広告料削減、業務効率化など実現!派遣会社がRPAを導入するメリット

業務の効率化や生産性向上の施策として注目が集まっているRPA。一方で先進的なサービスゆえに、その詳細については、まだよく知らないという企業も少なくないだろう。そこで、全体像、派遣会社が導入することでどのような効果があるのか、予算はどのくらいか、システムとはどう違うのか……など、RPA導入支援サービスで豊富な実績を持つキューアンドエーワークスの坂原氏に聞いた。

働き方改革を受けてRPAの導入が急増

まず御社がRPA市場で働くデジタルレイバー(仮想知的労働者)を採用(導入)した経緯について教えてください。

弊社は人材派遣のほかにBPOサービスも行っています。BPOでは、生産性を上げれば顧客満足度が向上し、利益にもつながるため、業務フローの改善や組みなおしから行っていたのですが、どうしても限界がある。そこで2014年にデジタルレイバーを開発し、導入したのです。ただ、いきなりクライアントの業務で使うわけにいかないので、まずはテスト的に、弊社の事務派遣の業務の一部を自動化していきました。

具体的には、求職者からエントリーがあった際、自動でHRBCに取り込めるようにしました。それまではコーディネーターが、求職者情報をExcelで管理することが多く、必要な人材がどこにいるかわからないことがあり、課題に感じていたのです。その後、2016年からRPAサービスとしてお客様に提供していきました。

反響はいかがでしたか。

最初は反響が少なかったのですが、2018年から増え始め、現在は500社ほどが導入してくださっています。社会問題になった長時間労働による過労死や、働き方改革など社会的背景が後押しになったのかもしれません。現場の社員の負担軽減のため、新しく人を採用しようとしても、人手不足のため難しい。そこで長期的に見たとき、RPAの導入を決めた企業が増えています。

改めて、御社のRPAサービス「RoboRoid(ロボロイド)」の概要を教えてください。

RoboRoid®はRPAの導入支援の総称ブランドです。取り扱う製品は「BizRobo!」「WinActor」「BluePrism」の合計3製品。導入支援から、自社でデジタルレイバーを活用できるよう研修やサポートを行っています。また導入前の支援として、業務の可視化・整理を行う「RoboRoid®-HIT.s(ロボロイドヒッツ)」も提供しています。今後は保守サービスも提供する予定ですが、企業がRPAを導入する目的は人材不足の解消なので、基本的には内製化を推奨してサービスを組み立てています。

RPAを導入する最大のメリットはコスト

業務効率化を目指すときに、システム導入ではなくRPAを選択するメリットは何でしょう。

最も大きいのはコストです。システムをゼロから開発すると、ボリュームにもよりますが莫大な費用と期間がかかりますし、業務の運用が変わる可能性も高くなる。一方で、RPAは業務設計を見直す必要もありません。費用は製品によって異なりますが、全社的に取り組むRPAの場合は、導入支援サービスを含めて年間約800万円。部門単位で取り組むRDAの場合は、年間約200~300万円で、自社で導入を行えば年間100万円程度です。そもそもRPAは24時間365日働けるので、人件費として時給に換算すると大した額にはならないことがほとんどです。

導入しているクライアントの業種や規模について教えてください。

業種は様々です。規模は、2016年頃は大企業がほとんどでしたが、現在は中小企業にも広がっています。また去年から、大企業では部門単位での導入が増えています。

全社で導入するとコストが大きくなってしまうためなのですが、小さく始めることもできるのがRPAの特徴です。

人材派遣会社では、RPAを導入することでどのような効果が生まれるのでしょう。

コーディネーターが行っている入力などの作業を自動化したり、登録者や企業へ連絡漏れがないようにアラートを出したりと、使い方は無限にあります。弊社では特にアラートとして使うことが多いです。チャットボットと連携させて、就業中の方の更新確認や、他社で就業中の方に希望条件やレジュメの確認などもしています。こちらで用意した設問に登録者が回答し、その内容が自動的にHRBC*に反映されるため、コーディネーターがメールでやり取りし、その内容をHRBCに転記する……という手間がなくなり、メールの回数も少なくなりましたね。

また、既存ユーザーの掘り起こしが劇的に増えました。以前は他社で決まった方へ、一年後に状況確認の連絡をしていたのですが、コーディネーターが忘れてしまうこともある。それをデジタルレイバーは自動で行ってくれるのです。結果、求人の出稿量が下がり、以前は月間1000万円だったのが、現在は60万円程度に抑えられています。

RPAの導入をスムーズに行うコツはありますか?

まず、業務フローを洗い出します。そこで紙で行っているもの、人が行っているものなどを可視化していきます。弊社のRoboRoid-HIT.sというツールを使って標準的に可視化した後、やらなくていいことなどを削減していきます。これにより、人間がやること、デジタルレイバーにやらせることをお客様が認識し、共通理解として導入を進めていくことができます。また、業務フローが分岐していくような場合は、まずもっとも数の多いフローをRPAで流し、運用していく中で、分岐を追加します。最初から複雑な分岐を覚えさえると導入が複雑になり、導入効果が見えにくくなります。まずは業務を整理して小さく初め、徐々に改善していくことをお勧めしております。

RPAが効果的なのは人が行う業務の補助

デジタルレイバーをうまく使うコツはあるのでしょうか。

活用の仕方を発想することです。例えば弊社がチャットボットを開発したのは、もともと契約更新確認が目的でしたが、希望条件をヒアリングするのにも使えるなと。他社で稼働している登録者向けには、別にレジュメを登録する窓口があり、そこへ誘導するのが一般的な考えですが、チャットボットで完結させてしまうことにしたのです。

RPAは、まとまりのある業務を切り出して自動化するよりは、人を補助するという使い方が多いです。更新日が近いスタッフを探して自動でテンプレートのメールを送ったり、募集期限の終了が近い求人のアラートを出したり、自動でクローズさせたり、といった内容ですね。

コーディネーターが手動で行っている業務は、千差万別のため自動化できないことが多くありますが、日々変わる情報をどの範囲で、どういうパターンで管理するか決めるのも大事です。弊社はどの業務を自動化するか、どのシステムと連携させるか、などの提案から、内製化のサポートまで行っています。

逆にRPAの課題があるとしたらどういったところでしょう。

システムに自動でデータを取り込む場合、システムが改修されたらエラーになってしまいます。求人サイトと連携する場合も、サイトに変更があったら同様です。RPAは導入して終わりではなく、こまめにメンテナンスしながら運用していかなければなりません。

それと、RPAはUIが用意されているため、ノンコーディングで開発できますが、担当者が実務を残したまま着手すると、なかなか導入が進まないことがあります。導入の際はきちんと体制を作って担当者を決め、時間も取っていただく必要があります。

ありがとうございました。最後にRoboRoidの今後の展望についてお聞かせください。

先ほどお話ししましたが、RPAの運用そのものを請け負う保守サービスの提供を考えています。一方で、弊社のほかの部門と連携し、受託開発もしていきます。RPAの業務のほとんどは、Excelや基幹システムへの自動入力です。ツールで再設計すれば400~500万円で開発できることもあり、その場合はRPAではなくツールを勧めていきます。

またビッグデータを解析し、経営課題の解決に生かす「Robo Roid®-DataIntelligence」の提供も始めました。これらを社内のほかのサービスと組み合わせて大きなソリューションにし、デジタルトランスフォーメーションできるサービスを充実させていきます。

*HRBC(HRビジネスクラウド)

ポーターズの提供する人材派遣・紹介に特化したクラウド型マッチングCRM