者のどちらかが辞退しています。つまり、それだけのミスマッチを防げていたことになります。
この取り組みは、企業側への啓もう活動にもなっています。多くの企業は、第二新卒に対し、「就職できなかった人」「すぐに会社を辞めた人」というネガティブなイメージを抱きがちです。体験入社を通じ、彼ら彼女らが働く姿を実際に見ることで、先入観がなくなるのです。定着率も上がり、結果的にリピートオーダーにもつながっているのだと思います。
人材を見極める、唯一の判断基準
フィーはどのくらいに設定しているのでしょう。
一律75万~80万です。通常の人材紹介と同じく、年収の30%にすると、フィーは約100万になりますが、企業側のハードルを下げ、第二新卒採用に積極的に取り組んで頂くためにこの設定にしています。
コンサルタントは何名いるのですか。
東京、大阪、名古屋、横浜に支社があり、合計で20名以上在籍しています。基本的にRAとCAの分業型ですが、コンサルタントによっては一気通貫の者もいます。
御社が紹介した第二新卒者が、企業に大きな貢献やインパクトをもたらした事例を教えてください。
大学を出て2年ほど司法試験に取り組み、結局受からずに方向転換した方を、ある企業に紹介しました。10年後の今、その企業は東証一部に上場し、紹介した人はナンバー2になっています。元々ポテンシャルがあったのに加え、司法試験の勉強で生じた遅れを取り返さないといけない、という思いもあったのかもしれません。こういうケースはたくさんあり、社長になっている人もいるんです。
第二新卒はポテンシャル採用のため、経験やスキルなど目に見える強みがありません。どういった観点、方法で見極めていますか。
最も大事なのは、「働くことに対して意欲が高いか低いか、あるいは無いか」ということです。「働く意欲がない」という点に驚かれるかもしれませんが、世間一般を見ても「働く意欲がないのに就職している人」は多く見受けられます。就職意欲と働く意欲というものは別物で、弊社では後者のみを重視して人材をご紹介するようにしています。
結婚適齢期が様々なのと同じで、就職の適齢期も様々。だからこそ、まずは求職者の「働きたいか」「働く意欲はあるか」の確認に時間をかけています。新卒のとき、つまり22歳の春は就職適齢期ではなかったけれど、社会人を経験したことで、就職適齢期を迎える人もいます。求職者はその時期に就職すべきですし、企業もその時期に採用すべきなのです。
ありがとうございました。第二新卒の活用を考えている求人企業に対し、メッセージがありましたらお願いします。
企業からはよく、「六大学以上の方」「MARCH以上」といった人材リクエストをいただきますが、私は現場のコンサルタントには「要望外の人でも自信を持って推薦できる人であれば思い切って紹介しなさい」と伝えています。一般的な枠組みの中では埋もれてしまう魅力的な人材をクライアントにご紹介することこそが、私たちの使命であると考えているからです。自分で言うのもなんですが、そういう意味では少し変わった人材紹介サービスなのだと思います。いわゆる「優秀層」といわれるゾーンからはみ出してしまう中にも、優秀な人材はたくさんいる。そういう人を採用いただき、驚き喜んでいただくためにやっているようなものですから。