クライアントの人事課題全般に対応し
深いつながりを築くことがシェア率・満足度アップのカギ

岡山県に本拠地を置き、広島、愛媛、香川で総合人材サービスを展開するキャリアプランニング。地域に根付いた人材サービスを30年以上にわたって行い、「地元企業の第二人事部」として信頼を寄せられている。そんな同社が、現在注力している施策を語った。

上昇する料金に対してどう付加価値を付けるかがポイント

まず御社のビジネスについてお教えください。

弊社は総合人材サービス企業として、人材派遣をはじめ人材紹介、教育・人事コンサルティング、受託事業などを行っています。ミッションに「地元企業の第二人事部を目指します」を掲げています。個人的にはどの企業であっても、任用配置や人事制度のコアの部分、つまり人事ポリシーや人事考課といった業務以外は、すべてアウトソース出来ると考えており、弊社はこの領域をサポートできるような会社を目指しています。

人材派遣の市場は、これからどう推移していくと思われますか。

同一労働同一賃金の影響で、労働市場はかなり大きな影響を受けるでしょう。その一部である派遣市場も当然大きな変化が求められるはずです。我々の営業エリアである岡山、広島、香川、愛媛県内の派遣社員数は減少する可能性が高いと考えていますが、一方で一人当たりの単価は上昇します。これまで企業は人材派遣を活用することで、一時的な労働力の確保という面に加え、労務コストを下げることも期待していましたが、そういう状況ではなくなります。これからは安いコストを前提とした安易な生産性向上という目的では、人材派遣は使われなくなるでしょう。派遣会社はこれを機に、上昇したコストに見合う付加価値をどうサービスに転嫁するかがポイントとなるでしょう。クライアントと一緒になって、本当の意味での生産性向上に取り組む必要があります。

生産性向上のためには、どのようなことが必要になるでしょう。

まず派遣社員のスキルアップです。今後、AIなどのテクノロジーの劇的な進化によって、同じ職種でも今までとこれからでは求められるスキルが大きく変わってきます。事務職でも、高度なITスキルを持った方が就業することで、業務フローの改善から生産性向上に繋がるでしょう。そのための教育やキャリア開発を、企業と一緒に行っていきます。現在は、企業からのニーズが高いけれど数が足りない、CADオペレーターの育成に注力する計画となっています。教育コストは先行投資になりますが、派遣社員が提供する価値が上がれば結果的に回収できる。スタッフから選ばれる派遣会社であるためにも、スキルアップ支援は重要なファクターだと考えています。

様々な企業と提携し、人事課題の解決を

改めてなのですが、派遣会社として他社との差別化ポイントはどのような点ですか。

30年以上にわたって築いてきた、地元企業とのつながりが私たちの財産です。営業エリアでは、人材サービスのシェアを高く維持しており、候補者にマッチした求人を紹介できる割合も非常に高くなっています。お取引いただいている企業もさまざまな業種、職種となっています。その中で、弊社の特徴としては営業担当一人あたりが担当する派遣社員の人数や企業数を少なくすることで派遣社員一人ひとりや企業に向き合う時間を、多く捻出できる体制としています。

また、地元をはじめとして首都圏に所在する多くの企業と業務提携をしています。これは「地元企業の第二人事部」として、自社のサービスだけでは解決できない人事課題の解決を目的としています。また最近では、地方銀行とのビジネスマッチングに取組んでいます。地銀が持つ企業情報は質量ともに膨大で、そこに私たちが関わることによって、地域の隅々にまで質の高い人材サービスを提供できると考えています。今後も、地銀とは積極的に連携を強化していきたいと考えています。

企業との連携は、今後さらに増やしていくのでしょうか。

企業のニーズやシーズに合わせて拡大していきます。これからは、RPAやAIなどが絡む人材ニーズも増えていくでしょう。テクノロジーの進化は、派遣ビジネスにとって脅威と受け取れる面もありますが、逆にその領域をグリップしておくことで、クライアントの満足度や生産性向上に寄与できると思います。また、お取引している企業の中には、労務管理や勤怠管理を手作業で処理している会社が多くあります。弊社グループのIT企業や、外部企業とも連携し、勤怠システムやグループウエアなどのITプラットフォームの紹介や、今後増えていくであろう副業やテレワークへの対応支援など、企業から必要とされるものを広く提供し、クライアントの業務改善を実現していきます。

クライアントのあらゆる人事課題に踏み込む

企業や候補者から選ばれるために、どのような取り組みをしているのか教えてください。

NPS(ネット・プロモーター・スコア)をアンケートと組み合わせ、スタッフとクライアントそれぞれに調査をしています。その結果で、営業数値と相関性が強い箇所を細かく分析し、営業戦略や施策に反映させています。そして、業績との相関性は強くないものの中長期的なブランディングに関わる箇所に対しても、優先順位を明確にし取組みを行っています。

また営業担当の能力開発を相当強化しなければなりませんが、弊社のミッションの実現とクライアント満足を高い次元で実現するためには、営業担当者がワンストップで企業を担当する必要があると考えています。現在は派遣事業、紹介事業、教育事業、受託事業があり、それぞれの担当者が企業とやり取りしている状態です。そうではなく、一人の担当者が自社や提携先のあらゆるサービスを提案できれば、本質的な課題解決につながるのではと考えています。

この体制の実現の為には、派遣社員へのフォローも含めてサービスの質を落とさず、業務量も過多にならないよう業務の細分化や分業化、研修内容の追加や修正、人事制度の見直しなど、いろいろな側面から考える必要があります。私たちの強みとして遅滞なく取り組んでいきたいです。

営業担当がクライアントと接する際、心がけている方針を教えてください。

「第二人事部営業」という言葉が社内であります。派遣の営業担当者の役割は、求人をいただくだけでなく人事全般、ときには経営にも踏み込み、クライアントの課題を聞きだし、受け止め、解決につながる提案が出来ればベスト。たとえその場で応えられなくても、持ち帰って社内外の連携を通じて解決していくことが第二人事部営業です。現場から自然に出てきたワードですが、社内の営業スタイルとしてしっかり根付いています。

また、「ファーストコールカンパニー」「ファーストコールパーソン」も社員が意識して使っています。第二人事部営業を通じてクライアント満足を高めることで、企業やクライアントから、困ったときに一番最初に電話がかかってくる存在を指す言葉です。私たちが目指すポジションを分かりやすく表しています。

これからの人材ビジネスで重要な求職者のLTV

売り上げや粗利のほかに、営業指標はありますか。

一般的な月末の稼働ポスト数、受注数、受注単価、再就業率、再就業希望率、新規取引先開始数など結構色々な指標を見ています。また、同一労働同一賃金の影響によって、値上げ交渉成功件数や上昇する原価に対する回収率も重要な指標となるでしょう。そして最も意識しているのはシェア率です。クライアント内シェア率や、地域のシェア率を高めることが必要だと考えています。そのためには、クライアントと秀逸な関係を作り、情報の入手タイミングをどの競合よりも早くすることが、シェア率拡大につながる1つの要素でしょう。

あとはLTV(ライフタイムバリュー)ですね。弊社が運営する、医療系や介護系に特化した「ハタラキかたシェアサロン」は、登録者のLTVアップのために、さまざまな施策を行っています。ワークとライフ両面での支援を行い、就業中いかんにかかわらず、いつでもつながれるようなイベントを行っています。これからの人材会社は、求職者のLTVを意識した施策を行う必要があると思っています。

最後に今後のビジョンを教えてください。

求職者、スタッフ、クライアントともっと寄り添うための時間を作っていきます。そのためにシステムの活用や業務プロセスの見直しやノンコア業務の外注化など、自社サービスの価値を高めることに繋がる業務に集中できる体制を作ることが重要です。弊社の目的の一つである、お取引企業の生産性向上は、同じ時間なら高い付加価値を付けること、同じ付加価値ならより短い時間で行うことが必要であり、この実現のために、まず私たちが生産性を上げる「はたらきかた」の発明をしないといけません。そして社員一人ひとりがスキルを磨き、地元企業の人事課長が務まるくらいに成長していければと。そうすることがシェア率や、顧客・スタッフの満足度向上につながると考えています。