地頭がよくアグレッシブな外国人人材
2025年の需要増に向けて学ぶべき知識

深刻な人手不足に直面している労働市場で、貴重な労働力として活躍が見込まれるのが外国人人材だ。外国人雇用のスペシャリストとして、2004年から人材派遣・紹介事業を行ってきたグローバルパワー。この15年の間に、外国人人材へのニーズの高まりを着実に感じているという。では今後、マーケットにおける外国人人材への需要はどう変化していくのか。代表の竹内氏に聞いた。

日本語スキルよりも企業理念に合うか、が大事

まず御社の事業概要について教えてください。

日本在住で日本語が堪能な外国人に特化し、人材紹介と人材派遣を行っています。外国人採用には、入管法の問題があります。この法律は改正が頻繁にあり、常に追っていないとどういう人材が在留資格を取れるのか、採用ができるのかが把握できない。そこで企業に人材の需要を聞き、どういう人材なら紹介できるか、コンサルティングを行いながら求人を受注しています。

求職者の集客は、一部「ダイジョブ・ドットコム」を利用していますが、基本的には自社運営の求人サイト「NINJA」。企業から依頼を受けた求人をサイトに掲載し、応募がきた人材を提案して、マッチングを行っています。広告媒体ではないので、売上は全て人材派遣・人材紹介のフィーのみです。

御社は2004年に設立されましたが、外国人人材の派遣ニーズはどう推移していますか。

弊社が設立した当時、外国人採用のニーズはまったくありませんでした。当時から人手不足でしたが、あったとしても日本人の代替要員としての採用がほとんど。外食や軽作業などでの仕事でしか外国人は採用してもらえなかったのです。

2013年からインバウンドが増え、空港や百貨店、免税店、小売りや流通、インフォメーションなどの派遣オーダーが増えるように。2016~2017年頃にかけては、企業のグローバル化や海外取引の機会が増え、英語や中国語、アジア系の言語ができる人材の採用需要増加に伴い、オフィス系の求人が伸びました。

ただ現在も、外国人人材を採用し、ダイバーシティや事業拡大につなげたい企業は全体の5%程度。それ以外の企業は外国人に対し、日本語能力や、空気が読めること、残業をしてくれること、などを採用基準にしているように思います。

日本語が上手いからといって、優秀なわけではありませんが、そもそも、難解な日本語をある程度できる時点で、勉強の仕方もうまく、地頭もよいと言えるでしょう。また、異国で働こうとするアグレッシブさもあります。日本語レベルよりは、企業理念にフィットしているか、事業を伸ばすために必要なスキルがあるか、で考えるべきだと思っています。

ニーズが少ないなか、どのようなきっかけで外国人人材サービスの会社を始めたのでしょう。

大きく二つあります。一つ目は労働力不足の解消。日本は少子高齢化で、2008年から人口が減っています。人口が減ると経済規模も小さくなる。この負のスパイラルに日本は入っています。社会に必要なのは、ベースの生産性を高めることや、女性やシニアや外国人の活躍、AIやロボットなどの活用です。その鍵の、一つである外国人人材に着目しました。

もう一つは、楽しい社会を目指して。日本社会には思いやりがありますが、意外性と多様性が足りません。外国人を仲間として迎え入れると、この二つをもたらしてくれる。そして楽しい社会になるのでは、という思いです。

外国人は直接雇用を望むことが多い

人材サービスで、強みや差別化ポイントはありますか。

企業に対し、入管法関連のアドバイスを行っていることです。外国人が在留資格を得るためには、「人」と「仕事内容」の両方で許可が下りないといけません。ただ在留資格は全部で29種類、2019年4月に新設した在留資格「特定技能」は29項目もあります。その一つである特定活動は49号まであります。入管法を理解していないと、在留資格が得られず、就労が遅れたり、仕事ができなくなってしまうこともあります。企業も派遣会社も、そして何より候補者にとってもよくないことになってしまいます。弊社では社員全員が、入管法のプロである申請取次行政書士から毎月2時間の研修を受けています。

弊社は接客販売とオフィス系の派遣に限定しており、この領域での競合はほぼありません。なぜなら工数がかかるからです。私たちは日本人と変わらない相場で、利他の思いを最重視し、この領域で事業をしています。

御社は人材派遣と人材紹介の2つのサービスがありますが、求職者へどのように提案しているのでしょう。

外国人は日本人よりも、派遣を嫌う傾向があります。なぜなら、正社員などの直接雇用の場合、在留期限が最長5年の許可がおりるのに対し、派遣の場合は在留期限が1年になることが多いためです。したがって、外国人は直接雇用を望む方が多いのです。ただ、候補者が直接雇用を希望しても、仕事内容や言語レベル、ヒューマンスキルなど総合的に見て難しい場合、「まずは3か月更新の派遣で一年間働いてみますか」「9カ月経ったタイミングで、弊社の語学やビジネスマナー研修を受けて、正社員での就職を目指しましょう」とキャリアプランを提案し、派遣社員から始めてもらうこともあります。実際にオフィス系の派遣は、約3割が正社員に切り替わっています。採用後、日本語があまりうまくなくても問題ないと企業が理解したら、直接雇用の提案をしていきます。

求人企業に提案をする際に、気を付けていることがあれば教えてください。

日本在住の外国人は約282万人(2019年6月末時点)で、日本の人口の約2%です。企業から人材ニーズをヒアリングしても、該当する方が少ないため、要件緩和をすることが多くあります。そのため、期待値の調整が重要となります。大事なことは、外国人人材を企業に紹介し、結果として業績が伸びること。そして外国人が日本社会の仲間になることが私たちの目的です。それに沿って、企業や求職者にコンサルティングや提案を行っています。

2025年に需要が一気に高まる

求人開拓はどのように行っているのでしょう。

受動的・能動的にそれぞれ営業を行っています。受動的な営業とは、オウンドメディアを通じた問い合わせの促進。既存企業からの紹介や、エスニックメディアと呼んでいる中国語の新聞などに、スポットで求人広告を出すこともあります。日本在住で、在留資格のある中国人は約76万人(2018年12月末)。帰化した方を含めると約100万人もおり、一つの市場になっているので、エスニックメディアへの出稿は効果的です。

能動的な営業では、メールや電話、問い合わせフォームからの連絡、交流会での名刺交換など可能性のあることはすべて行っています。

派遣事業ではどのようなKPIを設定していますか。

派遣稼働の純増数と純増率です。更新率はあまり気にしていません。派遣は離職率の高い業種がありますが、あくまで業種特性によるもの。外国人だから離職率が高い・低いといった影響はありません。KGIは売上と粗利の金額です。派遣の粗利率は、平均20%ですが、弊社は約18%。そのうえで、社会保険加入率や有休消化率100%を目指し、研修も費用をかけて実施しています。

これから外国人派遣を始めたい派遣事業者にアドバイスはありますか。

手続きを外部に依頼する場合、申請取次行政書士や、入管取次に特化した行政書士に依頼すること。また社内で在留資格関連の勉強を徹底的に行うことです。

私は2016年4月、一般社団法人外国人雇用協議会を設立しました。初代会長は堺屋太一さんで、現在は元経済産業省で株式会社政策工房の原英史さんにお願いしています。株式会社AOKIホールディングスの青木彰宏さんや、株式会社ニトリホールディングスの似鳥昭雄さん、顧問に竹中平蔵さんや田原総一朗さんがいます。会員として、外国人の人材サービス企業や、外国人に特化した不動産業、家賃保証などを行う約80~90社が加盟しています。

この外国人雇用協議会では、外国人の活躍を阻害しているのは「入管法」と「企業の意識」だと位置づけ、前者に対しては政策提言で、後者は企業の意識を変えるシンポジウムや勉強会を開催しています。会員になれば、1人につき3万円かかる在留資格の勉強会に、1社で月2名まで無料で参加でき、外国人採用に関するさまざまな知識を学べます。

外国人人材の派遣市場は、これからどのように推移していくと思われますか。

これから経済界はダウントレンドになり、東京オリンピックやリニア開通などがあり、2025年くらいから再び上がるのではと思っています。派遣事業は景気に左右されることが多いので、一般派遣はここ5年程苦しい時期なのかなと。一方で外国人派遣は右肩上がりです。派遣市場のボリュームは現在2%ですが、近年10%近くになり、そして2025年に一気に上がるのではと見ています。